セルフ式ガソリンスタンド(セルフ給油取扱所)は便利ですが、危険物を扱う以上、わずかな判断ミスが火災・爆発につながります。近年、人手不足の中で「安全確認をどう維持するか」が課題となり、カメラ映像をAIで解析して給油許可や危険行為の検知を補助する仕組みが注目されています。
ただし、AIは“人の代わり”ではなく、“事故を増やさないための道具”として位置づけるのが現実的です。現場の視点で、押さえるべきポイントを整理します。
- ■① セルフ給油取扱所の「安全確認」とは何を見ているのか
- ■② AI安全確認で何が変わる|“許可の自動化”ではなく“危険の早期検知”
- ■③ 事故を増やさないための前提条件|AI導入で“監視の穴”を作らない
- ■④ 現場で見た“誤解されがちポイント”|「AIがあるから大丈夫」は一番危ない
- ■⑤ 被災地派遣(LO)で痛感したこと|燃料は「生活線」だからこそ安全が最優先
- ■⑥ 利用者側が守るべきこと|AI以前に「やらない行動」を決める
- ■⑦ 事業者側の実務ポイント|AI導入で現場が楽になるほど「教育」を厚くする
- ■⑧ 今日できる最小行動|「給油時の3つの基本」を家族で共有する
- ■まとめ|セルフ給油のAI安全確認は“油断を増やす道具”ではなく“事故を減らす補助”にする
■① セルフ給油取扱所の「安全確認」とは何を見ているのか
セルフ給油では、給油者が適切な手順で行っているかを確認し、危険な状況があれば給油を止める必要があります。典型的に確認すべきなのは次のような行為です。
・エンジン停止ができていない
・火気(喫煙等)や火花のリスクがある
・携行缶への給油など、誤った操作に入りそう
・ノズルの扱いが不適切で漏えいにつながる
・給油口の位置や姿勢が不安定でこぼれやすい
「安全確認」は、便利さのための形式ではなく、事故の芽を初期段階で潰す作業です。
■② AI安全確認で何が変わる|“許可の自動化”ではなく“危険の早期検知”
AI活用の狙いは、カメラ映像を解析して、給油に入ってよい状態か、危険行為がないかを見張り、必要に応じて警告や給油停止につなげることです。
重要なのは、AIがやるのは「危険の兆候を見つける補助」であり、現場の安全を最終的に担保する仕組み(運用・教育・設備)が同時に整っていないと意味がないことです。
■③ 事故を増やさないための前提条件|AI導入で“監視の穴”を作らない
AIが入ると「人の目が減る」方向に流れやすいですが、ここが最大の落とし穴です。現場で事故を増やさないためには、次の前提が必要です。
・AIの検知結果を受けて動ける人が必ずいる(対応者の配置)
・停止・警告の基準が明確(曖昧だと現場が迷う)
・AIが苦手な状況(夜間・逆光・雨・混雑)を想定したバックアップ手順がある
・誤検知・見逃しが起きた時の記録と改善ループがある
AIは万能ではありません。導入した瞬間に安全が上がるのではなく、運用設計で安全が決まります。
■④ 現場で見た“誤解されがちポイント”|「AIがあるから大丈夫」は一番危ない
元消防職員として現場で強く感じるのは、「新しい仕組みが入ると、人は油断する」ということです。火災や事故の多くは、設備の不足よりも“慣れ”と“思い込み”から起きます。
AI監視が入ると、利用者も運用側も「見てくれているはず」と無意識に依存しがちです。だからこそ、現場のルールは次の順番が大切です。
1) まず人の手順を徹底(エンジン停止・火気厳禁・正しい操作)
2) 次に設備で漏えい・延焼を防ぐ(消火・通報・遮断)
3) その上でAIを“補助”として使う
“AIがあるから大丈夫”ではなく、“AIがあっても基本が崩れたら危ない”が正しい理解です。
■⑤ 被災地派遣(LO)で痛感したこと|燃料は「生活線」だからこそ安全が最優先
被災地派遣(LO)で何度も見たのは、燃料が入るだけで地域の復旧速度が変わる現実です。給油所は、救急・消防・警察・復旧工事・物資輸送、そして住民の生活維持の要になります。
だからこそ、災害時に給油所のトラブルが起きれば影響は連鎖します。混雑・焦り・疲労が重なる局面ほど、基本動作が崩れやすく事故が起きやすい。AI監視は、人の限界が出る状況で“最後のブレーキ”として役立つ可能性がありますが、導入の目的はあくまで「災害時でも事故を増やさない」ことに置くべきです。
■⑥ 利用者側が守るべきこと|AI以前に「やらない行動」を決める
利用者側で最も効果が大きいのは、“やらない行動”を決めることです。
・給油中にスマホを見ない(注意が逸れる)
・走行直後の焦り給油をしない(確認が雑になる)
・子どもから目を離さない(予期せぬ動きが起きる)
・携行缶給油はルールに従い、自己判断でやらない
・違和感(臭い・漏れ・異音)があれば中断して係員へ
AIが入っても、最後に事故を止めるのは“人の行動”です。
■⑦ 事業者側の実務ポイント|AI導入で現場が楽になるほど「教育」を厚くする
AI導入で省人化が進むほど、現場の教育と点検の質が問われます。
・スタッフが「止める判断」を迷わない訓練(判断基準の共通化)
・誤検知の多い条件の洗い出し(時間帯・天候・混雑)
・警告後のフォロー手順(声かけ・再説明・再開条件)
・ヒヤリハットの蓄積と再発防止(小さい芽を放置しない)
省人化はゴールではなく、事故を減らしながら持続させるための手段です。
■⑧ 今日できる最小行動|「給油時の3つの基本」を家族で共有する
今日からできる最小行動は、家族で“3つの基本”を決めておくことです。
・給油前:エンジン停止+火気ゼロを声に出して確認
・給油中:スマホを見ない、子どもから目を離さない
・異常時:迷わず中断して係員へ(自己解決しない)
この3つを徹底するだけで、AIの有無に関係なく事故リスクは確実に下がります。
■まとめ|セルフ給油のAI安全確認は“油断を増やす道具”ではなく“事故を減らす補助”にする
AIによる安全確認は、人手不足や監視負担の課題に対する有力な選択肢ですが、導入の本質は「監視を減らす」ことではなく「事故を増やさず、むしろ減らす」ことです。AIの限界を前提に、運用・教育・バックアップ手順まで含めて設計して初めて、安全は上がります。
結論:
AIは“人の代わり”ではなく、“基本動作を崩さないための最後のブレーキ”として使うのが正解です。
元消防職員としての現場感覚では、事故は設備不足より「慣れ」と「思い込み」で起きます。AI導入が進む今こそ、基本行動を言語化して守れる運用が、いちばん強い安全対策になります。
出典:株式会社ELEMENTS「AI自動給油許可監視システム『AiQ PERMISSION』提供開始(プレスリリース)」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000061051.html

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