【元消防職員が解説】救急隊はきついのか|精神的負担から見た配属の判断基準

消防士を目指している人の中でも、かなり不安になりやすいのが
「救急隊って実際どれくらいきついのか」
という点です。

火災よりも出動が多そう。
人の生死に直結しそう。
精神的にかなり重いのではないか。
自分に耐えられるのか。
こうした不安を持つのはかなり自然です。

結論から言えば、救急隊は確かにきついです。
ただし、そのきつさは単純な体力勝負というより、出動件数の多さ、判断の連続、家族対応、助けたくても助けきれない現実を受け止め続ける精神的負担にあります。
消防庁の資料では、令和5年中の救急自動車による救急出動件数は763万7,967件、搬送人員は663万9,959人で、いずれも過去最多でした。
また消防庁は、惨事ストレスが危惧される災害が発生した場合に、精神科医等の専門家を派遣して助言を行う「緊急時メンタルサポートチーム」を運用しています。
つまり、救急隊の負担は現場感覚だけの話ではなく、制度としても精神的重さが前提に置かれている仕事です。 (消防庁「令和5年中の救急出動件数等(速報値)」)

元消防職員として率直に言えば、救急隊がきついかどうかは、
「忙しいか」
だけでは決まりません。
目の前の傷病者や家族に向き合い続けること、その結果を自分の中で整理して次の出動へ切り替えることがかなり大きいです。
だから、救急隊が合うかどうかは、体力よりも精神的な切り替えと継続力で差がつきやすいです。

■① まず前提として、救急隊は“出動件数そのもの”がかなり多い

救急隊のきつさを考える時、最初に見落としてはいけないのが、出動件数の多さです。
消防庁の速報値では、令和5年中の救急自動車による救急出動件数は763万7,967件で、対前年比でも増加しています。
つまり、救急は「たまに出る特殊業務」ではなく、日常的にかなり高い頻度で回っている仕事です。

元消防職員として率直に言うと、救急隊のきつさは、一件一件が重いことだけではありません。
件数が多い中で、毎回きちんと気持ちを切り替えなければいけないことです。
一件終わったら休み、ではなく、次がすぐ来ることもあります。
この回転の速さは、火災や救助とはまた違うきつさです。

■② 救急のきつさは“体力”より“判断疲れ”に出やすい

外から見ると、救急は火災より危険が少なく見えることがあります。
でも元消防職員として言えば、救急のしんどさは別の形でかなり重いです。

それは、判断の連続です。

現場到着後に見るべきこと、聞くべきこと、搬送判断、医療機関への連絡、家族への対応、現場の安全確認。
しかも相手は毎回違います。
高齢者、子ども、交通事故、急病、精神的混乱、家族が取り乱している場面。
その中で、短時間で整理しながら動く必要があります。

元消防職員として率直に言えば、救急隊がきついのは、
「重い物を運ぶから」
より、
頭と気持ちを休ませにくいから
です。
これはかなり現実です。

■③ 一番重いのは“助けたいのに助けきれない場面”があること

救急隊の仕事を甘く見ない方がいい最大の理由はここです。
救急は、人の命に直結する仕事です。
当然、全員を理想どおりに助けられるわけではありません。

元消防職員として率直に言うと、救急隊が精神的にきついのは、
頑張れば全部救える仕事ではない
という現実に何度も向き合うからです。

もっと早ければ。
違う状況なら。
家族の反応がもっと早ければ。
そう思う場面がゼロにはなりません。

ここが、火災の危険や体力負荷とは別の、救急独特の重さです。
だから、救急隊は単に「忙しい配属」ではなく、感情を整理する力が必要な配属だと考えた方がいいです。

■④ 家族対応や周囲対応のストレスもかなり大きい

救急隊がきついのは、傷病者対応だけではありません。
現場では家族や関係者への対応もあります。

落ち着いている人ばかりではありません。
強く取り乱す人、怒りっぽい人、混乱している人、不安で質問が止まらない人もいます。
そうした中で、必要な説明をしながら現場活動を進める必要があります。

元消防職員として見ても、救急の精神的負担は、
傷病者の状態
だけでなく、
周囲の感情の大きさ
にもかなり左右されます。

つまり、救急隊に向いているのは、医療知識がある人だけではありません。
不安や焦りが強い人に対しても、自分が大きく乱されすぎず対応できる人です。
ここはかなり大きいです。

■⑤ 交替制勤務の中で救急が重なると、疲労の抜けにくさが増す

消防職員の勤務は、消防庁白書でも24時間即応体制という特殊性があると整理されています。
救急隊も当然その中で動きます。
つまり、夜間の救急出動、仮眠中断、連続出場といった働き方が起こり得ます。

元消防職員として率直に言えば、救急隊のきつさは、
精神的な重さ
だけでなく、
睡眠や生活リズムの乱れとセットで来ることです。

一件一件が重い。
しかも夜間もある。
休んだ感じがしないまま次に入る。
これが続くと、身体だけでなく気持ちにも響きやすいです。

だから救急隊の適性を見る時は、
「人助けがしたい」
だけでなく、
不規則勤務の中で精神的に整え続けられるか
まで見た方が現実的です。

■⑥ 消防庁がメンタル対策を制度化しているのは、それだけ負担があるから

ここはかなり重要です。
消防庁は、惨事ストレスが危惧される災害が発生した場合に、現地消防本部等へ精神科医や臨床心理士等の専門家を派遣して助言を行う緊急時メンタルサポートチームを運用しています。
また、消防職員の現場活動に係るストレス対策の研究や資料整備も続けています。

つまり、救急や災害現場で受ける精神的負担は、
「気の持ちようで何とかなるもの」
として扱われていません。
制度として対策が必要なものとして認識されています。

元消防職員としても、これはかなり本質です。
救急隊のきつさを軽く見ない方がいいのは、単にしんどいからではなく、
仕事の構造上、心に負荷がかかるのが自然だからです。

■⑦ 救急隊に向いている人は“優しい人”だけではない

救急隊というと、優しい人、気が利く人、気持ちの強い人が向いていると思われやすいです。
もちろん、それも大切です。
ただ、元消防職員として言うと、もっと大事なのは、
優しさを持ちながらも、引きずりすぎないことです。

向いている人は、
・相手の不安に寄り添える
・必要な判断をためらいすぎない
・終わったあとに気持ちを切り替えられる
・仲間と情報共有できる
・一人で抱え込みすぎない
人です。

逆に、優しすぎて全部を自分の中に入れてしまう人、
助けられなかったことを何日も抱え込みやすい人は、かなりしんどくなりやすいです。
救急隊に必要なのは、強さより、整えながら続ける力です。

■⑧ 被災地や現場経験から見ても、救急は“静かに削られる仕事”だと感じる

火災や大規模災害は、外から見ても重さが伝わりやすいです。
でも元消防職員として現場や被災地で感じるのは、救急のきつさはもっと静かに積み重なるということです。

一件ずつは目立たなくても、
急病、事故、高齢者対応、不安の大きい家族対応が続くと、
気づかないうちに心が削られます。

だから、救急隊がきついかどうかを考える時は、
「派手な危険が多いか」
ではなく、
静かに続く精神的負荷に自分がどう向き合うか
で考えた方がかなり正確です。

■⑨ まとめ

救急隊は確かにきついです。
ただし、そのきつさは単純な体力勝負ではなく、出動件数の多さ、判断の連続、家族対応、助けたくても助けきれない現実、不規則勤務の中での精神的負担にあります。
消防庁の資料では、令和5年中の救急自動車による救急出動件数は763万7,967件と過去最多であり、消防庁は惨事ストレスが危惧される災害時に精神科医等を派遣する緊急時メンタルサポートチームも運用しています。
つまり、救急隊のきつさは個人の気合いの問題ではなく、制度的にも対策が必要とされる重さです。 (消防庁「令和5年中の救急出動件数等(速報値)」)

元消防職員として強く言えるのは、救急隊に向いているかどうかは、
「優しいか」
より、
気持ちを抱え込みすぎず、判断し、切り替え、続けられるか
でかなり決まるということです。
迷ったら、
「救急隊はきついか」
と聞くより、
自分はその精神的負担を整えながら続けられるか
を考える方が、ずっと現実的です。

出典:消防庁「緊急時メンタルサポートチームに関する資料の送付について」

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