消防学校の初任科で、「辞めたい」と思う瞬間はあります。珍しいことではありません。
環境が急に変わり、指導も厳しく、体も心も追いつかない。そう感じたときに大事なのは、気合いではなく思考と行動の“型”です。
私は元消防職員として、訓練の現場で「限界を超えて崩れる人」と「早めに整えて持ち直す人」の両方を見てきました。さらに被災地派遣(LO)では、疲労とストレスの中でも判断を保てる人ほど、住民の安心につながる動きができる現実を何度も見ています。初任科で身につけるべきは、まさにその“壊れない整え方”です。
■① まず思考を変える:「辞めたい=不適格」ではなく「負荷が強いサイン」
辞めたい気持ちは、弱さの証明ではありません。
負荷が強すぎるサインです。消防は安全の仕事なので、サインを無視しない方が強い。
ここでの正解は、
「自分がダメだ」ではなく
「負荷を下げる手を打つ」
に切り替えることです。
■② 24時間だけでいい:「今日だけやる」に分割する
初任科で折れる人の多くは、未来を一気に背負います。
「この先ずっと無理かも」と思った瞬間に心が止まります。
やることは一つ。
今日の24時間だけに分割してください。
・今日は朝まで
・今日は点呼まで
・今日はこの訓練だけ
細かく刻むほど、心が戻ります。
■③ 行動を最小化する:「やることは3つだけ」に絞る
辞めたいときは、判断力が落ちています。
だから、行動も絞ります。
最低限の3つだけでいい。
1) 遅刻しない
2) 挨拶する
3) 報連相する
これだけ守れれば、立て直せます。
被災地でも、混乱時に強い人は「やることを減らして基本に戻せる人」でした。
■④ 原因を切り分ける:「辞めたい」の正体はだいたい3種類
辞めたい気持ちは、ほぼ次のどれか(または複合)です。
- 体の限界(睡眠不足・疲労・痛み・食欲低下)
- 心の限界(不安・孤立・自己否定・緊張)
- 環境の摩擦(人間関係・寮生活・指導の受け取り方)
切り分けると、対策が具体になります。
逆に、曖昧なままだと不安が増えます。
■⑤ 一番強い行動:「早めに相談する」=消防の安全管理そのもの
辞めたいときに最優先の行動はこれです。
無理せず早めに相談する。
相談は逃げではありません。
事故を防ぐための安全管理です。
伝え方は短くてOKです。
「今、負荷が強くて限界が近いです。崩れる前に相談したいです。共有範囲は必要最小限でお願いします。」
この一言で、道が開きます。
■⑥ 「比較」を止める:同期と比べるほど苦しくなる
初任科は、同期が近い分、比較地獄に入りやすいです。
でも、消防で評価されるのは“学校の速さ”だけではありません。
現場で強いのは、
・安全を守れる
・連携できる
・判断が安定している
このタイプです。
比較するなら他人ではなく、昨日の自分で十分です。
■⑦ 体調の赤信号を見逃さない:ここを越えると回復に時間がかかる
辞めたい気持ちが続くとき、体が先に悲鳴を出していることがあります。
赤信号の例:
・眠れない/途中で何度も起きる
・食べられない
・動悸、息苦しさが増える
・頭が回らない
・涙が勝手に出る
この段階は「根性で継続」ではなく、早めに整えるが正解です。
被災地派遣でも、ここを我慢して崩れた人ほど、復帰に時間がかかりました。
■⑧ 最後の思考:「辞める/続ける」の二択にしない
辞めたいときに苦しいのは、選択肢が二つしかないことです。
実際は三つ目です。
「整えて続ける」
・相談して負荷を下げる
・睡眠と食事を最優先にする
・できる範囲に落とす
これで持ち直す人は多いです。
消防は、倒れるまで踏ん張る仕事ではなく、倒れないように調整する仕事です。
まとめ
結論:初任科で辞めたいと思ったら、①サインと捉える②24時間に分割③行動を3つに絞る④原因を切り分ける⑤早めに相談する⑥比較を止める⑦赤信号で止まる⑧二択にしない。この“型”で立て直せる。
元消防職員として、そして被災地派遣(LO)で現場を見た経験から言えるのは、最後に強いのは「無理する人」ではなく「整えられる人」です。自分を大切にして、続けるための選択をしてください。
出典
厚生労働省「こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)」
https://kokoro.mhlw.go.jp/

コメント