【元消防職員が解説】消防学校初任科の山岳救助訓練とは?内容・きつさ・乗り切り方を現実的に解説

消防学校初任科で行われる「山岳救助訓練」は、名前だけで身構える人が多い訓練です。高所が怖い、体力に自信がない、装備が難しそう、落ちたらどうしよう――不安が先に立つのは自然です。
結論から言うと、山岳救助訓練は“度胸試し”ではありません。山や崖、急傾斜といった条件の中で、安全に近づき、確実に救い、隊として帰ってくるための「手順と連携」を身につける訓練です。ポイントを押さえれば、必要以上に怖がるものではありません。


■① 山岳救助訓練とは何をするのか

山岳救助訓練は、山間部や崖、斜面などでの救助活動を想定した訓練です。主に次の要素が入ります。
・山道での搬送(担架搬送・背負い搬送の基礎)
・ロープワークの基礎(結索・支点・確保の考え方)
・安全確保(セルフビレイ、確保者の役割)
・要救助者の保温・観察(低体温、外傷の確認)
・隊としての行動(声かけ、手順統一、危険管理)
一言でいえば「危ない場所で、危なくならない動き方」を体に入れる訓練です。


■② なぜ初任科で山岳救助を学ぶのか

山岳救助は、山だけの話ではありません。土砂災害、崖下転落、河川沿いの斜面、倒木、急傾斜地の住宅地など、現場は“足場が悪い場所”だらけです。
初任科で学ぶべき理由は明確で、
・安全を最優先にする判断
・隊として動く統一行動
・ロープで自分と仲間を守る基本
これが身につくからです。現場は速さより「安全に確実」が強いです。


■③ きついのは体力より「怖さ」と「集中の維持」

山岳救助訓練がきつい理由は、距離や筋力だけではありません。
・高所や斜面の怖さ
・緊張で体が固くなる
・足場が悪く、集中が切れない
この“怖さと集中”が負荷になります。だからこそ、呼吸と手順に戻る力が重要です。怖いのは弱さではなく、危険を察知できている証拠です。怖さを消すのではなく、手順で扱うのが正解です。


■④ 評価されるポイントは「速さ」ではなく「安全と統一」

山岳救助で見られやすいのは、目立つ動きではありません。
・指示を復唱できる
・確保が確実(自分も相手も守れている)
・危険を感じたら止まれる
・勝手に判断して動かない
・隊列や役割を崩さない
山岳救助は一人で強くなる訓練ではなく、隊として崩れない訓練です。派手さより、基本が揃う人が信頼されます。


■⑤ 事故を防ぐために覚えておく「やってはいけないこと」

山岳救助訓練で一番怖いのは、焦りからのミスです。
・確保が取れる前に動く
・ロープや支点の確認を省略する
・小走りで移動する
・「大丈夫です」と無理を隠す
・合図が曖昧なまま作業を進める
山は一回のミスが大事故になります。安全は気合いではなく、確認と手順で守ります。


■⑥ 今からできる準備は「体力」より「足と体幹」と「手順化」

入校前に特別な技を覚える必要はありません。効果が高い準備は次の3つです。
・足首と股関節を柔らかくする(捻挫予防)
・体幹を整える(姿勢が崩れにくくなる)
・荷物を背負って歩く習慣(軽い負荷で十分)
加えて、訓練中は「分からないまま進まない」ことが重要です。ロープや確保は、理解が曖昧なまま動くのが一番危険です。質問は恥ではなく安全行動です。


■⑦(一次情報)被災地で実感した“足場の悪い現場”は山と同じ

被災地派遣や災害対応では、道路が壊れていたり、瓦礫や泥で足場が不安定だったり、斜面に近い場所で活動することがあります。そういう現場で強いのは、体力自慢より「安全に近づく手順を守れる人」でした。
焦ると、足元確認が抜けます。声が減ります。確認が飛びます。結果として事故が起きます。
山岳救助訓練は、まさにその現実を小さく再現して、手順で安全を作る練習です。怖さが出るのは普通で、怖いからこそ確認が生きます。


■⑧ 不安を軽くするコツは「前だけ見る」「手順に戻る」「隊で動く」

山岳救助訓練を乗り切るコツはシンプルです。
・足元と前の隊員だけを見る(余計な景色を見ない)
・合図と復唱を丁寧にする(曖昧を残さない)
・怖くなったら呼吸を整えて手順に戻る
・一人で抱えず、隊として動く
山岳救助は“強い個人”ではなく“崩れないチーム”が勝ちます。ここを押さえるだけで、不安はかなり軽くなります。


■まとめ|山岳救助訓練は度胸試しではなく「安全に救う手順」を身につける訓練

消防学校初任科の山岳救助訓練は、足場の悪い場所で安全に活動し、確実に救助し、隊として無事に戻るための訓練です。評価されるのは速さより、安全確認、復唱、手順の統一です。怖さは自然な反応で、手順に戻れる人ほど強くなります。

結論:
山岳救助訓練は“根性”ではなく、“安全を手順で作る力”を身につける訓練です。
元消防職員として災害対応の現場を経験してきた実感として、最後に信頼されるのは、焦らず確認し、隊として崩れずに動ける人でした。山岳救助訓練は、その力を育てる時間です。

出典:総務省消防庁「消防防災分野の教育訓練・人材育成に関する情報」

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