119番通報は「救急車を呼ぶ」だけではありません。通報の瞬間から、救命は始まっています。通信指令(指令センター)が行う口頭指導は、救急隊が到着するまでの時間に、通報者ができる行動を引き出し、救命率を上げるための仕組みです。特に心停止では、救急車の到着を待つだけでなく、胸骨圧迫やAEDを早く始められるかが結果を左右します。
■① 通信指令の口頭指導とは何か
通信指令の口頭指導とは、119番通報を受けた指令員が、通報者に対して状況確認を行いながら、必要な応急手当(胸骨圧迫、AED使用、気道確保の補助など)や安全行動を電話越しに具体的に指示することです。救急隊が到着する前の“空白時間”を埋める役割があります。
■② なぜ口頭指導が重要なのか(救急車より先にできることがある)
心停止は1分ごとに救命率が下がるとされ、救急隊の到着を待つだけでは間に合わないことがあります。口頭指導の価値は、通報者が「今この場でできること」を迷わず実行できるようにする点にあります。
・意識と呼吸の確認
・胸骨圧迫の開始
・AED手配と使用
この初動が数分早まるだけで、結果が変わる可能性があります。
■③ 指令員がまず確認すること(質問には理由がある)
口頭指導では、指令員がいくつか質問します。これは責めているのではなく、指示を正しく出すための確認です。
・場所(救急車を迷わせない)
・意識の有無
・呼吸の有無(普段通りか)
・安全(交通事故、火災、倒壊など)
質問に答えること自体が、救命行動のスイッチになります。
■④ 通報者がやるべきこと(短く、確実に)
通報者に求められるのは、完璧ではなく「止めないこと」です。
・指令員の言葉を復唱する
・胸骨圧迫を止めない
・周囲に役割を振る(AED、誘導、家族対応)
救命は一人で抱えると止まります。役割分担で継続できます。
■⑤ 元消防職員として現場で見た“口頭指導が効いたケース”
現場では、到着した時点で胸骨圧迫が始まっているかどうかで空気が違います。始まっている現場は、救命の連携が途切れません。逆に「救急車が来るまで何もできなかった」現場では、取り返しがつかないことがあります。口頭指導は、通報者の背中を押し、恐怖で固まる時間を減らす仕組みです。
■⑥ 被災地派遣(LO)で感じた「通信が命綱になる」現実
被災地派遣(LO)の現場では、混乱の中で情報が届かず、判断が遅れることがあります。通信環境が保てるかどうかは、救命だけでなく避難所運営や物資調整にも直結します。平時の口頭指導は、災害時の“通信で支える”発想につながります。通報から始まる支援は、災害時にも重要です。
■⑦ よくある誤解(怖さで止まるポイント)
誤解①「自分がやったら悪化させるかも」
→心停止疑いでは、何もしない方が危険です。指示に従って実施することが重要です。
誤解②「AEDは医療者だけが使う」
→一般の人でも使えるよう設計されています。音声ガイドに従えば動けます。
誤解③「口頭指導は冷たい」
→短く断定的に聞こえるのは、緊急時に迷いを減らすためです。
■⑧ 今日できる最小の備え(通報で迷わない)
・自宅や職場の住所をすぐ言えるようにする
・AEDの場所を一つ確認する
・家族で「倒れたら119+胸骨圧迫」を共有する
この3つで、口頭指導が最大限活きます。
■まとめ|口頭指導は“救急隊到着前の数分”を救命時間に変える仕組み
通信指令の口頭指導は、119番通報を受けた指令員が、救急隊到着までの空白時間に通報者へ具体的な応急手当を指示し、救命率を上げる仕組みです。心停止では、胸骨圧迫とAEDの早期実施が鍵になります。通報者が一人で抱えず、役割分担し、指示を復唱して動くことで救命連携が成立します。
結論:
救命は通報の瞬間から始まります。口頭指導は“待つ時間”を“救う時間”に変える仕組みです。
元消防職員として、胸骨圧迫が始まっている現場ほど連携が途切れない現実を見てきました。怖さで固まる時間を減らすために、口頭指導を信じて動くことが大切です。
出典:https://www.fdma.go.jp/

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