災害後の避難生活で、じわじわ人を追い込むのは「不便」よりも「不快」です。
汗を流せない、身体が冷える、寝つけない。これが続くと体調が落ち、持病が悪化し、気力も削られていきます。
その穴を埋める選択肢の一つが、避難所や支援拠点で使える「簡易サウナ設備」です。
これは贅沢ではなく、清潔・体温・睡眠・メンタルを守る“衛生インフラ”として捉えると判断がしやすくなります。
- ■① そもそも簡易サウナ設備とは|被災地で使う目的は「快適」より「回復」
- ■② 避難所で効く理由|清潔・体温・睡眠が崩れると一気に弱る
- ■③ 導入の優先順位|“誰のために・どこで・いつまで”を先に決める
- ■④ 安全が最優先|火気・一酸化炭素・転倒・熱中症を潰してから運用する
- ■⑤ 衛生と尊厳を守る設計|着替え・タオル・目隠しがセットで必要
- ■⑥ 被災地で見た現実|“温める場所”があるだけで、表情が戻る
- ■⑦ 代替策も持つ|簡易サウナが無理なら「清拭・足湯・保温」で守る
- ■⑧ 今日できる最小行動|自治体と家庭の両方で“導入の条件”を揃える
- ■まとめ|簡易サウナ設備は“贅沢”ではなく、体調悪化を防ぐ衛生インフラになり得る
■① そもそも簡易サウナ設備とは|被災地で使う目的は「快適」より「回復」
被災地での簡易サウナ設備は、娯楽ではありません。目的は次の4つに集約されます。
・体を温めて血流を促し、冷えとこわばりを減らす
・汗をかいて皮膚を清潔に保ち、かぶれや感染を減らす
・睡眠の質を上げ、疲労を回復させる
・精神的ストレスを一時的に下げ、心を整える
入浴支援が入るまでの“つなぎ”としても、入浴できない期間が長い地域の補完としても機能します。
■② 避難所で効く理由|清潔・体温・睡眠が崩れると一気に弱る
避難生活では、環境が整わないほど体調が崩れやすくなります。
・着替えが足りず汗が冷えて体温が落ちる
・寝具が薄く、寒さで眠れない
・洗えないことで皮膚トラブルが増える
・ストレスで食欲と免疫が落ちる
簡易サウナは、入浴の代替にはなりませんが、「体を温めて汗を出す」だけでも回復力が戻りやすくなります。
特に寒冷期や雨天が続く時期は、効果が出やすいです。
■③ 導入の優先順位|“誰のために・どこで・いつまで”を先に決める
導入判断で迷う時は、次の順番で考えると整理できます。
1) 対象:高齢者、乳幼児、慢性疾患、寒さに弱い人が多いか
2) 場所:屋内か屋外か、動線を分けられるか(混雑・転倒対策)
3) 期間:入浴支援が来るまでの暫定か、長期運用か
4) 運用:誰が管理し、何人を何分で回すか
“設備を置くこと”が目的になると失敗します。
目的は「体調悪化を減らす」ことに置くのが安全です。
■④ 安全が最優先|火気・一酸化炭素・転倒・熱中症を潰してから運用する
簡易サウナ設備は、使い方を間違えると危険もあります。最低限の安全設計が必要です。
・火気使用型は原則、屋外か十分な換気を確保する
・一酸化炭素警報器を併用し、換気手順を固定する
・出入口の段差をなくし、足元の滑り止めを徹底する
・水分補給と休憩の導線を作り、長時間利用を防ぐ
・体調チェック(めまい、動悸、頭痛)が出たら即中止する
元消防職員として強く言えるのは、「便利そうだから」で火気を持ち込むと、避難所は一気に危険になるということです。
“火を入れた瞬間から”管理責任が発生します。
■⑤ 衛生と尊厳を守る設計|着替え・タオル・目隠しがセットで必要
簡易サウナ設備は、設備単体では成立しません。避難所で使うなら、必ずセットで考えます。
・着替えの確保(下着、靴下、肌着)
・タオルと汗拭きシート、簡易洗面の併設
・プライバシー確保(目隠し、動線分離、時間帯配慮)
・使用後の換気・清掃・ごみ回収の手順
避難所では「人に見られる不安」が大きな負担になります。
尊厳を守る設計ができないなら、導入より別手段(入浴支援・清拭・衣類支援)を優先した方が安全です。
■⑥ 被災地で見た現実|“温める場所”があるだけで、表情が戻る
被災地派遣で避難所運営に関わった時、体調を崩す人の多くは「寒さ・不眠・衛生」の三点が重なっていました。
避難所で体を温められる場所が確保できた瞬間、表情が少し戻る人がいます。これは気のせいではありません。
特に、夜に冷え切った体を少しでも温められると、眠りが深くなり、翌日の動きが変わります。
“回復する導線”を作ることは、災害関連死を減らす方向に働くと現場で感じています。
■⑦ 代替策も持つ|簡易サウナが無理なら「清拭・足湯・保温」で守る
簡易サウナが用意できない場合でも、目的を分解すれば代替できます。
・清潔:清拭タオル、体拭きシート、簡易洗面
・体温:防寒具、毛布、湯たんぽ、カイロ、足湯
・睡眠:寝具の底冷え対策、耳栓、アイマスク
・心:短時間のリラックス空間、静かな時間帯の確保
設備がなくても、「温める」「拭く」「眠れる」を作れば十分に効果があります。
無理にサウナに寄せる必要はありません。
■⑧ 今日できる最小行動|自治体と家庭の両方で“導入の条件”を揃える
今日からできることは次の3つです。
・自治体:避難所の暖房・換気・電源・動線の現状を点検する
・地域:入浴支援が来るまでの“清拭・保温・着替え”の備えを共有する
・家庭:避難用の着替え(下着・靴下)と体拭き用品を最低3日分まとめておく
簡易サウナ設備は、条件が揃えば強い味方になります。
ただし、条件が揃わないなら、目的を分解して別の手段で守るのが安全です。
■まとめ|簡易サウナ設備は“贅沢”ではなく、体調悪化を防ぐ衛生インフラになり得る
簡易サウナ設備は、被災地で入浴が難しい状況において、清潔・体温・睡眠・メンタルを支える手段になり得ます。
一方で、火気・換気・転倒・熱中症などのリスク管理ができない場合は、導入よりも清拭・足湯・保温・寝具改善などの代替策を優先する方が安全です。
設備の有無よりも、「回復できる導線」を避難所に作れるかが本質です。
結論:
簡易サウナ設備は、条件が揃えば避難生活の“回復力”を底上げする。ただし安全と尊厳の設計ができないなら、目的を分解して代替策で守るのが正解。
元消防職員としての実感は、避難所は“良かれと思って足したもの”が事故につながりやすい場でもあるということです。だからこそ、導入するなら安全手順まで含めて仕組みにし、導入しないなら代替策で確実に守る。その判断が、被災者の体と心を守ります。
出典:厚生労働省「避難所生活を過ごされる方々の健康管理に関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212514_00001.html

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