火災は、発生してから頑張るより、発生しないように整えるほうが被害を小さくできます。特に不特定多数が出入りする建物や、夜間に人員が少ない施設では、初動の遅れがそのまま被害の差になります。そこで重要なのが「防火管理者」です。これは名札を付ける役ではなく、建物の火災リスクを日常から潰していく実務の責任者です。ここでは、防火管理者が何を担い、何を整えれば火災の被害が減るのかを整理します。
■① 防火管理者とは何か
防火管理者とは、消防法に基づき、防火対象物(建物や施設)で火災予防と安全な避難のための管理を行う責任者です。施設の用途や規模によって選任が必要になります。役割は大きく、
・火災を起こさない(予防)
・起きたら早く気づく(早期発見)
・広げない(初期対応)
・逃げ遅れを防ぐ(避難誘導)
の4つに集約できます。
■② 防火管理者が担う中心業務(消防計画と日常管理)
防火管理者の仕事は、紙の作成より、日常で回すことです。
・消防計画の作成と運用
・避難経路の確保(物を置かない、閉塞させない)
・火気管理(喫煙、厨房、ストーブ、電気機器)
・訓練の計画と実施
・点検結果の確認と是正
火災は「ちょっとした放置」が積み重なって起きます。日常管理こそが本丸です。
■③ 逃げ遅れを防ぐ鍵は“避難経路”と“声かけ”
火災時に人が動けなくなる原因は、火そのものだけではありません。
・どこへ逃げればいいか分からない
・煙で視界が悪い
・人が固まって詰まる
ここを減らすのが、避難経路の見える化と、声かけ避難です。
「こちらへ!走らないで!」
「階段へ!エレベーターは使わない!」
この声かけがあるだけで、動きが揃い、混乱が減ります。
■④ よくある失敗(訓練が“形だけ”になる)
防火管理で多い失敗は、訓練が形だけになることです。
・点呼の場所が曖昧
・通報の手順が不明
・非常放送や通報の担当が決まっていない
・消火器の場所を誰も知らない
訓練は「できたつもり」を壊すためにあります。できない点が見えたら勝ちです。
■⑤ 被災地派遣(LO)で感じた“日常の整備が非常時の混乱を減らす”現実
被災地派遣(LO)の現場では、避難所や拠点でも「日常の整備がある場所ほど混乱が少ない」と痛感しました。導線が整理され、役割が決まり、情報共有の型があるだけで、人は落ち着きます。建物火災も同じで、平時に避難経路が確保され、初動の役割が共有されているほど、火災時の判断が軽くなります。防火管理者は、非常時の混乱を“平時の整備”で先に減らす役割だと実感しています。
■⑥ 防火管理者が押さえるべきチェックポイント(毎週3分)
防火管理は、短時間でも継続が強いです。毎週3分で十分効果が出るポイントは、
・非常口前に物が置かれていないか
・階段・廊下が塞がれていないか
・消火器が見える位置にあるか
・延長コードのタコ足が増えていないか
・喫煙場所の管理が崩れていないか
「増えていないか」を見るだけで、事故の芽を早く摘めます。
■⑦ 事業者にとってのメリット(事故が起きないほど信用が上がる)
防火管理はコストに見えますが、本質は信用の維持です。
・火災による休業や損害を防ぐ
・利用者や従業員の安全を守る
・行政対応や訴訟リスクを減らす
事故が起きないこと自体が、最も価値のある結果です。
■⑧ 今日からできる最小の改善(“一つだけ”決めて徹底)
防火管理で効くのは、大改革より「一つだけ徹底」です。
・非常口前は絶対に空ける
・階段に物を置かない
・火災時はまず119番、次に初期消火、そして避難誘導
この“たった一つ”を徹底すると、次の改善が自然に進みます。
■まとめ|防火管理者は「火災の芽を日常で潰し、避難の混乱を減らす」実務の責任者
防火管理者は、消防計画を作るだけではなく、避難経路の確保、火気管理、訓練、点検の是正などを通じて、火災を起こさない・広げない・逃げ遅れない状態を日常から作る責任者です。訓練は形だけにせず、声かけ避難と役割分担を実務レベルで回せるようにすることが重要です。平時の整備があるほど、非常時の混乱は減ります。
結論:
防火管理者の仕事は“火災が起きない未来”を作ること。避難経路と役割分担を日常で整えるほど、逃げ遅れと被害は確実に減ります。
元消防職員として、被災地派遣(LO)の現場でも、導線と役割が整っている場所ほど混乱が少ない現実を見てきました。火災も同じで、平時の整備が命を守ります。
出典:https://www.fdma.go.jp/

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