【元消防職員が解説】防災管理点検資格者講習とは?|“複合災害でも崩れない施設”をつくる点検の視点

防火対象物点検が「火災予防体制」を中心に見る制度だとすれば、
防災管理点検は、地震や停電、浸水なども含めた“施設の災害対応力”を総合的に点検する制度です。

災害は、火災だけで終わりません。
だからこそ、防災管理点検資格者講習は「複合災害に耐える運用」を見抜くための講習になります。


■① 防災管理点検とは?|災害時に施設が機能するかを確認する制度

防災管理点検で見るのは、設備の有無よりも“運用”です。

・災害時の指揮命令系統
・安否確認の手順
・避難誘導の体制
・停電時の代替手段
・備蓄や資機材の運用
・訓練の実施と改善

「計画があるか」ではなく、「計画が動くか」を確認します。


■② なぜ講習が必要か|チェックリストでは拾えない“崩れ方”がある

災害対応は、想定外が前提です。

・停電で放送が止まる
・通信障害で連絡網が回らない
・余震で避難経路が変わる
・水が使えず衛生が崩れる

この“崩れ方”を想像し、点検に落とし込むには知識と視点が必要です。

講習は、災害を「運用の問題」として見る目を育てます。


■③ 現場で差が出るポイント|停電・通信途絶の“次の一手”

元消防職員として、施設の災害対応で差が出ると感じるのはここです。

・停電した直後に誰が何をするか決まっている
・非常用照明やライトの配置が現場目線
・連絡が取れない前提で集合場所が決まっている
・情報を一本化する手順がある

逆に、計画があっても「停電想定」が弱い施設は、初動が止まります。


■④ 被災地派遣で見えた現実|“備蓄”より“運用”が施設を救う

被災地派遣やLO調整の現場で何度も感じたのは、
備蓄が多い施設より、運用が回る施設のほうが強いということです。

・誰が配るか決まっている
・配布の優先順位がある
・不足を前提に代替策がある
・混乱時でも「声が出る」

災害時は、物より先に“体制”が問われます。
点検は、その体制が本当に回るかを見る仕事です。


■⑤ よくある弱点|訓練が「イベント」で終わっている

点検でよく見かける課題は、訓練が形式化していることです。

・毎年同じシナリオ
・役割が固定で代替がない
・夜間想定がない
・停電や通信障害の想定がない

訓練がイベント化すると、災害時に“想像の外側”が増えます。
点検では、訓練が改善につながっているかまで確認します。


■⑥ 点検資格者に求められる視点|「正常性バイアス」を崩す

災害対応を阻む最大の壁は、装備不足よりも認知のズレです。

・想定していない
・大丈夫だと思っている
・前例がないからやらない
・誰かがやると思っている

点検資格者は、こうした正常性バイアスを“仕組み”で崩す役割があります。
指摘は厳しさではなく、命を守るための設計です。


■⑦ 今日できる最小行動|「停電したら、集合はどこ?」を決める

今日、施設内で1つだけ決めてほしいことがあります。

・停電したら、誰がどこに集まるか
・情報は誰に集めるか
・最初の5分にやることは何か

この3点を決めるだけで、災害対応は一気に現実に近づきます。


■⑧ 結論|防災管理点検資格者講習は“施設の崩れ方”を先に潰す講習

防災管理点検資格者講習は、複合災害や停電・通信途絶などを前提に、施設が災害時でも機能するかを点検できる人材を育てる講習です。
点検の目的は、災害後に反省することではなく、災害前に崩れ方を潰すことです。

結論:
防災管理点検は「備えがあるか」ではなく「備えが動くか」を確認する点検。
元消防職員として現場で痛感したのは、災害時に強い施設は「初動が止まらない」ことです。
その初動を止めない設計を作るために、この講習があります。

出典:総務省消防庁 https://www.fdma.go.jp/

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