昭和43年5月16日午前9時49分、北海道襟裳岬の南東方150km、深さ40kmを震源とするM7.9の地震が発生しました。苫小牧で震度6、浦河・広尾・函館・青森・八戸・盛岡など広範囲で強い揺れが観測され、青森県東部・北海道南部を中心に死者52人、負傷者330人、全壊673棟、半壊3,004棟の被害が生じました。津波も発生しましたが干潮時で大きな被害はありませんでした。
この地震では火災が27件発生し、出火原因の多くが石油ストーブの転倒とされています。一方で、消防機関の迅速・適切な対応により延焼がなかった点は、いまの備えにも直結する重要な教訓です。
■① 広域で揺れる地震は「同時多発」を前提にする
広範囲で強い揺れが起きる地震は、建物被害・負傷者対応・出火・通信混雑が同時に起きます。つまり、ひとつの問題に集中すると、別の問題が増幅しやすい。
家庭でも同じで、地震直後は「何からやるか」を1つに絞った方が安全です。行動を増やすより、迷いを減らす判断が効きます。
■② まずは“火”のリスクを消すのが最優先
この地震で火災が27件発生し、原因のほとんどが石油ストーブの転倒とされています。揺れの直後に「火の元」を切れないと、家の損傷より先に火災が被害を拡大させます。
家庭の初動はシンプルで十分です。
・揺れがおさまったら、火器の元栓・スイッチ・燃料機器を止める
・におい(ガス・灯油)と煙の有無を確認する
・火が見えたら初期消火は“出口を確保してから”にする
■③ 転倒しやすい器具は「固定」より先に“配置”を変える
転倒防止というと固定に意識が向きがちですが、まずは配置が重要です。
・人の動線上に置かない
・物が落ちて当たりやすい場所を避ける
・転倒しても燃え広がりにくい周辺環境にする
元消防職員として現場で強く感じたのは、火災は「原因そのもの」より「燃え広がる条件」がそろった瞬間に一気に大きくなるということです。配置を変えるだけで、その条件を1つ減らせます。
■④ 延焼がなかった理由は「早い通報」と「水利・連携」
この地震では、消防機関の迅速・適切な対応により延焼がなかったとされています。延焼を止める鍵は、現場到着の早さだけではありません。
・通報が早い(小火のうちに知らせる)
・初期の区画・防御が早い(隣家へ燃え移らせない)
・水利が確保できる(出せる水がある)
・交通・情報が回る(到着までが詰まらない)
被災地派遣で見た現実として、地域の混乱が大きいほど「小さな火」が見逃されやすく、結果として取り返しのつかない火災になります。小さいうちに共有する文化が、被害を分けます。
■⑤ 被害の中心が広いほど「助けは遅れる」前提で備える
広域で被害が出ると、消防・救急・行政は必ず手いっぱいになります。だからこそ家庭は「助けが来るまで持ちこたえる設計」が必要です。
・消火器の位置を家族全員が知っている
・火災警報器が作動する状態にある
・懐中電灯(頭に付けるタイプが便利)がすぐ使える
・避難経路が塞がれても出られる出口を想定している
■⑥ “自分の家だけ無事”でも火災は起きる
地震後の火災は、家の被害が軽くても発生します。転倒・落下・燃料漏れ・通電再開など、きっかけは複数あるからです。
だからこそ、地震直後は「家の中を片付ける前に火を確認する」が安全です。火は静かに始まり、気づいた時にもう煙が回っていることがあります。
■⑦ 現場の感覚として“焦り”が一番危ない
災害時は焦りで動作が増えます。動作が増えると転倒・火傷・誤判断が増えます。LOとして現場調整に入った時も、混乱の大半は「情報不足」より「焦りによる行動過多」でした。
迷ったらこの判断でいいです。
・まず身の安全
・次に火のリスク
・最後に片付けや確認
順番を守るだけで、事故は減ります。
■⑧ 今日できる最小行動(5分で終わる)
・石油ストーブや火気の周囲に“倒れて燃える物”がないか確認
・消火器の置き場所と使用期限を確認(見える場所に)
・住宅用火災警報器の作動確認(ボタンでOK)
やることは少なくて大丈夫です。少ない行動を確実に積む方が、災害時に強いです。
■まとめ|
昭和43年のM7.9地震では広域に大きな被害が出る一方、火災は27件発生しながらも延焼がなかったという重要な教訓が残りました。地震直後の火の元確認、転倒しやすい器具の配置見直し、そして早い共有と初動が、被害を決定的に分けます。
結論:
地震の直後は「火のリスクを最優先で消す」。これだけで、家と命を守れる確率が大きく上がります。
元消防職員として現場で見てきたのは、火災は“起きてから”より“起きる条件を減らす”方が圧倒的に確実だという事実です。備えは小さく、判断は早く。それが一番強い防災です。
出典:http://ff-inc.co.jp/wpmailmaga/archive_no60_a

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