WBCの独占配信をめぐって、「見たいのに見られない」「地上波で見られなくなったのは不便」といった声が多く出ています。スポーツ中継の話ではありますが、この議論は防災にもそのまま重なる部分があります。
それは、「大事な情報を、どの手段で受け取るのか」という問題です。普段はスマホや配信サービスで十分に見られていても、災害時には停電、通信障害、充電切れなどで、いつもの見方が使えなくなることがあります。
防災では、情報を“見る手段”を一つに絞っていると弱くなります。この記事では、WBCの視聴環境をめぐる議論をきっかけに、防災で本当に大切な「情報の受け取り方」について整理します。
■① 「見られない不安」は防災でも起こる
WBCの独占配信をめぐる話題では、「加入しないと見られない」「地上波で見られないのは困る」といった反応が目立ちました。これは単なる娯楽の不便さの話に見えて、実は防災の本質に近いものがあります。
人は、必要な時に必要な情報が見られないと強い不安を感じます。災害時も同じで、避難情報、津波警報、道路状況、停電情報、避難所情報などが見られないと、行動の判断が難しくなります。
防災士として感じるのは、不安の正体は災害そのものだけではなく、「状況が分からないこと」で大きくなるということです。見られない不安を減らすことは、防災の大事なテーマです。
■② 情報手段を一つに頼ると災害時に弱い
普段はスマホ一台で、ニュースも動画も連絡も地図も見られます。とても便利ですが、災害時はその便利さがそのまま弱点になることがあります。
停電すれば充電が減ります。通信が混み合えば、動画どころか文字情報すら見にくくなることがあります。スマホが故障したり、水濡れしたりすることもあります。普段は「これ一つで十分」と思っていても、災害時はそうはいきません。
元消防職員として現場で感じてきたのは、情報源が一つしかない人ほど混乱しやすいということです。防災では、「見られること」より「見られなくなっても代わりがあること」が大切です。
■③ 地上波・ネット・ラジオは役割が違う
WBCの議論では、地上波で見られなくなったことへの残念さと、ネット配信が主流になる流れを受け入れる意見の両方がありました。これは、防災情報の受け取り方でも同じです。
地上波は、多くの人が一斉に同じ情報を得やすい強みがあります。ネット配信は、詳しい情報や個別の情報にアクセスしやすい強みがあります。ラジオは、停電時や通信障害時でも比較的使いやすい強みがあります。
つまり、どれが一番良いというより、役割が違います。防災では、この違いを理解して使い分けることが重要です。一つの手段が使えなくなっても、別の手段で補える状態が理想です。
■④ 「見たい情報」と「命を守る情報」は分けて考える
スポーツ中継では、「見たいのに見られない」という不満が中心になります。しかし防災では、「見たい」より「すぐ知る必要がある」情報が優先されます。
たとえば、津波警報、避難指示、土砂災害警戒情報、河川の氾濫情報、停電情報などは、楽しみの情報ではなく、命を守るための情報です。だからこそ、防災では“見やすさ”だけでなく、“確実に届くか”が重要になります。
被災地派遣の現場でも、情報が届かずに避難が遅れた例は少なくありません。防災では、情報の内容だけでなく、どう受け取るかまで備えておく必要があります。
■⑤ スマホ時代だからこそラジオを見直したい
今はスマホ中心の生活なので、ラジオを持っていない家庭も増えています。しかし災害時には、ラジオの強さが改めて見直されます。
スマホは便利ですが、電池を使います。しかも動画視聴や地図の確認を続けると消耗が早くなります。その点、電池式ラジオや手回しラジオは、情報を受け取る手段として非常に現実的です。
防災士として実際に多かった失敗の一つは、「スマホがあるから大丈夫」と考えていたことです。実際には、情報を見るためにスマホを使いすぎて、肝心の連絡手段としての電池が減ってしまうことがあります。情報用と連絡用を分ける発想も大切です。
■⑥ 家族で「どうやって情報を見るか」を決めておく
防災では、情報をどこから得るかを家族で共有しておくと強いです。誰がスマホで自治体情報を見るのか、誰がラジオを聞くのか、停電したら何を使うのかを決めておくだけでも、混乱は減ります。
特に高齢者がいる家庭では、アプリや配信サービスより、テレビやラジオの方が使いやすいことがあります。子どもがいる家庭では、停電時でも落ち着いて情報を確認できる手段が必要です。
行政側が言いにくい本音として、大規模災害ほど「自分で情報を取りにいく力」が必要になります。自律型避難という意味でも、家庭の中で情報取得の役割分担を考えておくことは有効です。
■⑦ 「時代の流れ」でも備えは減らしてはいけない
WBCの独占配信に対しては、「時代の流れだから仕方ない」という意見もあります。確かに、配信中心の時代は今後さらに進むはずです。防災情報も、アプリやSNS、配信型サービスが増えていくでしょう。
ただし、防災で大切なのは、新しい手段を受け入れつつ、古い手段を切り捨てすぎないことです。新しいものは便利ですが、災害時には弱い場面もあります。逆に、少し古く感じる手段が非常時には頼れることがあります。
防災は効率だけで考えないことが大切です。平時は不便に見えても、有事には役立つ手段を残しておくことが、命を守ることにつながります。
■⑧ 防災で大切なのは「見られる環境を複数持つこと」
今回のWBCの議論から見えてくるのは、「見たいものが見られない不便さ」だけではありません。本当に大切なのは、「必要な時に必要な情報を見られる環境を複数持つこと」です。
スマホ、テレビ、ラジオ、自治体の防災無線、家族間の連絡手段。これらを一つではなく、複数持っておくことで、防災情報の取りこぼしを減らせます。
防災は、情報を多く持つことより、必要な情報に確実につながれることが大切です。見る手段を増やしておくことは、そのまま安心につながります。
■まとめ|防災では「見る手段」を一つにしないことが重要
WBCの独占配信をめぐる議論は、視聴環境の変化だけでなく、「必要な情報をどの手段で受け取るか」という防災にも通じるテーマを考えさせてくれます。
災害時は、スマホやネットだけに頼っていると、停電や通信障害で一気に弱くなります。だからこそ、テレビ、ラジオ、自治体情報なども含めて、複数の情報手段を持っておくことが重要です。
結論:
防災で命を守るためには、大事な情報を“見る手段”を一つに絞らず、複数持っておくことが大切です。
防災士としての実感でも、災害時に落ち着いて行動できる人ほど、情報源が一つではありません。普段の便利さに頼りきらず、非常時にも見られる手段を残しておくことが、防災の強さになります。
出典:Yahoo!ニュース「【ヤフコメで話題】『Netflix独占放送への賛否』『スポーツ中継の地上波離れ』 – WBC視聴環境を巡る議論」

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