いじめ防止は、生活指導の一部として扱われがちですが、本来は学校の危機管理そのものです。文部科学省の「学校の危機管理マニュアル作成の手引」では、学校が対応すべき危機事象の中にいじめが位置づけられており、未然防止、早期発見、発生時の対処を含めて、学校全体でマニュアル化し、体制を整えておく必要があると示されています。さらに、文部科学省の「いじめ対策に係る事例集」では、学校いじめ対策組織が中心となって、被害児童生徒の安全確保、情報共有、教職員の役割分担、支援内容を整理した対処プランを作ることが重要だと示されています。文部科学省「学校の危機管理マニュアル作成の手引」 文部科学省「いじめ対策に係る事例集」
つまり、学校の危機管理としていじめを考える時に大切なのは、「いじめは心の問題だから、まず話を聞こう」で止まることではなく、被害児童生徒の安全確保、組織的な情報共有、記録、保護者対応、再発防止までを一つの流れとして持つことです。元消防職員として感じるのは、危機管理で一番危ないのは「問題が起きたこと」だけではなく、「起きた後に役割が曖昧で動きが止まること」です。私は、いじめ防止を危機管理に入れるなら、まず守る対象を明確にする、次に組織で回す、最後に再発防止へつなげる、この順で整えるのが現実的だと考えます。
■① まず結論として、いじめ防止を危機管理に入れる時に最優先にすべきことは何か
結論から言うと、最優先にすべきことは、いじめを“生活指導上の困りごと”ではなく“安全上の危機”として位置づけることです。
文部科学省の危機管理マニュアル作成の手引は、いじめを学校が備えるべき危機事象の一つとして扱っています。つまり、いじめ対応は「担任が様子を見る」だけでなく、学校全体としてあらかじめ流れを決めておく必要があります。私は、学校の危機管理で大事なのは、「気づいた人が頑張る仕組み」ではなく「誰が気づいても学校全体が動く仕組み」だと考えます。文部科学省「学校の危機管理マニュアル作成の手引」
■② まず守るべきなのは誰か
まず守るべきなのは、被害児童生徒の安全と安心です。
文部科学省の「いじめ対策に係る事例集」では、学校は、いじめが解消に至っていない段階では、被害児童生徒を徹底的に守り通し、その安全・安心を確保する責任を有すると示しています。さらに、学校いじめ対策組織において、支援内容、情報共有、教職員の役割分担を含む対処プランを策定し、確実に実行することが重要だとされています。つまり、危機管理として最初に考えるべきなのは、「加害・被害の事実認定を急ぐこと」より「被害側の安全を先に確保すること」です。文部科学省「いじめ対策に係る事例集」
元消防職員としても、危機対応では、まず被害拡大を止めることが基本です。学校でも同じで、「何があったか」を整理する前に、「これ以上傷つかない状態を作る」ことが先です。
■③ いじめ対応はなぜ“担任任せ”では危ないのか
理由は、いじめは情報が分散しやすく、単独対応だと見落としや判断遅れが起きやすいからです。
文部科学省の事例集は、学校いじめ対策組織が中心となって対応することを繰り返し示しています。危機管理マニュアル作成の手引でも、学校の危機対応は個人対応ではなく、校内組織で役割分担しながら進める考え方が基本です。つまり、いじめ対応を担任一人の力量で抱える形にすると、情報共有が遅れたり、対応が属人的になったりしやすくなります。文部科学省「いじめ対策に係る事例集」 文部科学省「学校の危機管理マニュアル作成の手引」
私は、学校危機管理では「熱心な先生が一人いること」より「誰が担当でも同じ流れで動けること」の方が強いと考えます。
■④ いじめ発生時に最初に整理すべきことは何か
最初に整理すべきなのは、事実関係の把握と記録、そして被害側の安全確保を並行して進めることです。
文部科学省の重大事態調査ガイドラインでは、重大事態調査の目的は、対象児童生徒の尊厳を保持し、事実関係を可能な限り明らかにし、当該重大事態への対処と同種事態の再発防止策を講ずることだと示されています。これは重大事態だけでなく、通常のいじめ対応でも大切な考え方です。つまり、「まず白黒をつける」より、「まず何が起きたかを記録しながら、被害を広げない」方が現実的です。文部科学省「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」
私は、危機管理としてのいじめ対応では、最初の記録がかなり重要だと考えます。後になるほど記憶はずれやすく、受け止め方も変わるからです。
■⑤ 保護者対応はどのように考えるべきか
保護者対応で大切なのは、後追い連絡ではなく、学校としての見立てと対応方針を持って伝えることです。
文部科学省の危機管理マニュアル作成の手引は、危機事象に対しては保護者や関係機関との連携を含めた対応体制を整える必要があると示しています。また、事例集でも、学校いじめ対策組織が情報共有と役割分担を行った上で、被害・加害双方の保護者対応を進めていくことが重要であると読み取れます。つまり、保護者対応は「事実確認が全部終わってから」ではなく、安全確保と学校の初動方針を説明できる段階で、早めに誠実に行うことが大切です。文部科学省「学校の危機管理マニュアル作成の手引」 文部科学省「いじめ対策に係る事例集」
被災地経験でも、情報が不十分な時ほど、不安は広がります。学校でも、保護者が一番不安なのは「学校が把握しているのか分からない」状態です。
■⑥ 重大事態をどう見極めるべきか
ここはかなり大事です。学校側が軽く見ても、重大事態に当たりうるケースがあることを前提に考えた方が安全です。
文部科学省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」は、重大事態調査の流れや考え方を整理しており、いじめにより対象児童生徒が重大な被害を受けるに至った事実関係を明らかにすることを目的としています。つまり、学校としては「よくあるトラブル」だと決めつけず、被害側にどれだけ深刻な影響が出ているかで見なければいけません。文部科学省「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」
私は、危機管理では「大事にしたくない」という気持ちが一番危ないと感じます。いじめでも、最初に小さく扱いすぎると、その後の対応が遅れやすいです。
■⑦ 再発防止は何から考えるべきか
再発防止で大切なのは、個人の反省だけで終わらせず、学校の仕組みを見直すことです。
文部科学省の重大事態調査ガイドラインは、調査の目的の一つとして、学校の設置者及び学校が今後取り組むべき再発防止策を講ずることを挙げています。また、事例集も、いじめが解消している状態に至っても、再発の可能性を踏まえて日常的に注意深く観察する必要があると示しています。つまり、再発防止では「本人たちに注意した」で終わらせず、見守り、情報共有、相談ルート、学級経営、学年体制まで見直す必要があります。文部科学省「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」 文部科学省「いじめ対策に係る事例集」
私は、危機管理としてのいじめ防止は、「問題児対応」ではなく「学校の仕組み改善」まで行って初めて前に進むと考えます。
■⑧ いじめ防止を危機管理マニュアルへどう入れるべきか
危機管理マニュアルへ入れるなら、未然防止、早期発見、発生時対応、重大事態対応、再発防止の流れで整理すると実務に落とし込みやすいです。
文部科学省の危機管理マニュアル作成の手引は、各危機事象について、未然防止、早期発見、発生時対応、事後対応の流れで整理する考え方を示しています。だから、いじめも同じように、
気づく前に何をするか
気づいた時に誰へつなぐか
起きた時にどう守るか
重くなった時にどう調査するか
どう再発を防ぐか
を一続きで書く方が現実的です。文部科学省「学校の危機管理マニュアル作成の手引」
■⑨ 迷った時の判断基準
迷ったら、次の順番で考えてください。
「いじめを安全上の危機として位置づけられているか」
「まず被害児童生徒の安全確保ができているか」
「担任任せでなく、学校いじめ対策組織で動けているか」
「再発防止を個人の問題で終わらせず、学校の仕組みへ戻せているか」
この4つが整理できれば、いじめ防止を危機管理へ入れる学校事例としてはかなり現実的です。学校安全では、「問題が起きないよう願うこと」より「起きた時に傷を広げない仕組みを持つこと」の方が大切です。
■⑩ まとめ
いじめ防止を学校の危機管理として考える時に大切なのは、被害児童生徒の安全確保を最優先にし、学校いじめ対策組織で情報共有と役割分担を行い、記録、保護者対応、重大事態への備え、再発防止までを一体で回すことです。文部科学省の「学校の危機管理マニュアル作成の手引」は、いじめを学校が備えるべき危機事象として位置づけており、「いじめ対策に係る事例集」は被害児童生徒を徹底的に守り通すことと、学校いじめ対策組織による対処プランの作成を重視しています。さらに、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」は、事実関係の把握、対処、再発防止策までを調査の目的として示しています。
私なら、いじめ防止で一番大事なのは「学校が一生懸命取り組んでいることを示すこと」ではなく「被害を受けている子どもを、学校として確実に守れること」だと伝えます。現場では、きれいな方針より、最初の安全確保と組織対応の方が強いです。だからこそ、まずは守る、次に共有する、最後に再発を防ぐ。この順番で整えるのがおすすめです。

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