災害で家を失ったり、住み続けられなくなったとき、応急的な住まいとして選ばれるのが「みなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)」です。一方で、住まいを確保できても「見知らぬ土地で孤立するのでは」「地域のつながりが切れるのが怖い」という不安は残ります。特に「この地を離れたくない」という思いは、単なるわがままではなく、生活基盤や心の安定に直結する切実な問題です。ここでは、みなし仮設住宅の仕組みと、コミュニティ喪失への備え方を整理します。
■① みなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)とは
みなし仮設住宅とは、災害後の応急的な住まいとして、自治体が民間賃貸住宅などを借り上げ、被災者に一定期間提供する仕組みです。建設型の仮設住宅(プレハブ等)とは違い、既存の賃貸住宅を活用するため、入居までが比較的早く、地域によっては選択肢を広げやすい特徴があります。
■② みなし仮設のメリット(早さ・選択肢・生活の再起動)
みなし仮設住宅の大きなメリットは、生活を早く再起動できる点です。
・入居までのスピードが出やすい
・部屋の広さや立地など、条件を選べる場合がある
・元の生活に近い環境(風呂・キッチン等)を確保しやすい
「まず住まいを確保する」ことは、心身の回復と次の判断を可能にする土台になります。
■③ デメリットの核心は「分散」と「孤立」
一方で、みなし仮設は被災者が広域に分散しやすく、コミュニティが切れやすいという課題があります。
・同じ地域の人と離れて暮らす
・顔見知りが周囲にいない
・情報が届きにくい
・相談先が見えにくい
生活は整っても、心が追いつかない状態が起きやすいのが現実です。
■④ 「この地を離れたくない」は合理的な判断でもある
「離れたくない」という思いには、明確な理由があります。
・通院先、介護、子どもの学校がある
・仕事や取引先が地域にある
・近所づきあいが安全ネットになっている
・土地勘があることが安心につながる
被災後は判断の負荷が増えます。土地勘と人のつながりは、判断を軽くし、生活を回す“見えない資産”です。
■⑤ 被災地経験から見た「住まいが決まっても終わらない」現実
被災地派遣(LO)で現場に入ると、住まいの確保はゴールではなくスタートだと痛感します。入居が決まっても、生活再建の手続き、学校・職場の調整、通院、家の片付け、心身の疲労が重なり、孤立が深まる人が出ます。避難所からみなし仮設へ移ると、表面的には落ち着いて見えても、支援の目が届きにくくなる瞬間があります。だからこそ、住まいの次に「つながり」を意識して確保することが重要です。
■⑥ コミュニティ喪失を防ぐ具体策(最初の1か月が勝負)
孤立を防ぐコツは、最初の1か月で「接点」を作ることです。
・自治体の相談窓口と支援制度の連絡先を紙でまとめる
・同じ地域出身者の集まり(交流会・説明会)に一度は参加する
・民生委員、自治会、支援団体の窓口を一つだけでも把握する
・家族以外の“話せる相手”を作る
情報は人のつながりに乗って流れます。つながりは、支援を受けるためのインフラです。
■⑦ 子ども・高齢者ほど「見えない孤立」が起きやすい
みなし仮設では、特に次の層で孤立が見えにくくなります。
・高齢者(外出が減り、体調悪化が遅れて見つかる)
・子ども(転校や環境変化でストレスが表に出にくい)
・介護世帯(家の中で抱え込みやすい)
「困っていると言えない」状態が一番危険です。見守りの仕組みを生活の中に組み込みます。
■⑧ 今日できる最小の行動(住まい+つながりをセットで備える)
みなし仮設に限らず、避難生活で最初に効く最小行動はこれです。
・連絡先カード(家族、自治体窓口、医療、学校)を1枚作る
・近所で一人だけ挨拶できる相手を作る
・「困ったらここ」と決める窓口を一つメモする
大きな備えより、「迷わない仕組み」が生活を守ります。
■まとめ|みなし仮設住宅は「住まいの確保」だけでなく「つながりの確保」までがセット
みなし仮設住宅は、災害後の応急的な住まいとして、民間賃貸住宅を活用して生活再建の第一歩を支える仕組みです。一方で、被災者が分散しやすく、コミュニティ喪失や孤立の不安が生まれやすい課題があります。「この地を離れたくない」という思いは生活基盤と心の安定に直結するため、住まいの選択では距離・通院・学校・仕事・つながりを総合的に考えることが重要です。
結論:
みなし仮設住宅は「住まいを確保して終わり」ではなく、「つながりを確保して生活を回す」までが本当の再建です。
防災士として、被災地派遣(LO)の現場でも、住まいが整っても孤立が進む場面を見てきました。だからこそ、住まいと同時に“相談先と接点”を先に作っておくことが、心と生活を守る現実的な備えになります。
出典:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000065.html

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