【防災士が解説】やってはいけない防災対策5選──正しいと思っていたことが逆効果になる

「防災対策をしている」という安心感が、かえって危険な判断を生むことがあります。
内閣府も「間違いだらけの防災対策」として公式に否定している行動を含め、現場目線で5つ整理します。


■①「揺れたらすぐ火の始末」は間違い

長年、防災パンフレットに書かれてきた「グラッときたら火の始末」は、実は誤りです。

激しい揺れの最中にコンロに近づくことは、火傷・転倒・落下物による怪我のリスクが高く、非常に危険です。都市ガスをはじめ、地震時に危険性の高い機器の多くは、震度5以上の揺れを感じると自動停止する仕組みになっています。揺れている最中は身を守ることだけに集中し、火の始末は揺れが収まってから行うのが正解です。


■②「とにかく外に飛び出す」は一発アウト

地震発生直後に外に飛び出すのは、最も危険な行動のひとつです。

看板・外壁・瓦・ガラスが落下してくる可能性があり、屋外の方が危険なケースがほとんどです。まず室内で身を守り、揺れが収まってから安全を確認して行動する。「揺れたら外へ」という反射的な行動を取らないことが、命を守ります。


■③「防災リュックを玄関に置いた」だけで終わり

防災リュックを準備した達成感で、備えが止まってしまう家庭が非常に多いです。

問題は、中身を定期的に確認していないこと。賞味期限切れの食料、電池が切れたままの懐中電灯、サイズアウトした子どもの着替え──こういう「使えない防災リュック」が被災地では多発します。準備して終わりではなく、年2回(春・秋)の中身点検を習慣化することが本当の備えです。


■④「水を3日分備蓄した」という過信

「3日分備えた」という安心感は、大規模災害では根拠を失います。

能登半島地震・東日本大震災では、断水が1週間以上続いた地域が広範囲に及びました。「3日で復旧する」という想定は、局地的な小規模災害には通用しても、大規模災害には当てはまりません。最低7日分・できれば2週間分を目安に備えることが、現場を知る立場からの正直な推奨です。


■⑤「避難所に行けばなんとかなる」という思い込み

「いざとなれば避難所に行く」という考えは、現実とズレがあります。

大規模災害時には避難所が満員になるケースがあること、避難所にたどり着けない状況があること、避難所生活そのものが心身への負担になることを、現場では何度も見てきました。避難所を「ゴール」にするのではなく「選択肢のひとつ」として、在宅避難・知人宅避難・車中泊避難も含めた複数の選択肢を平時から考えておくことが重要です。


■⑥「ローリングストックしている」のに使っていない

ローリングストックの概念は正しいですが、「買い足しているだけで消費していない」家庭が多いです。

防災士として現場で見た誤解されがちポイントとして、「備蓄食料を食べるのがもったいない」という意識があります。ローリングストックは「日常的に食べて、食べたら補充する」サイクルが命です。食べないまま期限が切れた非常食は、備えではなくゴミです。


■⑦「ハザードマップを見た」だけで終わり

ハザードマップを確認したことで安心してしまう人が少なくありません。

重要なのは「確認した上で、どう動くかを決めること」です。浸水想定区域に住んでいながら、どのルートで・どこに・誰と避難するかを決めていなければ、マップを見た意味がありません。知識は行動とセットにして初めて命を守る力になります。


■⑧「家族全員が揃ってから逃げる」という判断

「家族が帰ってきてから一緒に避難しよう」という判断で、逃げ遅れる事例が後を絶ちません。

災害時は、それぞれが自律的に避難を開始することが原則です。家族の集合場所・安否確認方法を事前に決めておき、「危険と判断したら一人でも逃げる」という共通認識を家族で持っておくことが、全員の命を守ることにつながります。


■まとめ|「やっている気になる防災」が一番危ない

  • 「揺れたら火の始末」→揺れ中は身を守ることだけに集中
  • 「外に飛び出す」→室内で安全確保が基本
  • 防災リュックは中身の定期点検が必須
  • 水の備蓄は3日では足りない、7日〜2週間が現実的
  • 避難所は選択肢のひとつ、在宅避難・複数ルートを想定する

結論:
「備えた」という安心感が、最大の落とし穴。防災は「やった」で終わらず、「使える状態か」を定期的に確認し続けることが本質。

防災士として感じる行政の本音を言うと、「防災グッズを買ってもらうことより、実際に使える準備をしてもらうことの方が、はるかに命を守る」ということです。備えの量より、備えの質と鮮度が重要です。


内閣府|間違いだらけの防災対策(bousai.go.jp)

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