避難所の環境は、命を守ったあとに「命をつなぐ」段階で効いてきます。
水、トイレ、スペース、プライバシー。ここが崩れると体調が悪化し、災害関連死のリスクが上がります。
被災地派遣の現場でも、避難所の環境が整っているほどトラブルが少なく、人が落ち着いていました。
その環境づくりの“最低ライン”を示す考え方がスフィア基準です。
■① スフィア基準とは何か
スフィア基準(Sphere Standards)は、人道支援の分野で使われる国際的な最低基準です。
災害や紛争などの緊急時に、人が尊厳を保って生活するために必要な水・衛生・住まいなどの目安が整理されています。
避難所運営においても「最低限ここは守りたい」という目安として参照されます。
■② 「20人に一基」の意味(トイレの基準)
避難所で最初に崩れるのがトイレです。
スフィア基準では、トイレの目安として「20人に一基」という考え方が語られます。
トイレが足りないと、
・我慢して脱水になる
・失禁や便秘が増える
・衛生が崩れて感染症が増える
・精神的ストレスが増える
被災地でも、トイレの不足は避難所の不満と体調悪化の最大要因でした。
■③ 「3.5㎡スペース」の意味(生活空間の基準)
スフィア基準では、一人あたりの居住スペースの目安として「3.5㎡」が語られます。
これは、寝る・荷物を置く・最低限の動作をするための空間です。
スペースが足りないと、
・睡眠の質が落ちる
・感染症リスクが上がる
・衝突やトラブルが増える
・要配慮者が持ちこたえられない
現場でも、過密な避難所ほど疲労と不満が積み上がり、体調不良者が増える傾向がありました。
■④ 「50人に一つ」の意味(手洗い等の目安)
スフィア基準では、手洗い設備などの衛生設備について「50人に一つ」という目安が語られることがあります。
手洗いが不足すると、感染症の拡大が早まります。
特に避難所は、
・同じ空間で生活
・食事が共同
・トイレを共有
という条件が重なるため、衛生設備の不足はリスクが高いです。
■⑤ 日本の避難所でそのまま当てはめていいのか
スフィア基準は国際基準であり、そのまま日本の避難所に完全適用できるとは限りません。
ただし、現場の改善の指標としては非常に有効です。
「足りているか、足りていないか」を数字で語れるようになるからです。
感覚ではなく、基準で改善できるのが強みです。
■⑥ 現場で感じた「基準がある避難所」は強い
被災地派遣で感じたのは、避難所運営に基準や優先順位がある場所ほど安定していることです。
トイレの導線、清掃の担当、手洗いの設置、スペース配分。
これが整理されているだけで、避難所は落ち着きます。
基準は、現場の判断を軽くします。
■⑦ 住民側ができるのは「数字で要望すること」
住民ができるのは、感情ではなく“数字”で要望することです。
・トイレは何人に何基必要か
・スペースは何㎡必要か
・手洗いは何箇所必要か
こうした具体があると、行政や運営側も動きやすくなります。
避難所の改善は、住民の理解があるほど進みます。
■⑧ 今日からできる最小行動
平時にできることはシンプルです。
・自分の地域の避難所のトイレ数を確認する
・手洗い設備の有無を確認する
・体育館の収容想定人数を確認する
・パーティションや簡易トイレの備蓄を確認する
「知っている」だけでも、災害時の初動が変わります。
■まとめ|スフィア基準は「避難所の最低ライン」を示す目安になる
スフィア基準は、避難所で尊厳を守るための最低限の目安を示す国際基準です。
トイレは20人に一基、生活スペースは一人3.5㎡、衛生設備は50人に一つなどの考え方は、避難所改善の指標になります。
数字があると、現場の判断が軽くなり、改善が進みやすくなります。
結論:
スフィア基準は、避難所で「最低限の尊厳」を守るための数字の目安であり、トイレ・スペース・衛生の不足を可視化して改善につなげる強い指標になります。
被災地派遣の現場で実感したのは、避難所環境が整っているほど人が落ち着き、体調不良が減るという事実です。
防災士として、避難所の基準づくりは災害関連死を減らすための重要な備えだと考えています。

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