【防災士が解説】デジタル活用推進事業債とは?災害対応を止めない「通信・指令・業務」の更新資金の考え方

災害対応の強さは、人員や装備だけで決まりません。実は「情報が回るか」「指令が止まらないか」「現場と本部が同じ状況を見られるか」で、救える範囲が変わります。ところが、指令システムや無線、業務システムの更新は高額で、平時の優先順位が下がりやすいのが現実です。そこで自治体がDXを進めるための財源手当てとして整理されるのが、デジタル活用推進事業債のような枠組みです。ここでは、意味・狙い・使いどころを、防災の現場感覚で分かりやすく整理します。


■① デジタル活用推進事業債とは何か

デジタル活用推進事業債は、自治体がデジタル化(自治体DX)を進めるための事業に充てる地方債(自治体の借入)として位置づけられる考え方です。ポイントは「デジタル化は必要だが高額で一気に整備しにくい」分野に対し、計画的に投資できるよう財源の道を付けることです。住民の目には見えませんが、災害時に効く基盤整備ほど、平時に整えておく価値があります。


■② なぜ防災・消防で重要なのか(止まると一気に弱くなる)

防災分野のデジタル基盤は、止まると被害が拡大しやすい領域です。例えば、通信が不安定だと、
・被害情報が集まらない
・応援要請が遅れる
・避難所の状況が把握できない
・救急搬送の調整が滞る
といった形で「判断が止まる時間」が増えます。現場は頑張っていても、情報が回らないだけで全体が鈍ります。だからこそ、指令・通信・業務の更新は、災害対策の核心です。


■③ どんな整備に使われやすいか(指令・無線・業務の更新)

防災・消防で“効く投資”は、目立つ装備より基盤です。代表例として、
・消防指令システムの更新
・消防救急デジタル無線の高度化
・消防業務システム(出動、資機材、活動記録等)の整備
・映像共有やクラウド化などの情報連携基盤
が挙げられます。これらは高額で、しかも「更新しないと突然弱くなる」タイプの設備です。事業債のような枠組みは、計画更新を回すために現実的です。


■④ 事業債で整えるべき視点(単品導入より“連携”)

デジタル整備で失敗しやすいのは、単品導入で終わってしまうことです。災害対応で強くするなら、
・指令(中枢)
・通信(現場とつなぐ)
・業務(記録と共有)
を連携させて「同じ情報を同時に見られる」状態を作ることが重要です。現場は、情報のズレがあるほど危険になります。連携を前提に設計するほど、投資が無駄になりにくいです。


■⑤ 被災地派遣(LO)で見た“情報が回る自治体は強い”という現実

被災地派遣(LO)の現場では、情報が回るだけで対応が一段落ち着く瞬間を何度も見ました。例えば、避難所の人数や要配慮者の状況が更新され、支援物資の流れが見えると、次の判断が迷いにくくなります。逆に、紙と口頭だけで回していると、同じ確認が繰り返され、判断が遅れ、疲労が増えます。デジタル化の価値は「便利」より、「迷いを減らして前に進める」ことにあります。


■⑥ 災害時の“停波基地局”を踏まえた設計(通信は複線が前提)

災害時には、基地局が被災したり停電で停止したりして、通信が不安定になることがあります。だからこそ、デジタル整備は「通信が必ず生きている前提」で作らないことが大切です。
・衛星通信など別系統の確保
・無線の強化
・オフライン時の最低限運用
こうした複線があるほど、システムは止まりにくくなります。事業債で整備するなら、単なる更新ではなく“止まりにくさ”を要求仕様に入れることが重要です。


■⑦ 災害拠点病院・大規模避難所とつなぐ意味(連携先が増えるほど価値が出る)

災害時は、消防だけで完結しません。災害拠点病院、大規模避難所、行政の災害対策本部など、連携先が一気に増えます。ここで重要になるのは、
・搬送調整が止まらない
・避難所の状況が共有される
・支援の優先順位が揃う
という“共通認識”です。連携が回るほど、現場は無駄に動かず、安全と速度が上がります。デジタル活用推進事業債の投資は、こうした連携の土台を作るためにこそ効きます。


■⑧ 導入時に押さえるべき運用(機器よりルールが先)

デジタル整備は、導入した瞬間に強くなるわけではありません。運用を決めておくほど、災害時に効きます。
・誰が入力し、誰が見るか
・更新の頻度と締め時刻
・障害時の代替手順
・訓練で回して改善する
災害対応は「平時に回せたものしか本番で回らない」が基本です。設備更新と同時に、運用設計をセットで整えるのが現実的です。


■まとめ|デジタル活用推進事業債は“災害対応を止めない基盤投資”を計画更新するための道具

デジタル活用推進事業債は、自治体DXのための整備を計画的に進めるための財源の考え方です。防災・消防では、消防指令システム、消防救急デジタル無線、消防業務システムなど、止まると一気に弱くなる基盤更新に特に意味があります。重要なのは単品導入ではなく、指令・通信・業務の連携と、災害時に止まりにくい設計です。導入後も訓練と運用で回し続けることで、投資が本当の力になります。

結論:
デジタル整備の価値は「便利」ではなく「判断が止まる時間を減らすこと」。事業債は、指令・通信・業務を計画更新し、災害対応を止めない土台を作るための現実的な手段です。
防災士として、被災地派遣(LO)の現場でも、情報が回るだけで現場の迷いが減り、支援が前に進む現実を見てきました。基盤投資は、救える範囲を静かに広げます。

出典:https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202503/202503e.html

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