【防災士が解説】トラック無線はなぜ今も残る?携帯時代でも“無線が強い”理由と防災での活かし方

スマートフォンが普及した今でも、無線はイベント会場、警備、現場仕事、そしてトラックの世界で現役です。かつてのCB無線から、携帯回線を使うIP無線へ。形は変わっても「無線で話す」という文化が残っているのは、非常時に強い“通信の性質”を持っているからです。

被災地派遣やLOとして現場に入った経験からも、災害時は「電話がつながらない」「メッセージが届かない」だけでなく、そもそも“連絡を取る相手が多すぎる”状況になります。そんなときに、無線のような「一斉通話」「短く要点だけ」「即時共有」の仕組みは、判断と行動を早めます。防災は、道具そのものより“通信の設計”が大事です。


■① 無線の本質は「一斉に共有できる」こと

スマホ通話は基本的に1対1です。グループ通話もできますが、設定や操作が必要で、混乱時には手間が増えます。

無線が強いのはここです。

  • 1回の発信で複数人に同時に伝わる
  • 状況共有が早い(渋滞、危険、空きルートなど)
  • 連絡の“順番待ち”が起きにくい

災害時も同じで、家族・近所・職場の安全確認が同時に必要になるほど、「一斉共有」の価値が上がります。


■② かつてのCB無線が流行った理由は「孤独の解消」と「情報交換」

トラック無線(CB無線)が広がった背景には、仲間との交流だけでなく、運転中にリアルタイムで情報を得られる価値がありました。渋滞、事故、検問、天候、工事。いまはナビやSNSもありますが、“現場の声”が強い場面は残っています。

防災でも「現場の声」は強いです。公式情報が遅れることもあり、現地の状況が分かると判断が早くなります。ただし、デマも混ざるため「複数一致」「公式で確定」がセットになります。


■③ 無線が衰退しても消えなかったのは「現場の運用に合っている」から

無線は、長い会話ではなく、短い要点共有に向いています。
現場の通信は、丁寧な会話より「状況・場所・指示」が最優先です。

  • いまどこで何が起きているか
  • どこを避けるべきか
  • 次に何をするか

災害対応もまさに同じです。被災地派遣で感じたのは、情報は“文章”より“短文の連続”の方が回るということでした。短く、繰り返し、全員に同時に。無線の設計思想そのものが現場向きです。


■④ 今の主流「IP無線」は“携帯網を使う無線”という発想

近年は、携帯電話の通信網を使って国内どこでもつながるIP無線が普及しています。免許や基地局が不要で、複数人への同時通話ができるのが特徴です。GPSで車両位置を把握できる機種もあり、運行管理にも使われます。

ここが防災でのポイントです。

  • 通信は携帯網に依存する(基地局が落ちると弱い)
  • それでも、平時の運用・訓練には非常に向く
  • “一斉共有”の形を作れる

つまり、IP無線は「平時の連携強化」に強く、災害時は「携帯が生きている範囲で強い」という現実的な位置づけになります。


■⑤ 防災で無線が効く場面:家族・地域・職場の“同報”が必要なとき

無線的な仕組みが効くのは、同時に複数へ伝えたい場面です。

  • 町内会や自主防災組織の連絡(避難所開設、給水情報)
  • 会社のBCP(出社停止、集合場所、安否確認)
  • ボランティア現場(危険箇所、資機材の割り振り)

LOとして自治体側の現場調整に入った時も、重要だったのは「同じ情報を同時に共有すること」でした。連絡が一部にしか届かないと、現場は二重三重に動いて疲弊します。通信は“公平に同時”が強いです。


■⑥ スマホだけに頼る危険:災害時は通信が“混む・遅れる・止まる”

災害時、携帯は3つの理由で弱くなります。

  • 回線混雑(つながりにくい)
  • 停電や基地局障害(エリアが落ちる)
  • 充電の枯渇(スマホが使えない)

だから通信は冗長性が基本です。スマホに加えて、少なくとも「ラジオ」「連絡ルール」「集合場所」を決めておくと、判断が壊れにくくなります。


■⑦ やらなくていい防災:無線機を買う前に“運用”を作る

無線機は便利ですが、道具より先に決めるべきことがあります。

  • 誰が誰に、何を伝えるのか
  • 連絡が取れない時の集合ルール
  • 情報の確定はどこで取るのか(公式の確認先)

運用がないまま道具を増やすと、非常時に迷いが増えます。防災は「道具を増やす」より「迷いを減らす」が効きます。


■⑧ 今日できる最小行動:家庭で“無線的運用”を作る

無線を買わなくても、無線の強みは家庭に取り入れられます。

  • 連絡は短文テンプレで統一(例:「無事」「場所」「次の行動」)
  • 同報先を固定(家族グループ1本に絞る)
  • 返信がない場合の次の行動を決める(集合場所・時間)

これだけで、災害時の通信が“回る”ようになります。


まとめ

トラック無線が携帯時代でも残るのは、無線が「一斉共有」「短く要点」「即時連携」という現場に強い通信設計を持っているからです。防災でも同じで、災害時は1対1の連絡より、同時共有と運用設計が効きます。道具を増やす前に、家族・地域・職場で“無線的な連絡ルール”を作るだけで、迷いが減り、行動が早くなります。


出典

総務省「災害用伝言サービス(171・web171)」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/dennsetsu/

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