災害や事故の現場では、「大丈夫だろう」という楽観が重なると被害が拡大します。一方で、常に悲観的でいると動けなくなります。その中間にあるのが、“最悪を想定しつつ、最善を尽くす”という危機対応の思考法です。ここで紹介する「ドンロー主義」は、危機対応で使われる“悲観的に備え、楽観的に実行する”発想を分かりやすく整理した考え方です。
■① ドンロー主義とは何か
ドンロー主義は、「最悪の事態を想定して準備し、実行段階では冷静に最善を尽くす」という危機管理の姿勢を指す言葉として使われることがあります。
・準備は悲観的に
・行動は冷静に
・結果は検証する
という3つの軸が特徴です。
■② なぜ“最悪想定”が必要なのか
災害や事故では、想定外が起きるのではなく、「想定しなかったことが起きる」ことが多いです。
・避難経路が使えない
・通信が途切れる
・応援が遅れる
・設備が作動しない
最悪を想定しておくと、実際の被害が想定より軽ければ“余裕”になります。想定が甘いと、現場は一気に崩れます。
■③ 元消防職員として感じた“楽観の積み重ね”の危険
現場で事故が起きる時は、「まだ大丈夫」「もう少しだけ」が重なる瞬間でした。撤退基準が曖昧なまま前進する、疲労を軽視する、煙の変化を楽観する。
逆に、最悪を先に想定している隊は、撤退判断が早く、結果的に安全で成果も安定します。悲観的な準備は、臆病ではなく“強い判断”の土台になります。
■④ 防災で使えるドンロー思考の具体例
家庭防災でも応用できます。
・水は「足りる」ではなく「足りなくなったら?」で考える
・停電は「数時間」ではなく「数日」想定で確認する
・避難は「行ける」ではなく「行けない場合」を想定する
想定が重いほど、実際は軽く感じます。
■⑤ 被災地派遣(LO)で学んだ“楽観は心を守るが、準備は悲観で決める”
被災地派遣(LO)の現場では、楽観だけでは持ちませんが、悲観だけでも崩れます。準備は最悪を想定して厚く、行動は目の前の事実に集中して冷静に。このバランスがある現場は、混乱が少なく、回復も早いと感じました。
行政側も、実は“最悪想定”を前提に計画を立てています。ただ公表時には過度な不安を煽らない表現を選びます。このギャップを理解しておくと、情報の読み取りが深まります。
■⑥ よくある誤解(悲観=ネガティブではない)
誤解①「最悪を考えると不安になる」
→考えない方が、いざ起きた時に不安が爆発します。
誤解②「準備しすぎは無駄」
→想定より軽ければ、それは“余裕”です。
誤解③「備えれば安全」
→備えはゼロリスクではなく、“崩れにくくする”ためのものです。
■⑦ 今日から使える3ステップ
1) 最悪を1つだけ書き出す(例:3日停電)
2) その時に困ることを3つ挙げる
3) 1つだけ対策を決める(例:水を1日分追加)
この型を繰り返すだけで、備えは確実に強くなります。
■まとめ|最悪を想定して準備し、実行は冷静に。これが危機対応の基本
ドンロー主義は、最悪を想定して準備し、実行段階では冷静に最善を尽くす危機対応の思考法です。悲観的な準備は臆病ではなく、強い判断の土台になります。家庭防災でも、停電・断水・避難不能などを一つずつ最悪想定で考え、最小対策を積み上げることが現実的です。
結論:
備えは悲観的に、行動は冷静に。最悪を想定すれば、現実は軽くなる。
防災士として、被災地派遣(LO)の現場で“想定していた現場”ほど崩れにくいことを見てきました。最悪想定は不安を増やすためではなく、不安を減らすための技術です。
出典:https://www.fdma.go.jp/

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