学校のDX(クラウド活用)は、便利にするためだけの話ではありません。
結論から言うと、クラウドは「災害・感染症・停電・人手不足」でも業務と連絡を止めないための“継続計画(BCP)”の中核になります。
一方で、費用面と安全性(情報管理)を曖昧にしたまま導入すると、現場が疲弊して失敗します。
いま必要なのは、ツール選びより先に「運用ルール」を固めることです。
■① なぜ学校にクラウドが必要なのか:止まるのは“授業”ではなく“連絡と事務”
大きな災害が起きたとき、学校で最初に止まりやすいのは授業よりも、
- 連絡網(誰に何を、どう伝えるか)
- 安否確認(児童生徒・教職員)
- 各種資料の共有(名簿、計画、マニュアル)
- 事務(出勤できない・紙が見られない)
です。
被災地派遣(LO)でも、混乱の原因は「情報が届かない」「最新が分からない」でした。
だからこそ、クラウドは“平時の効率化”だけでなく、“非常時の代替”として効きます。
■② 現場がつまずく2大課題:費用と安全性(情報管理)
ご提示のとおり、進展を阻む代表的な壁は次の2つです。
費用面
- ライセンス費、端末更新、通信費
- 管理者の負担(設定・アカウント管理)
- サポートや研修のコスト
安全性の確保
- 個人情報(名簿、健康情報、成績等)の扱い
- アカウントの使い回し・パスワード管理
- 持ち出し端末の紛失・盗難
- 誤送信・誤共有(共有リンクの事故)
ここを曖昧にすると、導入しても現場が怖くて使えず、結局“紙に戻る”が起きます。
■③ まず決めるべきは「何をクラウドに載せるか」ではなく「載せないもの」
クラウド活用は、最初に線引きが必要です。
- 原則:必要最小限の情報から
- まずは:文書テンプレ、会議資料、行事計画、連絡文
- 慣れてから:安否確認、保護者連絡、提出物管理
特に、健康情報などセンシティブ情報は、運用が固まるまでは慎重が無難です。
■④ 学校DXの“失敗パターン”と対策(現場目線)
よくある失敗は、ツールが悪いのではなく運用が未設計なことです。
失敗①:使い方が人によってバラバラ
→ フォルダ構成・命名ルール・保存期限を統一
失敗②:管理者だけが詳しくて属人化
→ 副管理者を置き、手順書を1枚にする
失敗③:非常時にログインできない
→ 緊急時の権限・連絡手段・代替手段(紙/電話)を併用
災害対応も同じで、計画があっても“使える状態”にしておかないと意味がありません。
■⑤ 防災(BCP)の視点で優先度が高いクラウド活用
学校にとって防災上、特に価値が高いのはこの3つです。
- 安否確認(教職員・児童生徒)
- 保護者への一斉連絡
- 災害時マニュアル・連絡先の最新版共有
災害時は「情報の最新版」が命を守ります。
紙のファイルが職員室にあるだけでは、出勤できないと詰みます。
■⑥ 最小コストで始めるなら「段階導入」が現実的
費用が壁なら、最初から全部は狙わない方が成功します。
- Phase1:資料共有(会議・行事・文書)
- Phase2:連絡系(教職員の周知、保護者連絡)
- Phase3:個別情報(提出物、面談、データ連携)
この順にすると、現場が慣れやすく、事故も減ります。
■⑦ 「安全性」を担保する最低限のルール(これだけは必須)
クラウドを安全に使うなら、最低ラインはここです。
- 個人アカウント禁止(組織アカウントに統一)
- 二要素認証(可能なら必須)
- 共有リンクの権限設定(“全員公開”を原則禁止)
- 退職・異動時のアカウント整理(放置が一番危険)
- 端末紛失時の対応(遠隔ロック、報告ルート)
情報管理は処分対象になることもあります。
だからこそ、“守りの設計”が先です。
■⑧ 今日できる最小行動:まずは「3項目」だけ決める
すぐに動けるのはこれです。
- 共有フォルダの大項目(例:01_行事、02_会議、03_文書)
- 命名ルール(例:YYYYMMDD_件名)
- 共有権限(原則:校内限定、編集者を限定)
これだけでも、導入の成功率が上がります。
まとめ
結論:学校のクラウド活用は“便利化”ではなく、災害時にも連絡と業務を止めないためのBCPの中核。費用と安全性が課題なら、段階導入と運用ルールの先行設計が最も現実的で、まずは「載せないもの」「権限」「命名・フォルダ構成」を決めることが成功の近道です。
被災地派遣(LO)でも、混乱を減らしたのは“最新情報に迷わず辿り着ける仕組み”でした。学校のDXも同じで、仕組みが人を守ります。
出典
内閣官房 国土強靱化「事業継続(BCP)に関する情報」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/

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