学校安全点検表は、毎月同じ欄に○を付けるための紙ではありません。文部科学省は、令和6年3月作成の「学校における安全点検要領」で、学校の施設・設備等に起因する事故を防止するため、質の高い実効性のある安全点検を行うことを目的に、定期点検・日常点検の標準的な手法や、安全点検表・集計表の考え方を示しています。さらに、令和7年3月には「効果的に安全点検を推進するためのノウハウ集」を公表し、専門家活用、デジタル技術活用、地域や保護者との連携なども含めて、安全点検を実効性あるものにする方向を示しています。文部科学省「学校における安全点検要領」 文科省作成資料・取組・事業:刊行物(学校安全参考資料)
つまり、新年度の学校安全点検表で大切なのは、「去年の点検表をそのまま使うこと」ではなく、今年の学校の変化に合わせて、どこが危ないかを先に洗い出し、点検項目を実情に合わせて更新することです。元消防職員として感じるのは、学校の事故で怖いのは「点検していないこと」だけではなく、「毎年同じ点検をして、変化を見落とすこと」でもあるという点です。私は、新年度の学校安全点検では、まず変化確認、次に場所別点検、最後に不良箇所の集計と改善、この順で整えるのが現実的だと考えます。
■① まず結論として、新年度の学校安全点検表で最優先にすべきことは何か
結論から言うと、最優先にすべきことは、「どこを点検するか」より先に「今年どこが変わったか」を確認することです。
文部科学省の安全点検要領は、学校の施設・設備の安全点検について、学校の実情に応じて点検表を作成し、点検の観点を検討・追加・修正していく考え方を示しています。つまり、点検表は固定の完成品ではなく、学校ごとに見直して使うものです。文部科学省「学校における安全点検要領」
私なら、新年度の最初に、校舎配置、教室替え、備品入替え、児童生徒数、特別支援対応、通学路、工事の有無を見ます。その上で点検表を直す方が、事故の芽を拾いやすいです。
■② 新年度に最初に確認したい“変化”とは何か
最初に確認したい変化は、人・場所・物・動線です。
たとえば、
新入生や転入生が増えた
教職員が大きく異動した
特別教室や倉庫の使い方が変わった
大型備品やICT機器が増えた
校内工事や通学路変更がある
といったことです。
文部科学省の「学校の危機管理マニュアル作成の手引」でも、安全点検は学校環境の特性や児童生徒等の状況に応じて、さまざまな視点で行う必要があると示されています。つまり、安全点検表の見直しは、施設点検だけでなく、学校生活の変化確認から始める方が実践的です。文部科学省「学校の危機管理マニュアル作成の手引」
■③ まず入れておきたい基本チェック項目は何か
新年度の学校安全点検表で、まず外したくない基本チェック項目は、教室、廊下・階段、運動場・校地、遊具、通学路です。
文部科学省が示す安全点検表の一例では、教室等の点検として、床板の異常、机・いすの破損、窓やドアのガラス・鍵の破損、転落防止手すり、カーテンレール、照明器具や時計・スピーカー等の落下危険、戸棚やロッカーの転倒・落下危険、壁や天井の亀裂・雨漏り、階段や踊り場の放置物などが挙げられています。文部科学省「安全点検表の一例」
私は、学校の安全点検では「全体を何となく見る」より、場所ごとに見る方が抜けにくいと考えます。特に教室と階段は、毎日使うぶん、異常が“日常化”して見逃されやすいです。
■④ 教室で特に外してはいけないチェック項目は何か
教室で特に外してはいけないのは、落下・転倒・破損・転落に関わる項目です。
文部科学省の点検表例では、照明器具、スクリーン、時計、スピーカーが落ちそうになっていないか、戸棚やロッカーなどの転倒・移動・落下物の危険がないか、窓の転落防止手すりの異常がないか、窓下に足掛かりになる物がないか、といった観点が示されています。文部科学省「安全点検表の一例」
元消防職員としても、学校では大きな災害より前に、日常の落下・転倒事故をどう防ぐかがかなり重要だと感じます。私は、教室点検では「壊れているか」だけでなく「揺れた時に危ないか」で見ます。
■⑤ 運動場・校地で特に見たい項目は何か
運動場・校地で特に見たいのは、転倒・衝突・倒壊・侵入に関わる項目です。
文部科学省の点検表例では、石やガラス片、凹凸、排水口や側溝のつまり、水飲み場や足洗い場の破損、サッカーゴールの固定と溶接部、バックネットの破損・腐食、掲揚塔等の腐食や転倒のおそれ、樹木の枝、校門・塀・柵の破損やひび、防犯カメラやインターホン、死角の原因となる障害物などが挙げられています。文部科学省「安全点検表の一例」
私は、運動場点検では「授業中に危ないか」だけでなく、「放課後や休日の管理も含めて危ないか」を見た方がいいと考えます。校門や死角、防犯機器は防災と防犯の両方に関わるからです。
■⑥ 遊具点検で新年度に特に意識したいことは何か
遊具点検で特に意識したいのは、ぐらつき・腐食・着地面・引っ掛かりです。
文部科学省の点検表例では、ブランコの支柱やチェーン、すべり台の支柱や滑降面、ジャングルジムの支柱などについて、ぐらつき、腐食、亀裂、基礎露出、着地面の危険物、引っ掛かりやすい隙間などを点検するよう示しています。また、点検は「目視」「触診」「打音」「振動」「負荷」「作動」など複数の方法を組み合わせて行うことが示されています。文部科学省「安全点検表の一例」
私なら、遊具は“遠くから見て異常なし”で済ませません。実際に近づき、触り、揺らし、着地面まで見る方が現実的です。
■⑦ 通学路点検は点検表にどう入れるべきか
通学路点検は、施設点検とは別枠で、時間帯を意識して入れる方が実践的です。
文部科学省の危機管理マニュアル作成の手引では、通学路については登下校の時間帯に児童生徒等の通行の様子を観察することで、改善すべき環境条件や指導上の課題を見いだしていくことが有効だと示されています。また、児童生徒自身による危険箇所の調査も有用とされています。文部科学省「学校の危機管理マニュアル作成の手引」
被災地経験でも、学校の安全は校門の中だけで完結しません。私は、通学路点検は「地図上で確認した」だけで終わらせず、登校時か下校時に一度は現地を見る方が現実的だと考えます。
■⑧ 新年度の点検表で見落としやすい項目は何か
見落としやすいのは、ICT機器、防犯機器、掲示物・仮置き物、そして改善状況の記録です。
文部科学省の点検表例には、防犯用具、インターホン、防犯カメラ、階段や踊り場の放置物などが含まれています。また、集計表では、不良箇所、その程度、改善措置の状況まで記録する様式例が示されています。つまり、点検表は“危険を見つける紙”であると同時に、“改善まで追う紙”でもあります。文部科学省「安全点検表の一例」
私は、学校安全点検で一番もったいないのは「去年も同じ不良箇所が残ること」だと感じます。だから、新年度は点検項目だけでなく、改善履歴も見直します。
■⑨ 迷った時の判断基準
迷ったら、次の順番で考えてください。
「今年の学校の変化を反映しているか」
「教室・廊下階段・運動場校地・遊具・通学路の基本が入っているか」
「点検方法が“見るだけ”で終わっていないか」
「不良箇所を改善まで追える様式になっているか」
この4つが整理できれば、新年度の学校安全点検表としてはかなり現実的です。防災では、「点検をしたこと」より「危険を見つけて減らしたこと」の方が大切です。
■⑩ まとめ
新年度の学校安全点検表で大切なのは、学校の変化を先に確認し、教室・廊下階段・運動場校地・遊具・通学路の基本項目を、実情に合わせて追加修正し、不良箇所を改善まで追える形にすることです。文部科学省の「学校における安全点検要領」は、質の高い実効性のある安全点検のために、定期点検・日常点検の標準的手法や安全点検表・集計表の考え方を示しており、令和7年3月公表のノウハウ集では、専門家・デジタル・地域連携を活かした点検の進め方も紹介しています。
私なら、新年度の学校安全点検で一番大事なのは「去年の点検表を使い回すこと」ではなく「今年の学校で、どこが新しく危ないかを見つけること」だと伝えます。現場では、点検回数より、変化を拾える点検の方が強いです。だからこそ、まずは変化確認、次に場所別点検、最後に改善追跡。この順番で整えるのがおすすめです。
出典:https://anzenkyouiku.mext.go.jp/anzentenken/index.html(文部科学省「学校における安全点検要領」)

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