【防災士が解説】家庭菜園は“食料備蓄”になる?災害に強い家庭菜園の作り方と考え方

「備蓄は大事」と分かっていても、食料や水を買い続けるのは手間もお金もかかります。そこで現実的に効いてくるのが、家庭菜園を“備蓄の一部”として育てる考え方です。家庭菜園は、すぐに大量のカロリーを確保できる万能手段ではありません。ですが、災害時の不安を減らし、生活を立て直す力(耐災害力)を底上げしてくれます。

被災地派遣やLOとして現場に入った時、支援物資が届くまでの間に強かったのは「家にあるもので回せる家庭」でした。水、熱源、衛生、そして“少しでも食べられるもの”。大げさな備蓄ではなくても、日常の延長で備えている家は、気持ちの余裕が違いました。家庭菜園はまさにその延長線上に置けます。


■① 家庭菜園は「非常食」ではなく「生活を回す備蓄」になる

家庭菜園で得られるものは、主に次の3つです。

  • 食の補助:副菜や香味野菜で食事の満足度が上がる
  • 不安の減災:自分で“作れる”感覚が安心につながる
  • 回復力:物流が乱れても、日々の食材を少し補える

災害で一番きついのは、物資そのものより「先が見えない不安」です。家庭菜園は、その不安を小さくする“心理の備蓄”にもなります。


■② 菜園で備えるなら、狙うべきは「継続収穫」と「手間の少なさ」

防災の備えとして向いているのは、次の条件を満たす作物です。

  • 放置気味でも育つ(忙しくても続く)
  • ちょこちょこ収穫できる(必要な分だけ取れる)
  • 料理に使いやすい(普段使いできる)
  • 水が少なめでも耐える(渇水リスクに強い)

備蓄で一番強いのは「続く仕組み」です。家庭菜園も同じです。


■③ おすすめ①:香味・薬味は“最強の備蓄”になりやすい

家庭菜園を備蓄として考えるなら、まずは薬味系が強いです。

  • 青ネギ:再生しやすく、料理の満足度が上がる
  • ニラ:丈夫で繰り返し収穫できる
  • 大葉:日陰でも比較的育ち、用途が広い
  • みょうが:多年草で育てば強い
  • バジル・ミント:香りで食欲を支える(気分転換にも効く)

災害時は、同じ味に飽きて食欲が落ちがちです。香味野菜があるだけで、食べられる量が変わります。


■④ おすすめ②:葉物は“短期回転”で備蓄になる

葉物は長期保存には向きませんが、短期間で回るので「間をつなぐ備蓄」として強いです。

  • ほうれん草:条件が合えば育つ、栄養面で優秀
  • 小松菜:比較的育てやすく、普段使いしやすい

ポイントは“育ちすぎる前に食べる”こと。ローリングストックの考え方と同じです。


■⑤ 失敗しやすい落とし穴:家庭菜園は「水」と「土」が止まると弱い

被災地で生活インフラが止まった時、強いのは「水の使い方が上手い家庭」でした。家庭菜園も同じで、断水や給水制限があると水やりができません。

だから家庭菜園を備蓄にするなら、セットで考えます。

  • 雨水をためる(簡易タンク、バケツ、ポリ容器)
  • マルチ(敷き藁・落ち葉・新聞紙)で蒸発を減らす
  • 朝夕の少量水やりで根を強くする(毎日ドバドバは不要)

“水の備え”と組むことで、菜園が備蓄として機能しやすくなります。


■⑥ 被災地経験から言うと「食べ物」は量より“回復のスイッチ”になる

被災地派遣・LOとして現場に入った時に感じたのは、食べ物は単なる栄養ではなく、心の回復スイッチになるということです。温かい汁物、少しの野菜、香り。これがあるだけで、人の表情が変わります。

家庭菜園の収穫は少量でも、「自分で生活を取り戻している感覚」を生みます。これが耐災害力(生活・心・判断が壊れにくい力)を底上げします。


■⑦ やらなくていい防災:家庭菜園を“主食備蓄”にしようとしない

家庭菜園は万能ではありません。米や乾麺のような主食カロリーは、別で備蓄するのが現実的です。

  • 主食:ローリングストック(米、麺、缶詰、アルファ化米)
  • 副菜:家庭菜園(薬味・葉物・ハーブ)
  • 味と気分:香り野菜(バジル、ミント、しそ)

こうやって役割分担をすると、無理なく続きます。


■⑧ 今日できる最小行動:プランター2つで“備蓄菜園”を始める

今日から始めるなら、これで十分です。

  • プランター①:青ネギ+大葉(用途が広く、毎日使える)
  • プランター②:ニラ(丈夫で繰り返し収穫できる)

これだけで「食の備えが増えた」という実感が出ます。慣れたら、季節に合わせて葉物やハーブを追加すればOKです。


まとめ

家庭菜園は、非常食の代わりではありません。しかし、日常の延長で続けられる“生活の備蓄”として、災害時の不安を減らし、回復力を高めます。ポイントは、継続収穫できる薬味・香味野菜から始め、水の備えとセットで無理なく回すこと。少量でも「食べられる」「作れる」という感覚が、家族の耐災害力を確実に底上げします。


出典

農林水産省「家庭菜園のすすめ(家庭でできる食の備えに関する情報)」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/kateisaien.html

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