【防災士が解説】災害ボランティア後に「被災者に申し訳ない」と感じた時の向き合い方|罪悪感を抱え込みすぎないセルフチェック

災害ボランティアのあと、「自分は帰れてしまった」「もっとできたのではないか」「被災者の方の方が大変なのに、自分がつらいと言ってはいけない」と感じることがあります。こうした罪悪感は珍しいものではありません。内閣府の避難生活支援リーダー・サポーター向け研修テキストでは、支援者自身が「自分だけ休んでいられない」といった責任感や罪悪感を持つこともストレスのサインだと示されています。
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/pdf/231005_kenshu04.pdf

つまり、災害ボランティア後の罪悪感で大切なのは、「そんな気持ちを持ってはいけない」と押し込めることではなく、それが支援後に起こりうる自然な反応だと知ったうえで、抱え込みすぎていないかを自分で確認することです。この記事では、その判断基準を現実的に整理して解説します。

■① まず結論として、罪悪感を感じた時に最優先すべきことは何か

結論から言うと、最優先にすべきことは、「罪悪感があること」と「本当に悪いことをしたこと」を分けて考えることです。

災害ボランティアのあとに苦しくなる時、多くは「もっとできたかもしれない」という思いが残ります。ですが、その感情が強いからといって、支援が無意味だったわけではありません。むしろ、現場を大切に思ったからこそ出やすい反応です。

元消防職員として感じるのは、被災地支援のあとに崩れやすい人は「冷たい人」ではなく、「責任感が強くて、自分に厳しすぎる人」だという点です。私なら、こういう時は
まず感情として認める
次に事実と分ける
最後に一人で抱え込まない
この順で整えます。

■② なぜ「被災者に申し訳ない」と感じやすいのか

理由は、支援者が現場を見たからこそ、自分の日常との落差を強く感じやすいからです。

現地では、暑さ、片付かない生活、不安、疲労、悲しみが重なっています。そこから帰ると、「自分だけが日常へ戻っていいのか」という気持ちが出ることがあります。これは支援を軽く考えている人には出にくい感情で、むしろ真剣に向き合った人ほど起こりやすいです。

被災地経験でも、「帰ってきたあとに苦しくなった」という声は珍しくありませんでした。だから、この感覚は異常ではなく、支援後の反応として知っておく方が現実的です。

■③ 罪悪感が強くなりやすい人の特徴はあるのか

あります。特に、
責任感が強い人
人の役に立ちたい気持ちが強い人
完璧にやりたい人
自分を後回しにしやすい人
は、罪悪感を抱え込みやすい傾向があります。

内閣府の研修テキストでも、「自分だけ休んでいられない」といった責任感や罪悪感はストレスのサインとされています。つまり、頑張れる人ほど、あとで自分を追い詰めやすいです。
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/pdf/231005_kenshu04.pdf

私なら、罪悪感が強い時ほど「自分は真面目すぎないか」を一度見直します。その方が視野が戻りやすいです。

■④ まずやってみたいセルフチェック① その気持ちは“事実”か“感情”か

最初のセルフチェックは、今の苦しさが、事実そのものなのか、感情の反応なのかを見ることです。

たとえば、
「自分は何もしていない」
と思っていても、実際には活動に参加し、役割を果たしていることがあります。
「期待に応えられなかった」
と感じても、現場では限られた条件の中でできる範囲をやっていることが多いです。

私なら、まず
自分がやったことを3つ書く
ことをすすめます。感情が強い時ほど、事実を見直すだけで少し落ち着くことがあります。

■⑤ セルフチェック② その罪悪感で、自分の基本生活が止まっていないか

次に見たいのは、罪悪感のせいで、寝る・食べる・休むが止まっていないかです。

たとえば、
休むのが悪い気がする
楽しいことをしてはいけない気がする
家族と笑うのが申し訳ない
こういう感覚が強くなると、心だけでなく体も崩れやすくなります。

内閣府の研修テキストでも、帰宅後は再適応に時間が必要で、振り返りや健康維持が大切だと示されています。つまり、「休むこと」が後退ではなく、支援後の正常な回復です。
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/pdf/231005_kenshu04.pdf

■⑥ セルフチェック③ “もっとできた”は本当に今の自分の責任か

ここも大事です。個人で背負えない範囲まで、自分の責任にしていないかを見ます。

被災地支援では、物資、人手、時間、制度、体制など、個人ではどうにもできないことが多くあります。にもかかわらず、「全部を何とかできなかった自分が悪い」と感じると、自責感はかなり強くなります。

元消防職員としても、現場では「できなかったこと」より「一人で背負いすぎること」の方が危険だと感じます。私なら、「自分の役割の範囲を超えたことまで責任にしていないか」を必ず見ます。

■⑦ 罪悪感がある時にやっていいことは何か

やっていいことは、むしろたくさんあります。

休む
家族や友人と過ごす
少し笑う
お風呂に入る
おいしい物を食べる
また次にできる支援を考える

こうしたことは、被災者を裏切ることではありません。支援を続けたいなら、自分が崩れないことの方が大切です。私は、罪悪感がある時ほど「楽しんではいけない」ではなく、「戻る力を作る時間」と考えます。

■⑧ こんな時は一人で抱え込まない方がいい

次のような状態が続くなら、仲間、家族、専門家にもつないだ方が安全です。

眠れない
涙が止まらない
何日も気分が落ち込む
「自分が悪い」が頭から離れない
日常生活へ戻れない

内閣府の研修テキストでも、心身の反応が出ている支援者がいた場合は、早めに運営責任者や保健師などに相談し、専門家の力を借りることが示されています。
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/pdf/231005_kenshu04.pdf

■⑨ 迷った時の判断基準

迷ったら、次の順番で考えてください。

「今の苦しさは、事実そのものか、感情の反応か」
「罪悪感のせいで、寝る・食べる・休むが止まっていないか」
「個人で背負えないことまで自分の責任にしていないか」
「一人で抱え込まず、誰かにつなげられているか」

この4つが整理できれば、災害ボランティア後の「被災者に申し訳ない」という罪悪感へのセルフチェックとしてはかなり現実的です。防災では、「自分を責め続けること」より「支援を続けられる自分を守ること」の方が大切です。

■⑩ まとめ

災害ボランティア後に「被災者に申し訳ない」という罪悪感を感じた時に大切なのは、その感情を否定せず、でも事実と分けて見て、寝る・食べる・休むといった基本生活まで止めないことです。内閣府の研修テキストでは、「自分だけ休んでいられない」といった責任感や罪悪感はストレスのサインとされ、帰宅後は再適応のための時間や健康維持、振り返りが大切だと示されています。

私なら、災害ボランティア後に一番大事なのは「罪悪感をなくすこと」ではなく「罪悪感に飲まれて自分を壊さないこと」だと伝えます。被災地でも、助かったのは強く我慢した人より、自分を守りながら次につなげられた人でした。だからこそ、まずは感情を認める、次に事実と分ける、最後に一人で抱え込まない。この順番で整えるのがおすすめです。

出典:https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/pdf/231005_kenshu04.pdf(内閣府「避難生活支援リーダー/サポーター研修テキスト」)

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