巨大地震は「起きた瞬間」だけでなく、起きる前の準備と、起きた後の初動で被害の大きさが変わります。政府が進める防災庁設置と、地方機関としての「防災局」は、その“備えの実行力”を上げるための仕組みです。この記事では、法案概要から見える狙いと、私たちの備えにどうつながるかを整理します。
■① 防災庁と「防災局」設置のポイント(結論から)
法案概要で注目すべき点は大きく3つです。
1つ目は、防災庁が内閣直属の組織として設けられ、防災施策の基本方針や計画、大規模災害への対処を「企画立案・総合調整」する司令塔になること。
2つ目は、地方機関として「防災局」を設置し、巨大地震(南海トラフ、日本海溝・千島海溝)に備える地域連携を強めること。
3つ目は、被害想定やシミュレーション結果を踏まえ、対策計画を見直す仕組みを盛り込むことです。
■② なぜ「地方機関」が重要なのか(現場で痛感する理由)
災害対応は、机上の計画だけでは回りません。現場では、情報・人・資機材・判断が一気に不足します。
私自身、被災地派遣で自治体側の立場に入り、現場の調整(受援、避難所、物資、支援部隊の動線、情報集約)を経験してきましたが、「国の方針」と「現場の現実」の間を埋める仕組みが弱いと、どうしても初動が遅れ、混乱が長引きます。
地方機関があれば、平時から自治体と一緒に訓練や計画の更新ができ、発災時は“顔が見える関係”で指揮・調整が速くなる可能性があります。
■③ 防災局はどこに置かれる?対象はどんな地震?
法案概要では、防災局を
- 南海トラフ地震で被害が想定される地域に1カ所
- 日本海溝・千島海溝地震で被害が想定される地域に1カ所
それぞれ置く見通しとされています。
巨大地震は、被害が広域・長期化しやすく、自治体単独では対応しきれない局面が必ず出ます。だからこそ、広域調整の拠点を“最初から作っておく”という発想が重要です。
■④ いつできる?スケジュールの見立て
報道によれば、本庁は2026年中に設置すると定め、法成立後に政令で設置日を決める形です。政府関係者の案として「11月」が挙げられています。
一方、防災局(地方機関)は「法公布から2年を超えない範囲」で開設時期を定め、関係者の調整としては「2027年度以降」を方向としているとされています。
ここで大事なのは、“制度ができるまで待つ”のではなく、制度が動き出した瞬間に地域が乗れるよう、自治体・地域・家庭の備えを前倒しで整えておくことです。
■⑤ 「計画を見直す仕組み」が入る意味(形骸化を防ぐ)
災害対策計画は、作っただけでは機能しません。
実際の被災状況のシミュレーション結果を踏まえ、対策計画を見直すことが盛り込まれるのは、計画の形骸化を防ぐうえで価値があります。
現場では「想定の外」よりも、「想定はしていたが、実装が追いついていなかった」が原因で被害が拡大する場面をよく見ます。計画を“更新し続ける仕組み”があるかどうかは、実効性の差になります。
(元消防職員・防災士として、訓練と見直しが続いている組織ほど、発災時の初動が安定するのを何度も見てきました。)
■⑥ 私たちの生活にどう関係する?(備えが変わる3つの点)
防災庁と防災局の設置で、住民目線で変化が期待されるのは次の3点です。
- 受援(外部支援を受け入れる体制)の整備が進みやすくなる
- 広域避難や物資輸送など、県境をまたぐ調整が早くなる可能性
- 計画・訓練・情報共有が“平時から”進むことで、発災時の混乱が減る可能性
ただし、制度が整っても、家庭の備えが弱ければ被害は減りません。制度は“土台”、家庭の備えは“最後の砦”です。
■⑦ 今日からできる「最小の備え」(制度と家庭をつなぐ)
制度の話を聞いた直後こそ、行動に落としやすいタイミングです。難しいことは不要です。
- 家族で「集合・連絡・避難先」の3点だけ決める
- 72時間(3日)を目標に、水・簡易トイレ・常備薬を優先して見直す
- 自宅周辺の危険(ブロック塀、家具転倒、浸水想定)を1つだけ潰す
- 自治体のハザードマップと避難所情報を“保存”しておく(紙でもスマホでも可)
現場では、「決めていた」「準備していた」家庭ほど、混乱が少なく回復が早い傾向があります。国の制度が進むほど、地域の訓練や情報提供も増えるはずなので、受け取れる状態にしておくのが得策です。
■⑧ 今後チェックすべき論点(住民が見るべき目線)
制度ができるときほど、次の点を住民側も見ておくと“備えの質”が上がります。
- 防災局の設置場所と、担当する地域の範囲
- 自治体との連携(訓練、計画更新、情報共有)の具体化
- 物資・人員・通信の確保が、机上でなく現場運用に落ちているか
- 被害想定・シミュレーション結果が、住民の行動(避難、備蓄、耐震)に反映される形で出てくるか
制度を“自分の備えの追い風”として使えるかどうかが、分かれ目になります。
まとめ
防災庁と地方機関「防災局」は、巨大地震に備えるための「司令塔」と「地域連携の拠点」を作る動きです。制度が整うほど、地域の訓練や計画の更新が現実に近づきます。だからこそ、家庭側は「連絡・避難先・3日分の要(みず・トイレ・薬)」から備えを前倒しで整えるのが最も効果的です。
被災地派遣の現場では、初動の差がそのまま生活再建の差になりました。制度の変化を待たず、今日の小さな一歩が家族の安心を作ります。
出典:共同通信(沖縄タイムス+プラス掲載「〖独自〗地方機関『防災局』を設置 巨大地震備え強化、防災庁法案概要」2026年2月20日公開)

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