【防災士が解説】DICTとは?避難所の感染症を防ぐ「災害時感染制御支援チーム」8つの役割

大規模災害の避難所では、地震や豪雨そのものの被害に加えて、時間差で「感染症」が広がることがあります。
人が密集し、換気や手洗いが十分にできず、体力も落ちる。さらに、トイレやゴミ、清掃の体制が追いつかないと、発熱や下痢が連鎖し、避難生活が一気にしんどくなります。
この“二次被害”を減らすために動くのが、DICT(災害時感染制御支援チーム)です。


■① DICTとは?

DICT(Disaster Infection Control Team)は、災害発生時に被災地の避難所などにおける感染症対策を支援するチームです。
感染対策の専門知識を持つ医療者等が関係機関と連携し、避難所環境で「広げない仕組み」を整える役割を担います。


■② なぜ必要?|避難所は感染症が起きやすい条件がそろう

避難所では、感染症が広がりやすい要因が重なります。

  • 人の密集と接触が増える
  • 換気が不十分になりやすい
  • 手洗い水や消毒が不足することがある
  • トイレの混雑と清掃不足が起きやすい
  • 睡眠不足とストレスで免疫が落ちる
  • 高齢者や持病のある人が多い

「災害=ケガ」だけではなく、「災害=感染症」も想定して備える必要があります。


■③ DICTがやること|現場で“広げない”ための型を作る

DICTの支援は、感染症が起きてからの対応だけでなく、起きにくくする運用づくりが中心です。

  • 避難所の状況把握(密集、換気、動線、トイレ等)
  • 感染対策の助言(手指衛生、換気、清掃、区画)
  • 体調不良者の対応整理(隔離・導線・相談先)
  • 物資の優先順位づけ(消毒、手袋、マスク等)
  • 住民・運営側への分かりやすい周知(掲示、声かけ)
  • 医療・保健・自治体との連携支援
  • クラスター化を防ぐための運用調整
  • 必要に応じた継続支援(状況が落ち着くまでの改善)

「感染対策をやる」のではなく、「感染対策が回る状態」を作るのがポイントです。


■④ 避難所で特に効くのは「換気・動線・トイレ」

避難所の感染対策で、効果が出やすい基本は次の3つです。

  • 換気:短時間でも定期的に空気を入れ替える
  • 動線:体調不良者の場所と動きを分ける
  • トイレ:清掃頻度と手指衛生をセットで回す

完璧を求めるより、運用を“続けられる形”にすることが重要です。


■⑤(一次情報)被災地で感じるのは「感染対策は後回しになりやすい」という現実

被災地派遣(LO)で避難所の空気を見ていると、発災直後は命を守る行動が優先されます。
水、食料、寝る場所、安否確認、情報収集で手一杯になり、感染対策は「余裕ができたら」と後回しになりがちです。

ただ、数日たつと疲労が溜まり、咳や発熱、胃腸不良が出始めることがあります。
防災士として強く感じたのは、感染対策は“元気が残っているうちに仕込む”ほど効くということです。小さな整えが、後の大きな混乱を減らします。


■⑥ 誤解されがちポイント|「マスクだけ」では止まらない

感染対策というとマスクが注目されますが、避難所ではそれだけでは不十分です。

  • トイレ後の手指衛生が回っているか
  • 清掃の当番と頻度が決まっているか
  • ゴミの置き方が適切か
  • 換気のルールが共有されているか

道具よりも、運用の共有が感染拡大を左右します。


■⑦ 家庭でできる備え|避難所に持ち込める「感染対策セット」

家庭でできる現実的な備えとして、次の小さなセットは効果が高いです。

  • 手指消毒(小型)
  • ウェットティッシュ
  • 使い捨て手袋(必要時用)
  • マスク(体調不良時にも使える)
  • 小さなゴミ袋(衛生の維持に効く)

「避難所で清潔に保つための道具」を少し持つだけで、ストレスが減ります。


■⑧ 今日できる最小行動|家族で「体調不良時の動き」を決めておく

災害時は、体調が悪くても我慢して動いてしまいがちです。
今日できる最小行動として、次を家族で決めておくと、避難所でも動きやすくなります。

  • 発熱・下痢・咳が出たら、誰に伝えるか
  • マスクを必ず着けるタイミング
  • なるべく近づかない距離感の合図
  • 連絡手段がない時の伝え方

「言いにくさ」を減らす準備が、拡大防止につながります。


■まとめ|DICTは避難所の感染症対策を支え、二次被害を減らす

DICTは、災害時に避難所などで感染症対策の支援を行い、関係機関と連携しながら「広げない仕組み」を整える支援チームです。
感染症は、時間差で避難生活を崩します。だからこそ、早めに型を作ることが重要です。

結論:
災害時の感染対策は、医療だけでなく“避難所の運用”で決まります。
防災士として被災地を見てきた実感でも、換気・動線・トイレの小さな改善が、後の混乱を大きく減らします。

出典:厚生労働省「災害時感染制御支援チーム(DICT)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/dict.html

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