大規模災害では、避難所に人が集まり、寒さ・疲労・睡眠不足・衛生環境の悪化が重なります。
この状況で怖いのが「感染症」です。インフルエンザやノロ、COVID-19のような呼吸器・消化器感染症は、ひとたび広がると体力の落ちた人から重症化しやすく、避難所運営そのものを止めます。
そこで、避難所等の感染対策を専門的に支えるチームが「DICT」です。
■① DICTとは?|避難所等の感染症対策を支援する専門チーム
DICT(災害時感染制御支援チーム)は、災害発生時に被災地の避難所等における感染症対策の支援に取り組むチームです。
医療者の専門性を活かして、現場の感染対策を「実行できる形」に整えます。
■② なぜ必要?|避難所は“感染が起きやすい条件”が揃う
避難所で感染が広がりやすい理由は、環境要因が重なるからです。
- 密集しやすい(距離が取れない)
- 換気が不十分になりやすい
- トイレや手洗い環境が追いつかない
- 体調不良者が早期に見つかりにくい
- 物資不足で清掃・消毒が続かない
- ストレスと疲労で免疫が落ちる
感染症対策は「気合」ではなく、仕組みで守る必要があります。
■③ DICTがやること|“正しい対策”を現場で回る形にする
DICTの支援は、単なる助言ではなく、避難所で回る運用を作ることに価値があります。
- 感染対策の優先順位づけ(まず何をやるか)
- 体調不良者の動線・区画の整理(隔離の考え方)
- 換気・密集・寝場所配置の改善
- トイレ・手洗い・清掃の運用設計
- 嘔吐・下痢など発生時の初動対応の整理
- 物資(消毒、手袋、マスク等)の使い方の最適化
現場の「できる/できない」に合わせて、効果が出る形に落とし込みます。
■④ 避難所で効く基本|感染対策は“3点セット”が土台
避難所で最低限押さえるべき土台は、次の3点です。
- 換気:空気を動かす(窓を開けるだけで差が出る)
- 動線:体調不良者と一般避難者を混ぜない
- 手指衛生:手洗い・アルコールを「置くだけ」にしない
特別な設備より、「続く運用」が強いです。
■⑤(一次情報)被災地で見た“感染対策が遅れると現場が一気に苦しくなる”
被災地派遣(LO)で避難所に入ると、最初は誰もが命をつなぐことで精一杯です。
しかし数日経つと、発熱や咳、胃腸症状が出始めたときに「隔離場所がない」「トイレ清掃の当番が回らない」「換気したいが寒い」など、現実的な壁が一気に出ます。
防災士として強く感じたのは、感染症は“後から来る二次災害”になり得るということです。
人が倒れると、避難所運営の人手が減り、配布・受付・見守りが崩れて、さらに混乱します。感染対策は、避難所を回し続けるための防災そのものです。
■⑥ 誤解されがちポイント|消毒だけでは守れない
避難所の感染対策で誤解されがちなのは、「消毒さえすれば大丈夫」という考えです。
実際には、感染は“行動と環境”で広がります。
- 密集したままだと広がる
- 体調不良者が混ざると広がる
- トイレや手洗いが追いつかないと広がる
だからこそ、換気・動線・手指衛生の運用が先です。
■⑦ 家庭でできる備え|避難所に行く前に“感染対策の自衛”を持つ
避難所の感染リスクを下げるために、家庭でできる備えはシンプルです。
- マスク(数日分)
- ウェットティッシュ・アルコール(小分け)
- 体温計
- 常備薬(解熱、胃腸薬など必要分)
- 使い捨て手袋(介助や清掃の場面で役立つ)
「避難所は安全な場所」ではなく、「安全にする努力が必要な場所」です。
■⑧ 今日できる最小行動|“体調不良時の家族ルール”を決める
今日できる最小行動は、家族で次を決めることです。
- 体調が悪い人が出たら、誰に伝えるか
- 避難所へ行く場合、マスク・衛生用品を必ず持つ
- 高齢者や基礎疾患のある家族の優先順位を共有する
ルールがあるだけで、災害時の判断が軽くなります。
■まとめ|DICTは避難所の“感染二次災害”を防ぐための支援
DICTは、災害発生時に避難所等の感染症対策を専門的に支援し、現場で実行できる運用に落とし込むチームです。
感染症は避難生活を崩し、支援を止め、命のリスクを上げます。だからこそ平時から知っておく価値があります。
結論:
避難所の感染対策は「後回しにしない」ほど、命と生活を守れます。
防災士として被災地を見てきた実感ですが、感染が広がると現場は一気に苦しくなります。感染対策は、避難所を回し続けるための“防災の基礎体力”です。
出典:厚生労働省|災害時感染制御支援チーム(DICT)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/dict.html

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