キッチン火災の中でも、特に危険なのが天ぷら油などの「油火災」です。水をかけて炎が爆発的に広がる事故は今も繰り返し起きています。
油火災は、正しい手順を知っていれば被害を小さくできますが、間違った行動を取ると一瞬で取り返しがつかなくなります。
この記事では、油火災で絶対にやってはいけない行動と、家庭で再現できる正しい対応を解説します。
■① 油火災は「温度が上がりすぎた結果」で起きる
油は一定温度を超えると発煙し、さらに上がると自然に発火します。
怖いのは、油は透明で変化が分かりにくく、「まだ大丈夫」と思っている間に危険域へ入ってしまうことです。
火がついた瞬間に勝負が決まるのではなく、その前の数分の放置で勝負が決まっています。
■② 絶対NG①:水をかける(爆発的に燃え広がる)
油火災で最もやってはいけないのが、水をかけることです。
油の温度は水の沸点を大きく超えているため、水が入った瞬間に急激に水蒸気になります。その膨張で油が飛び散り、火の粉が広範囲にばらまかれて一気に延焼します。
「とっさに水」は最悪の選択になり得ます。家庭で必ず共有しておくべきルールです。
■③ 絶対NG②:火がついた鍋を持って移動する
次に危険なのが、燃えている鍋を流し台や屋外へ運ぼうとする行動です。
歩いた瞬間に油が揺れてこぼれ、床や自分の服に燃え移り、火災と火傷が同時に拡大します。
火を外へ出すつもりが、家の中に火の道を作ってしまう。現場ではこのパターンが本当に多いです。
■④ 絶対NG③:濡れた布巾や中途半端なフタで慌てて覆う
「覆えば消える」と思って、濡れ布巾や小さなフタで慌ててかぶせるのも危険です。
サイズが合わないと炎が回り込み、布巾が燃えたり、手元に燃え移ったりします。
覆うなら“完全に空気を遮断できる道具”で、落ち着いて確実に行うことが前提です。
■⑤ 正しい対応①:まず火を止める(加熱を止める)
油火災の本質は「温度の上昇」です。だから最初にやるべきは、火を消すより前に「加熱を止める」ことです。
・ガスなら元栓・つまみを閉める
・IHなら電源を切る
ここが遅れると、覆っても再燃しやすくなります。
火がついた瞬間に、まず加熱を止める。これが最初の正解です。
■⑥ 正しい対応②:フタで酸素を遮断する(可能な場合)
安全にできる状況なら、鍋のフタなどで酸素を遮断して消火します。
ポイントは、
・鍋より大きいフタでしっかり覆う
・手前からそっと被せて炎をあおらない
・消えた後もしばらく開けない(再燃防止)
です。
「消えたか確認したい」で早く開けると、酸素が入って再燃することがあります。
■⑦ 正しい対応③:迷ったら消火器、無理なら即避難と通報
初期消火は、できる範囲でしかやらないことが鉄則です。
火が天井に届きそう、周囲に燃え移っている、煙で視界が悪い、熱で近づけない――この時点で勝負は“避難”です。
・その場から出る
・扉を閉めて煙と炎を遅らせる
・119番通報
これが命を守る手順です。
被災地派遣でも同じですが、「何とかしよう」と粘った結果、逃げ遅れが起きます。避難を早める判断が最も大切です。
■⑧ 現場で見た“誤解されがちポイント”:火より怖いのは「パニックの連鎖」
元消防職員として現場で強く感じたのは、油火災は炎の勢い以上に「パニック」が被害を広げるということです。
水をかける、鍋を運ぶ、近くの紙や布に燃え移る、逃げ道が煙で見えなくなる――一つの誤判断が連鎖して数十秒で状況が変わります。
だから家庭では、手順を一つに絞って覚えるのが効きます。
「加熱を止める → フタで覆う(無理なら消火器) → ダメなら避難・通報」
この型を家族で共有しておくだけで、火災対応の成功率が上がります。
■まとめ|油火災は「水NG」「鍋を運ばない」「加熱を止める」が命を守る
油火災で絶対にやってはいけないのは、水をかけること、燃えている鍋を持って移動すること、不確実な方法で慌てて覆うことです。
正しい対応は、加熱を止め、可能ならフタで酸素を遮断し、迷ったら消火器、無理なら即避難と通報。
大事なのは「消すこと」に固執せず、「被害を止める判断」を早くすることです。
結論:
油火災は「水をかけない」「鍋を動かさない」「まず加熱を止める」の3つを守るだけで、致命的な拡大を避けられる確率が上がります。
元消防職員としての現場感覚では、家庭火災は“正しい型”を知っているかどうかで結果が変わります。火が小さいうちに勝負を決めるために、家族でこの型を一度だけ共有しておいてください。
出典:総務省消防庁「住宅防火 いのちを守る10のポイント」
https://www.fdma.go.jp/

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