【元消防職員が解説】クラッシュ症候群とは?地震で「助かった後」に命が危ない理由と現場での注意点

地震で家屋や家具の下敷きになって救出された人が、救出後に急変することがあります。助かったはずなのに、突然意識が落ちたり、心停止に至ることもある。これがクラッシュ症候群(圧挫症候群)です。災害時は「救出できた=安全」ではありません。救出の瞬間から医療の視点が必要になります。


■① クラッシュ症候群(圧挫症候群)とは何か

クラッシュ症候群とは、長時間にわたって筋肉が強く圧迫され、血流が遮断された状態から解放されたときに、体内で急激な変化が起きてショックや不整脈、腎不全などを引き起こす病態です。圧迫されていた筋肉が壊れ(横紋筋融解)、カリウムなどが血中に流れ込み、心臓に致命的な影響を与えることがあります。


■② なぜ「救出後」に急変するのか

圧迫されている間、壊れた筋肉由来の物質は局所に溜まりやすい状態になります。ところが、圧迫が解除されると血流が一気に戻り、
・高カリウム血症(致死性不整脈)
・ショック
・腎機能障害
が短時間で進むことがあります。これが「助かった直後が危ない」理由です。


■③ どんな状況で起きやすいのか(典型例)

クラッシュ症候群が疑われる状況は次の通りです。
・瓦礫や家具に四肢・体幹が挟まれ、長時間圧迫された
・足が抜けない、身体が固定されて動けない
・圧迫部位が広い、強い
・救出まで時間がかかった
目安として「長時間圧迫」は要注意ですが、時間だけでなく圧迫の強さと範囲も重要です。


■④ 見逃しやすいサイン

災害現場では、外傷の派手さに目が行きますが、クラッシュ症候群は“後から”出ます。
・圧迫されていた部位の強い痛み、腫れ
・しびれ、感覚低下
・尿が出ない、尿が赤褐色(コーラ色)
・脱力、ぐったりする
これらがあれば、医療対応が急ぎになります。


■⑤ 元消防職員として現場で大事だと感じる基本(むやみに引っ張らない)

現場では「早く助けたい」気持ちが強くなります。ただ、圧迫解除は体内変化のスイッチにもなります。
・救急要請を早める
・救出計画を立てる(搬送動線、医療連携)
・救出後の観察を切らさない
むやみに引っ張って急に解除するより、連携して安全に救出することが重要です。


■⑥ 被災地派遣(LO)で見た「救出がゴールではない」現実

被災地派遣(LO)の現場では、「救出できた」という達成感の後に、搬送先の確保や医療資源の調整が続きます。救出はゴールではなく、医療につなぐスタートです。特に広域災害では救急車も病院も逼迫します。だからこそ、救出現場で“危険な状態を見抜いて優先度を上げる”ことが命を左右します。


■⑦ 家族・地域で覚えておくべき行動(一般の人ができること)

一般の人ができるのは、医療行為ではなく「危険を疑ってつなぐ」ことです。
・長時間挟まれた人は、救出後も安心させず観察する
・119番で「長時間挟まれていた」と必ず伝える
・水分摂取は独断で大量にさせない(状況により医療判断が必要)
・寒さを防ぎ、安静にさせる
救急隊に情報が伝わるだけで、対応は変わります。


■⑧ 今日できる備え(潰れない・挟まれない環境づくり)

クラッシュ症候群を防ぐ最善は、そもそも挟まれないことです。
・寝室の家具固定(タンス、棚)
・ベッド周りの落下物対策
・ガラス飛散防止
・夜間に動ける照明(足元灯)
地味ですが、これが救出シーン自体を減らします。


■まとめ|クラッシュ症候群は「救出後」に急変する。情報をつなぐことが命を守る

クラッシュ症候群は、長時間圧迫された筋肉が解除されることで、致死性不整脈やショック、腎不全などを引き起こす危険な状態です。救出できても安心せず、圧迫時間や状況を119番に伝え、救出後も観察し、医療につなげることが重要です。最も効果的な予防は、家具固定などで「挟まれない環境」を作ることです。

結論:
救出できても油断しない。長時間挟まれた人は“救出後が本番”——必ず状況を伝えて医療につなぐ。
元消防職員として、救出がゴールではなく、医療につなぐスタートだと現場で痛感してきました。情報を正しく伝えるだけで、救える可能性は上がります。

出典:https://www.jrc.or.jp/study/guideline/

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