【元消防職員が解説】パニック状態の要救助者をどう救う?現場で安全に近づくための基本原則

災害や火災、交通事故の現場では、要救助者が強い恐怖でパニック状態になることがあります。泣き叫ぶ、暴れる、指示が通らない、逃げようとして危険方向へ動く。こうした状況は、要救助者本人の危険を増やすだけでなく、救助側の負傷リスクも高めます。だからこそ、パニック対応は「根性」ではなく「安全の技術」として整理しておく必要があります。


■① パニック状態とは何か(現場で起きる反応)

パニック状態とは、強い恐怖やストレスで思考が狭くなり、合理的な判断や指示理解が難しくなる状態です。現場では次のような反応が起きます。
・叫ぶ、泣く、過呼吸になる
・立ち上がって動き回る
・救助者を押す、掴む
・危険な方向へ逃げようとする
これらは“性格”ではなく、脳の防衛反応として起きることが多いです。


■② 救助の大原則は「二次災害を起こさない」

パニック対応で最も重要なのは、救助者が巻き込まれないことです。救助者が負傷すると救助が止まり、被害が拡大します。
・現場の安全確認(火、煙、落下、交通)
・退路の確保
・周囲の人の動線整理
まずこれを徹底します。安全が取れない場面では、無理に近づかない判断も救助です。


■③ 接近の基本は「距離・角度・逃げ道」

パニック状態の人に近づくときは、正面から詰めないのが基本です。
・少し斜めから(威圧感を減らす)
・腕が届く距離に急に入らない
・自分の退路を確保しておく
相手が突然掴んでも引き込まれない位置取りが、救助者の安全を守ります。


■④ 声かけは短く、選択肢を一つにする

パニック時は長い説明が届きません。
・短い言葉
・具体的な動作
・一つだけ
これが基本です。
例:
・「大丈夫。ここに座って。」
・「こっち見て。息をゆっくり。」
・「手を離して。今から出ます。」
声かけは、相手の判断を軽くするために使います。


■⑤ 触れる前に“同意”を取る(安心が先)

突然触られると、相手は反射で暴れることがあります。
・「今、手を貸します」
・「肩に触れます」
・「抱えて運びます」
と一言入れるだけで、抵抗が減ります。安心を作ってから行動へ移ると、救助は速くなります。


■⑥ 被災地派遣(LO)で見た「パニックは孤立で強くなる」

被災地派遣(LO)の現場では、強い不安や混乱が“孤立”とセットで増幅する場面を見ました。避難所でも、周囲に頼れる人がいない、情報がない、先が見えない時ほど、感情が爆発しやすい。だから、対応は「落ち着け」ではなく、「今ここで何が安全か」を一つ示すことが効きます。人は理解できない時にパニックになりやすいので、理解できる情報を最小で渡すことが重要です。


■⑦ 周囲の人ができる支援(見物人を作らない)

現場がパニックを増幅させる要因として「人だかり」があります。
・見物人を下げる
・撮影をやめてもらう
・周囲の動線を空ける
これだけで要救助者の恐怖が下がり、救助がやりやすくなります。周囲の協力は、救助の一部です。


■⑧ 今日できる最小の備え(家庭・地域での練習)

災害時に家族がパニックになることもあります。今日できる最小の備えは、
・避難の合図を一言で決める
・集合場所を決める
・声かけの型を共有する(「大丈夫、こっち」)
これだけで、非常時の混乱は減ります。


■まとめ|パニック対応は「安心→短い指示→安全な移動」の順で進める

パニック状態の要救助者への救助は、救助者の安全確保が最優先です。接近は距離と角度を意識し、声かけは短く具体的に一つだけを繰り返します。触れる前の一言と、周囲の環境整理(人だかりを作らない)が、救助を速く安全にします。

結論:
パニック対応は“落ち着かせる”より“安全な一手を一つ示す”こと。安心を作れば、人は動けます。
元消防職員として、現場では「短い声かけ」と「位置取り」が救助の成否を分ける場面を見てきました。安全の技術として備えることが、命を守ります。

出典:https://www.fdma.go.jp/

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