火災の怖さは「炎」より先に「煙」で始まります。視界が奪われ、呼吸が苦しくなり、判断が遅れる。訓練でこの感覚を体験できるかどうかで、避難行動の質は大きく変わります。
ロスコ(ROSCO)のスモークマシンは、舞台・映像の現場で培われた機材を、避難訓練や安全教育に応用できる道具です。ただし、使い方を誤ると転倒やパニックの誘発につながるため、運用ルールまで含めて整えることが大切です。
■① ロスコのスモークマシンでできること
ロスコのスモークマシンは、屋内空間に“煙に近い視界低下”を作り、避難の難しさを体感させるための機材です。
実火災の煙とは性質が違いますが、訓練に必要な「見えない」「迷う」「姿勢を低くする」「声が届きにくい」などの要素を、安全側で再現しやすいのが強みです。
■② 訓練で効果が出る場面
スモークマシンの価値が出やすいのは、次のような訓練です。
・夜間想定(暗さ+視界不良)での避難誘導
・階段・曲がり角・狭い廊下など“詰まりやすい動線”の検証
・「低い姿勢」「壁沿い移動」「声かけ」の基本動作の徹底
・避難誘導係の立ち位置・合図・ライトの照らし方の訓練
被災地派遣の現場でも、建物トラブルや停電時に「暗い」「見えない」状況で人が固まる場面は珍しくありませんでした。訓練で“見えない前提”を身体に入れておくと、現場の混乱が減ります。
■③ 本体価格と消耗品コストの目安
導入でよく止まるのが「結局いくらかかるの?」という点です。まず目安を押さえましょう。
・本体(ROSCO / Rosco 1200):税込 158,000円
・スモーク液(ROSCO / LIGHT 1L):税込 2,980円
・スモーク液(ROSCO / LIGHT 4L):税込 10,800円
訓練は1回で終わりません。継続運用するなら「液の保管」「補充の手順」「在庫管理」までがセットです。導入時点で、最低でも予備の液を確保しておくと現場が止まりません。
■④ スモーク液の選び方と運用の考え方
スモーク液は、訓練の質とトラブル率を左右します。選ぶ視点はシンプルです。
・訓練の目的:視界低下を強めたいのか、薄く広げたいのか
・残留感:床が滑りやすくならない運用にできるか
・保管:直射日光・高温を避け、開封後の管理を徹底できるか
・換気計画:終了後に“戻せる”設計があるか
行政の立場だと本音としては「訓練で怪我が出るのが一番困る」。だからこそ、煙の濃さは“安全側で控えめに始め、段階的に上げる”が鉄則です。
■⑤ 使う前に必ず決める安全ルール
煙を出す前に、現場で必ず決めておくルールがあります。
・転倒防止:床の段差、コード類、マットのめくれを事前に除去
・誘導体制:先導/最後尾/要介助者サポートの役割分担
・照明:非常灯+手持ちライト(ランタン)を複数配置
・中止基準:気分不良・過呼吸・迷子・転倒が出たら即中断
・退出導線:煙が濃くなりすぎた場合の“逃げ道”を先に作る
「体験させたい」気持ちが強いほど、濃くしすぎて事故が起きます。訓練は“成功体験”で終える方が、次の備えにつながります。
■⑥ ありがちな失敗と“誤解されがちポイント”
防災訓練で実際に多い失敗は、機材より運用で起きます。
・煙を濃くしすぎて、歩行が怖くなり動けなくなる
・指示が長く、現場で誰も覚えていない
・誘導者がライトを上に向け、逆に見えなくする
・終了後の換気が弱く、クレームや体調不良につながる
誤解されがちなのは「煙=リアルなほど良い」という発想です。訓練の目的は恐怖を与えることではなく、判断と動作を身につけること。薄めでも“動作が揃う”ほうが、現場では強いです。
■⑦ 訓練設計のコツは「短いルール×反復」
スモーク訓練は、ルールを短くすると成功します。
・合言葉を1つ:「姿勢を低く、壁沿い、声を出す」
・動作を固定:「止まる→呼吸→確認→移動」
・手順を減らす:訓練メニューは2本まで(欲張らない)
・反復する:同じ動線で2回やる(2回目で差が出る)
自律型避難の発想で言えば、「誰かが全部助けてくれる」前提を崩しておくことが大事です。煙で見えない時ほど、最終的に頼れるのは自分の判断と基本動作です。
■⑧ 導入するなら一緒に備えるべきもの
スモークマシン単体では訓練になりません。最低限、これをセットにしてください。
・強力なライト(手持ち+据え置き)
・誘導用の反射テープ(床・壁に貼る)
・換気の手順(窓・扉・送風機などの段取り表)
・安全管理キット(連絡手段、救護、体調不良対応)
・訓練記録(濃さ、時間、導線の詰まり、改善点)
現場は「やってみて分かる」が多いです。1回で完成させず、少しずつ改善していく方が、結果的に安全で強い訓練になります。
■まとめ|ロスコのスモーク訓練は“運用設計”で価値が決まる
ロスコのスモークマシンは、避難の難しさを安全側で体感させ、基本動作を揃えるための強い道具です。
本体価格だけでなく、スモーク液のコストと在庫管理、そして転倒・体調不良を出さない運用ルールまで含めて設計することで、訓練の質が一段上がります。
結論:
スモークマシンは「煙を出す機械」ではなく、「避難行動を揃える訓練装置」です。
元消防職員としての現場感覚ですが、煙が絡む場面ほど人は焦って動作が乱れます。だからこそ訓練では、恐怖を足すより“短いルールで迷いを減らす”設計が、いちばん現場に効きます。
出典:サウンドハウス「ROSCO / Rosco 1200」商品情報(本体価格・仕様・推奨スモーク液の記載)

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