【元消防職員が解説】九州ブロック緊急消防援助隊合同訓練から見える実災害対応力|防災×広域応援

令和7年度緊急消防援助隊九州ブロック合同訓練は、大分県の地域特性を踏まえた複合災害を想定し、実災害を強く意識した内容で実施された。地震・豪雨・火災・土砂災害が同時多発する状況下で、応受援体制や部隊運用、関係機関連携の実効性を検証する重要な訓練である。


■① 訓練の目的と全体像

本訓練は「開催地で発生が予測される災害対応」をコンセプトに、緊急消防援助隊の要請・出動手順の検証、活動技術の向上、自衛隊・海上保安庁・国交省・警察・DMAT等との連携強化、応受援体制の向上を目的として実施された。
九州ブロック全体の災害対応力を底上げするための、実戦型訓練である。


■② 実施日・場所と災害想定

訓練は令和7年11月8日・9日の2日間、大分市および津久見市を中心に実施された。
局地的な猛烈な豪雨の継続に加え、内陸型地震(震度6弱)が発生し、特別防災区域での火災、複数市町村での甚大被害、翌日の大規模土砂災害と孤立集落の発生を想定している。


■③ 消防応援活動調整本部運用の検証

地震発生後、大分県庁に消防応援活動調整本部を設置し、各市消防本部に指揮本部・指揮支援本部、航空指揮本部を配置した。
被害状況と自県消防力を分析し、緊急消防援助隊の受入・運用、情報伝達、受援調整を図上訓練で検証した。
一方で、WEB会議システムの有効活用については、さらなる改善の余地があることが課題として整理された。


■④ 部隊進出と関係機関連携の実践

道路寸断を想定し、海上自衛隊の船舶に救急車を積載して海路による部隊進出を実施した点は、九州ならではの地理特性を踏まえた実践的訓練である。
画像伝送や映像共有システムを活用した情報共有により、活動エリアの明確化が可能となり、海上保安部との連携救助訓練も行われた。
今後は、統合機動部隊を受け入れる体制強化と、受援対応職員の確保が重要な課題となる。


■⑤ 複合災害を想定した部隊運用訓練

指揮支援部隊長の統制の下、複合災害を想定した実践訓練を実施した。
1日目は水没車両救出や石油コンビナート火災、2日目は橋梁崩落・大規模林野火災・土砂災害を想定した総合訓練を展開。
航空部門、ドローン、動態情報システムを活用した情報共有、安全管理部隊による危険区域評価、救急特別編成部隊による搬送体制構築など、多層的な運用が検証された。


■⑥ 後方支援活動と厳冬期対応の課題

宿営地では、厳冬期を想定したレイアウトや給油訓練、仮設トイレ設置などを実施し、民間企業との連携も図られた。
全国初となるTeamsのブレイクアウトルームを活用した活動ミーティングは、新たな運用モデルとして注目される。
一方で、九州地域では厳冬期対応の経験が乏しく、宿営資機材や個人装備面での課題が明確となった。


■⑦ 訓練から見えた今後の方向性

本訓練は、船舶を含む部隊進出、関係機関との連携、情報共有体制の検証など、実災害を想定した非常に実践的な内容であった。
得られた成果と課題を踏まえ、九州ブロックにおける緊急消防援助隊の応受援体制は、今後さらに強化されていくことが求められる。
実災害で「機能する訓練」を積み重ねることが、地域防災力の底力につながる。

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