【元消防職員が解説】地下閉鎖空間における救助技術の高度化とは?酸欠・有毒ガス・転落から命を守る現場力

マンホール、下水道、地下ピット、タンク、地下機械室などの地下閉鎖空間では、事故が起きると一気に危険が増します。視界が悪く、逃げ道が少なく、酸素欠乏や硫化水素などの有毒ガス、落下・転落、濁水の流入が重なりやすいからです。さらに怖いのは、助けに入った人が二次災害で倒れることです。だからこそ、地下閉鎖空間の救助は「気合」ではなく、技術と手順で安全を作る分野です。ここでは、救助技術の高度化が何を意味するのかを、現場目線で整理します。


■① 地下閉鎖空間とは何か(救助が難しい理由)

地下閉鎖空間とは、換気が不十分になりやすく、出入口が限られ、内部状況が外から分かりにくい空間を指します。代表例はマンホール、下水道、地下タンク、地下ピット、地下機械室などです。救助が難しい理由は、
・空気が悪い(酸欠・有毒ガス)
・足場が悪い(転落・滑落)
・通信が途切れやすい
・内部が暗く狭い
といった危険が同時に起きるためです。


■② 最大のリスクは二次災害(助けに入った人が倒れる)

地下閉鎖空間事故で最も多い致命的パターンは、「倒れている人を助けに入った人が続けて倒れる」連鎖です。酸欠や硫化水素の現場では、短時間で意識を失うことがあります。ここでは「すぐ入る」が最悪手になることがあります。高度化とは、まずこの連鎖を止める技術と判断を整備することです。


■③ 高度化の核心① 空気の安全確認(測定と換気)

地下閉鎖空間救助で最初に必要なのは、空気の安全確認です。
・酸素濃度
・可燃性ガス
・硫化水素など有毒ガス
を測定し、換気で改善し、必要なら呼吸保護具を使います。空気が安全でない現場は、救助ではなく“化学災害の現場”です。測定と換気の手順が標準化されるほど、二次災害が減ります。


■④ 高度化の核心② 侵入しない救助(引き上げ・遠隔・ロープ)

高度化のもう一つの柱は、「可能な限り侵入しない救助」です。
・ロープでの引き上げ
・三脚・ウィンチでの引き上げ
・遠隔での確認
・開口部からの救助器材投入
侵入する前に、外からできる救助を最大化します。地下閉鎖空間では、侵入は最後の手段です。


■⑤ 高度化の核心③ ロープレスキューと隊員安全管理

侵入が必要な場合でも、ロープレスキュー技術で安全を作ります。
・確実な確保(墜落・転落防止)
・複数人での監視とバックアップ
・撤退ルートの確保
・隊員の空気残量管理
救助者の安全が担保されない救助は成立しません。高度化とは、隊員の安全管理を技術として組み込むことです。


■⑥ 被災地派遣(LO)で見た「見えない危険ほど判断が乱れる」現実

被災地派遣(LO)の現場では、瓦礫や濁水、破損した地下設備など、内部状況が見えない場面が多くありました。見えない危険ほど、人は焦って近づき、危険を踏み抜きます。だからこそ、危険を見える化し、手順で判断を揃えることが重要です。地下閉鎖空間の救助技術高度化は、「焦りに負けない仕組み」を作ることでもあります。


■⑦ 住民側が知っておくべきこと(マンホール・地下ピットは近づかない)

住民が関わる場面では、豪雨後や地震後に、
・マンホール周辺の陥没
・側溝や地下ピットの破損
・地下室への浸水
が起こり得ます。危険なのは「中をのぞく」「助けに入る」行動です。地下閉鎖空間の危険は、見た目では分かりません。通報し、近づかず、周囲を立入禁止にすることが最優先です。


■⑧ 今日からできる備え(現場に入らない判断を家族で決める)

家庭防災でも、地下閉鎖空間と同じ発想が使えます。
・危険は“見えない”前提で行動する
・助けに入らず、まず通報する
・二次災害を防ぐための距離を取る
特に豪雨時は、側溝や地下通路、アンダーパスに近づかないことを家族で決めておくと、判断が軽くなります。


■まとめ|地下閉鎖空間救助の高度化は「侵入しない」「空気を測る」「ロープで安全を作る」

地下閉鎖空間の救助は、酸欠・有毒ガス・転落などの危険が同時に起き、二次災害の連鎖が最大のリスクです。救助技術の高度化とは、測定と換気で空気の安全を確認し、可能な限り侵入しない救助を優先し、必要な場合はロープレスキューで隊員安全を確保することです。手順で判断を揃えるほど、焦りによる事故が減り、救助の成功率が上がります。

結論:
地下閉鎖空間の救助は「すぐ入る」が正解ではない。空気の安全確認と侵入しない救助を基本に、ロープで安全を作って初めて救助が成立します。
元消防職員として、現場では「助けたい気持ち」が強いほど危険判断が遅れる瞬間を何度も見ました。手順で判断を揃えることが、助ける側の命も守り、結果的に救える命を増やします。

出典:https://www.fdma.go.jp/

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