【元消防職員が解説】復興計画づくりをコンサルに任せて大丈夫?能登で見えた“地元の声”を生かす判断基準

大規模災害のあと、被災自治体には「一日も早く復旧・復興を進めてほしい」という期待が集まります。
ただ、結論からいうと、復興計画は“急げばいい”だけではなく、地元の声をどう集め、どう形にするかが極めて重要です。

能登半島地震で大きな被害を受けた石川県の6市町では、復興計画の策定にあたってすべての自治体がコンサルティング会社を利用していたと報じられています。理由としては、全6市町が「職員不足」を挙げ、複数の自治体が「知見不足」も挙げています。 oai_citation:0‡毎日新聞
また輪島市では、2025年2月に「輪島市復興まちづくり計画」を策定し、その後もフォローアップ委員会を開きながら進捗確認を進めています。 oai_citation:1‡和倉市役所

元消防職員として被災地対応を見てきた感覚でも、復興で本当に難しいのは、がれき撤去やインフラ復旧の先にある、「その地域でこれからどう暮らしていくか」を決める段階です。
だからこそ、復興計画は“作ること”より、“住民の納得と実行につながること”が大切です。

■① 復興計画は「書類」ではなく地域の将来設計

復興計画というと、行政がつくる分厚い計画書のように見えるかもしれません。
しかし実際は、

  • どこに住まいを再建するか
  • 集落を残すのか移るのか
  • 港や商店街をどう再生するか
  • 誰がどの事業を担うのか
  • 生活再建をどの順番で進めるのか

といった、地域の将来そのものを決める設計図です。

つまり、
復興計画は「事務作業」ではなく、「地域の暮らしを再編集する作業」
だと考えた方が実態に近いです。

■② なぜコンサルの力が必要になるのか

今回の能登の事例で、被災6市町すべてがコンサルを使っていたという事実は、かなり重いです。 oai_citation:2‡毎日新聞

その背景には、単純に「行政が楽をしたい」という話ではなく、

  • 被災直後で通常業務も回らない
  • 職員自身も被災している
  • 復興計画づくりの経験が少ない
  • 都市計画、住宅再建、産業復興など専門性が広い

といった事情があります。

大規模災害では、自治体職員も当事者です。
その中で、復旧対応をしながら中長期の復興計画まで描くのは、現実にはかなり厳しいです。
だから、外部の専門家やコンサルを入れること自体は、弱さではなく、実務を進めるための現実的な選択とも言えます。

■③ ただし「任せる」と「丸投げ」は違う

ここで一番大事なのは、コンサル活用そのものを良し悪しで見ることではありません。
本当に見るべきなのは、

行政が主導権を持ったまま外部知見を使えているか

です。

コンサルが必要なのは、

  • 情報整理
  • 会議運営
  • 計画の構造化
  • 図面化や文書化
  • 複数案の比較検討

などで力を発揮しやすいからです。

しかし、住民の声を誰が聞き、優先順位を誰が決め、最終責任を誰が負うのかまで曖昧になると、計画は「立派だけれど腹落ちしないもの」になりやすいです。

■④ 復興で一番難しいのは「地元の声を集めること」

復興では、被災者の声を聞けば聞くほど、答えが一つでないことが見えてきます。

  • 元の場所に住み続けたい人
  • 安全な場所へ移りたい人
  • 商売を再開したい人
  • 高齢で移転や再建が難しい人
  • 若い世代の流出を止めたい人

こうした声は、同じ被災地の中でもかなり違います。

元消防職員として現場を見てきた感覚でも、災害対応の後半ほど「正解のない調整」が増えます。
だからこそ、復興計画は技術だけでは進みません。
対話を重ねて、地域の納得できる着地点を探す力が必要です。

■⑤ 輪島市の事例が示すもの

輪島市では、2025年2月に復興まちづくり計画を策定し、その後もフォローアップ委員会で進捗確認を続けています。 oai_citation:3‡和倉市役所

この流れから見えてくるのは、復興計画は「作って終わり」ではないということです。

計画策定後も、

  • 実際に進んでいるか
  • 役割分担は明確か
  • 個別事業の担い手はいるか
  • 地域の状況変化に対応できているか

を見直し続ける必要があります。

つまり復興は、
計画書の完成がゴールではなく、運用しながら育てるプロセス
です。

■⑥ 防災の視点で見ると「平時からの準備」が差になる

今回の話は、能登だけの特殊事情ではありません。
どの自治体でも、大規模災害が起きれば同じ課題に直面する可能性があります。

防災の視点で考えると、平時から大切なのは、

  • 復興の基礎資料を持っているか
  • まちの将来像について対話があるか
  • 外部専門家とつながりがあるか
  • 職員が復興計画の基本を理解しているか
  • 住民参加の仕組みがあるか

といったことです。

災害後にゼロから考えるより、平時から少しでも土台がある地域の方が、復興は前に進みやすいです。

■⑦ 現場感覚として本当に大事だと思うこと

被災地派遣で強く感じるのは、
復旧はスピードが大事だが、復興は納得が大事
ということです。

早く進めることはもちろん必要です。
でも、住民の気持ちや生活再建の現実を置き去りにすると、後から必ずひずみが出ます。

  • 誰のための計画なのか
  • その計画で本当に住み続けられるのか
  • 高齢者も若い世代も置いていかれていないか

こうした問いを持ち続けることが、復興を空回りさせないために大切です。

■⑧ 私たちが学ぶべきこと

この話から学べるのは、「コンサルを使うのは是か非か」という単純な話ではありません。

本当に大事なのは、

  • 外部知見をどう使うか
  • 地元の声をどう反映するか
  • 行政がどこまで責任を持つか
  • 計画をどう実行につなげるか

です。

防災は、発災直後の初動だけではありません。
復興まで見据えて考えることも、防災の一部です。
そして復興は、住民の声が弱いほど、見た目だけ整ったものになりやすいです。

■まとめ

能登半島地震の被災自治体で、復興計画づくりにコンサル活用が広がっていたことは、職員不足や専門性不足の中で復興を進める現実を示しています。 oai_citation:4‡毎日新聞

本当に大事なのは、
「コンサルを使ったかどうか」ではなく、「地元の声を生かした復興になっているかどうか」
です。

復興は、急げばいいだけでも、立派な資料を作ればいいだけでもありません。
被災した人たちが、これからどう暮らすかを形にしていく営みです。
だからこそ、外部の力を借りるにしても、最後に必要なのは、地域の声を丁寧に拾い続ける姿勢だと思います。

出典:毎日新聞「能登半島地震被災6市町 復興計画策定100%でコンサル利用」

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