屋外貯蔵タンクの渦電流探傷試験において、結果の信頼性を左右するのが「探傷器等の感度補正」と「タンク試験面の確認」です。本記事では、ガイドラインに示された方法例を防災の視点で整理します。
■① 本資料の位置づけと目的
本内容は、渦電流探傷試験を適切に実施するために、
・探傷器等の感度補正に関する確認事項
・タンク試験面が検査可能な状態であるかの確認方法
を具体例として示したものです。
形式的な試験ではなく、「基準傷を確実に検出できる状態」を現場で担保することが主眼です。
■② 対比試験片を用いた感度補正の考え方
● 溶接継手形状による感度補正
対比試験片を用い、実際の溶接継手形状に合わせて、
・基準傷が確実に検出できるか
・その際の感度補正値はいくつか
を事前に確認します。
溶接余盛や止端形状の違いは、検出感度に大きく影響します。
● コーティングによるリフトオフ補正
タンク試験面にコーティングがある場合は、
・調査したコーティング厚さを対比試験片で模擬
・基準傷が検出できる感度補正値を確認
する必要があります。
特に注意すべき箇所は以下です。
・溶接止端部
・凹凸部
・刷毛塗り部
厚さが変化しやすい箇所では、その都度感度補正を行うことが求められます。
■③ プローブ位置と感度特性の確認
● 角度感度特性
プローブの走査方向と基準傷の長さ方向が一致しない場合でも、
・基準傷が検出できる感度か
を確認します。
実タンクでは理想的な走査ができない場面が多く、現実的な条件での検証が重要です。
● オフセット感度特性
基準傷とプローブの間に距離(オフセット)が生じた場合でも、
・基準傷を検出できる感度補正値か
を確認します。
溶接止端部や段差部では、この影響が顕著に現れます。
■④ 探傷感度設定とSN比の確保
上記の補正値を踏まえ、最終的に探傷感度を設定します。
重要なのは、
・対比試験片の基準傷を
・十分なSN比(信号とノイズの比)で
・識別できること
です。
試験途中で感度を変更した場合は、
・都度SN比を再確認
・感度設定を記録
することが必須とされています。
■⑤ タンク試験面の確認(目視による方法)
● コーティングなしの場合
タンク試験面の溶接継手形状について、
・基準傷を検出できる条件内か
・荒れている箇所と平均的な箇所を複数確認
します。
型取りゲージ等で形状を記録し、対比試験片と比較することで、感度設定の妥当性を確認します。
● コーティングありの場合
上記に加えて、
・コーティング厚さの調査結果
を用い、基準傷が検出可能な条件であることを確認します。
■⑥ 探傷データを用いた確認方法
目視確認に加え、探傷データから総合的に判断します。
● SN比による確認
・対比試験片の基準傷信号
・タンク試験面から得られるノイズ信号
を比較し、基準傷とノイズを識別できるSN比であることを確認します。
● 位相角による判別
基準傷信号とノイズ信号の位相角を比較し、
・両者を判別できるか
を確認します。
これは、ノイズが多い試験面で特に有効な判断材料となります。
■⑦ 防災の視点で重要な意味
探傷試験は「実施したかどうか」ではなく、
・異常を確実に見つけられる状態だったか
が問われます。
感度補正と試験面確認は、危険物施設における事故予防の最後の砦です。
防災とは、災害対応以前に「壊れない」「漏れない」「燃えない」状態を保つこと。
本内容は、その根幹を支える極めて重要な実務指針です。

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