地下に埋設された鋼製配管の腐食は、平時には見えず、事故として顕在化した時には被害が大きくなりがちです。
令和7年(2025年)に制定された
「新設危険物施設の鋼製地下配管に適用する電気防食規格及びガイドライン(JSCE S 2501:2025)」
は、その“見えないリスク”を国際基準に沿って確実に抑え込むためのルールです。
■① 制定の背景は「ISOとの整合性」
従来、日本の危険物施設における電気防食は、オン電位を用いた評価が中心でした。
しかしこの方法では、土壌抵抗によるIRドロップを含んだ数値となり、実際の防食状態を正確に反映しないケースがありました。
2015年に制定されたISO 15589-1では、
・インスタントオフ電位による評価
が国際標準として位置付けられています。
今回の規格制定は、
「日本独自基準 → 国際標準と整合した信頼性の高い評価」
へ移行するための必然的な流れと言えます。
■② 防食効果判定の基本は“数値の信頼性”
新規格では、防食効果の判定に
「防食対象物対地電位のインスタントオフ電位」
を用いることが明確化されました。
一般的な判定の目安としては、
・インスタントオフ電位が −850mV(Cu/CuSO₄基準)以下
が、防食が有効に機能している状態とされます。
この基準は、国際的にも広く用いられており、
検査・設計・維持管理の共通言語になります。
■③ 測定方法を誤ると“評価不能”になる
インスタントオフ電位を測定するためには、
・全陽極
・全防食対象配管
を同時に遮断できる構成が必須です。
ジョイントボックスに配線を集約し、
一括遮断・一括接続ができない構造では、
正しい測定自体が不可能になります。
現場経験上、
「施工後に測れないことが判明する」
というケースは決して珍しくありません。
■④ 是正が必要になった典型事例
新設施設でも、次のような是正事例が多く見られます。
・配管と近接金属構造物が電気的に絶縁されていない
・絶縁部が結露や雨水で導通状態になっていた
・絶縁確認試験を実施していなかった
これらはすべて、
・防食電流の分散
・陽極の早期消耗
・防食性能不足
につながり、結果的に再施工や指導対象になります。
■⑤ 新規格で強調された「絶縁管理」
新規格では、
・外気にさらされる絶縁部
・ボックス内で結露しやすい絶縁部
それぞれに適した構造例と確認試験方法が示されています。
特に重要なのは、
・埋戻し前
・埋戻し後
の両段階で絶縁性を確認することです。
これは「施工したつもり」を排除するための実務的な仕組みです。
■⑥ 防災の視点で見る“資材選定”の重要性
電気防食は、
・設計
・施工
・測定
・維持管理
のどれか一つが欠けても成立しません。
実務では、
・耐久性の高い絶縁継手
・測定端子付きジョイントボックス
・信頼性のある照合電極
といった資材選定が、長期的な防災力を左右します。
結果的に、初期投資を惜しまない方が、
是正や事故リスクを減らせるケースが多いと感じています。
■⑦ 防災は「設計段階」から始まっている
事故が起きてからの対応は、すでに“後手”です。
地下配管の電気防食は目立たない分野ですが、
最初の設計と施工で、その施設の将来がほぼ決まります。
国際基準と整合した今回の規格は、
危険物施設の防災力を底上げするための重要な一歩です。
見えないところを、確実に。
それが、本当の防災です。

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