【元消防職員が解説】林野火災が増える時季に必ず知っておきたい対応の要点|防災×林野火災

近年、日本各地で大規模な林野火災が相次いで発生しています。令和7年には、大船渡市、岡山市、今治市などで深刻な被害が生じ、林野火災が「特殊な災害」ではなく、どの地域でも起こり得る現実的なリスクであることが改めて浮き彫りになりました。


■① 林野火災を取り巻く環境の変化

消防庁では、これらの火災を踏まえ、林野庁と連携して検討会を開催し、林野火災注意報・警報の創設や、火災予防条例の改正、防災基本計画(林野火災対策編)の見直しが行われました。制度面の整備が進む一方、実際の対応力が問われる時代に入っています。


■② 発生件数は減っても油断できない理由

林野火災の発生件数は、昭和49年の8,351件をピークに長期的には減少傾向にあり、令和6年には831件と初めて1,000件を下回りました。しかし、これは降水量の多さなど気象条件に左右された側面が大きく、少雨・乾燥・強風が重なる年には一転して大規模火災が多発します。


■③ 発生しやすい時季と人的要因

林野火災は年間を通じて発生しますが、特に2月から5月に集中し、この期間だけで年間の約6割を占めます。原因の多くは人的要因であり、たき火、火入れ、放火(疑い含む)、たばこなどが主な要因です。自然発生である落雷は例外的な存在に過ぎません。


■④ 予防の要は「気象」と「人の行動」

乾燥と強風という気象条件が重なる時期には、林野火災注意報・警報の的確な発令と周知が不可欠です。また、たき火の届出制度や火入れ許可制度を通じて行為を把握し、防火指導を徹底することが重要になります。山菜採りやハイキングなど、入山者が増える時期であることも見逃せません。


■⑤ 広報・啓発は「対象別・タイミング」が鍵

林野火災の予防には、新聞・広報誌だけでなく、SNSなども活用した効果的な情報発信が求められます。特に危険性が高まった局面では、臨時的な広報、警戒パトロール、注意報・警報の発令を組み合わせた対応が有効です。


■⑥ 林野火災特有の消火困難性

林野火災は、火点への進入困難、水利不足、延焼範囲の把握困難など、建物火災とは異なる特有の難しさがあります。一度拡大すると、鎮圧・鎮火までに長時間を要することも珍しくありません。


■⑦ 地上と空中の連携が生死を分ける

消火活動では、「地上・空中消火の連携」「早期の応援要請」「明確な指揮体制」が極めて重要です。地上隊が延焼阻止に当たる一方、ヘリコプターは消火困難地点への対応や上空からの状況把握を担います。時間帯や役割を分けた連携運用が求められます。


■⑧ 応援要請は“早すぎる”くらいでちょうどいい

林野火災は、延焼範囲が広がりやすく、長期戦になりがちです。早期消火と要員交代を見据え、相互応援協定に基づく地上隊の派遣要請や、消防防災ヘリコプター、自衛隊への災害派遣要請を常に視野に入れる必要があります。判断に迷う場合でも、情報共有のための事前通報は極めて重要です。


■⑨ 避難対応と受援体制の重要性

林野火災では、避難指示の発令や災害対策本部の設置に至るケースもあります。地域防災計画における役割分担の明確化、受援計画、指揮系統の整理、関係機関との情報共有が被害軽減につながります。


■⑩ 大規模林野火災は「過去の災害」ではない

大船渡市での林野火災は、約60年ぶりの大規模焼損となり、飛び火による住家被害も発生しました。これは、日本のどの地域でも起こり得る現実です。一方で、季節性や人的要因といった傾向が明確な災害でもあります。


林野火災は、「起こさないための備え」と「起きた時の迅速な判断」が被害の大きさを左右します。地域全体でこの特徴を理解し、平時からの準備と連携を積み重ねていくことが、これからの防災に求められています。

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