【元消防職員が解説】流水下での救助技術とは?豪雨・河川氾濫で命を守る“近づき方”の原則

豪雨や台風、線状降水帯による増水では、「少しの水」に見えても強い流れが潜みます。膝下でも足をすくわれ、車は数十センチで浮きます。流水下での救助は、陸上とはまったく別の危険管理が必要です。焦って近づくほど、二次災害が起きやすい分野だからこそ、技術の高度化は“近づき方の原則”を徹底することにあります。ここでは、流水救助の基本と住民が知っておくべき判断を整理します。


■① 流水下救助が難しい理由(見えない力が働く)

流水では、
・流速(目に見えにくい横方向の力)
・水深の急変(段差・側溝)
・漂流物(木片・瓦礫)
・濁りによる視界不良
が同時に起きます。水は体を押すだけでなく、足元を削り、体勢を崩します。救助は“立てるかどうか”が分岐点です。


■② 高度化の核心① 近づかない救助(投てき・ロープ・延長)

流水救助の原則は「Reach, Throw, Row, Go(届かせる→投げる→船→最後に入水)」です。
・長い棒や延長物で届かせる
・ロープや浮力体を投げる
・ボートで接近する
・やむを得ず入水は最後
最初から水に入らない設計が、二次災害を減らします。


■③ 高度化の核心② ロープワークと確保

入水が必要な場合でも、
・上流側に確保を取る
・テンションを管理する
・バックアップを置く
など、ロープで安全を作ります。流れに対して直角に立たない、単独で近づかないなどの基本を守ることが、救助者の命を守ります。


■④ 高度化の核心③ PPE(個人防護)と状況判断

ヘルメット、浮力体、適切な靴、ドライスーツなどの装備は、救助の“前提条件”です。加えて、
・流速が一定値を超えたら中止
・夜間・視界不良は条件を厳しく
・上流の放流情報を確認
といった中止判断の基準を持つことが重要です。勇気より基準が救助を成功させます。


■⑤ 被災地派遣(LO)で見た「水は時間とともに性格が変わる」現実

被災地派遣(LO)の現場では、同じ場所でも数時間で水位と流れが変わる場面を何度も見ました。引き潮や放流で一時的に穏やかに見えても、再び増水することがあります。水は“今の見た目”で判断すると危険です。上流の情報と時間軸で見ることが、判断を軽くします。


■⑥ よくある誤解(膝下なら安全、車なら渡れる)

豪雨時に多い事故は、
・「浅いから歩ける」
・「四駆だから渡れる」
という過信です。流速があれば、膝下でも足をすくわれます。車は30~50cmで浮力が働き、ハンドルが効きにくくなります。流水では“深さより流れ”を重視します。


■⑦ 住民が守るべき最優先(近づかない・入らない)

住民側で最も重要なのは、
・増水河川や用水路に近づかない
・アンダーパスに入らない
・夜間の冠水路に進入しない
・子どもを川辺に近づけない
ことです。救助は専門部隊に任せ、まず自分が巻き込まれない行動を徹底します。


■⑧ 今日からできる備え(ハザードマップと退避基準)

家庭でできる最小の備えは、
・ハザードマップで浸水想定を確認
・退避の基準(警戒レベル)を家族で共有
・車で避難する場合のルート確認
・長靴ではなく滑りにくい靴の準備
“入らない判断”を先に決めておくと、豪雨時の迷いが減ります。


■まとめ|流水下救助の高度化は「近づき方の原則」を守ること

流水下での救助は、流速・水深変化・漂流物などの複合リスクがあり、二次災害が起きやすい分野です。高度化とは、近づかない救助を優先し、ロープ確保と装備で安全を作り、基準で中止判断をすることです。住民は“入らない判断”を徹底するほど安全です。

結論:
流水では「助けたい」より「近づかない」が命を守る。届かせる・投げるを優先し、入水は最後の手段です。
元消防職員として、豪雨現場で水位が短時間で変わる場面を何度も見ました。水は見た目より強い。だからこそ、基準と手順で判断を揃えることが救命の近道です。

出典:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/ame.html

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