【元消防職員が解説】消防学校訓練事故から学ぶ再発防止策|防災×訓練安全

消防・防災の現場では「訓練そのものが危険を伴う」という現実があります。
令和6年7月、福岡市消防学校の初任教育における水難救助訓練中に、尊い命が失われる事故が発生しました。
この事故を踏まえ、再発防止に向けた具体的な取り組みが整理されています。


■① 事故の概要

令和6年7月9日、福岡市総合西市民プールにおいて、消防学校初任教育の水難救助訓練中、職員が心肺停止となる事故が発生しました。

立ち泳ぎ訓練中、受講生が水中に沈下。
水底で監視していた救助隊員が発見し、直ちにプールサイドへ引き上げ、救命処置を実施。
その後、救急搬送されましたが、7月17日に死亡が確認されています。


■② 調査検討委員会が示した再発防止の基本方針

本事故を受け、調査検討委員会は「安全を最優先とする教育体制」への抜本的転換を提言しました。
その柱は以下の8点です。


■③ 安全を最優先にする組織風土の構築

安全は個人任せではなく、組織全体で守るものと位置づけました。

安全推進担当部長を新設
各所属から選抜された職員によるプロジェクトチームを設置
組織横断で安全意識の醸成に取り組む体制を構築


■④ 指導者の指導要領・資格の充実

指導者側の安全管理能力を底上げする取り組みが進められています。

日本赤十字社水上安全法の資格取得を義務化
指導用テキスト・動画を新たに作成
訓練前に指導者研修を実施


■⑤ 学生に対する事前教育と健康管理の強化

訓練前段階でのリスク低減を重視しています。

動画等を用いた事前教育の実施
複数手段による体調確認の徹底
学生自身が危険を理解したうえで訓練に臨む体制づくり


■⑥ 技量に応じた段階的訓練の実施

立ち泳ぎは高い技術を要するため、訓練方法を見直しました。

座学と実技を含めた3日間の訓練を実施
実技は水底に足がつくプールで段階的に実施
学生の能力に応じて水深・内容を調整


■⑦ 訓練時の安全管理体制の強化

訓練中の「見落とし」を防ぐための具体策です。

泳力が近い学生同士のバディシステム導入
グループごとに教官を指定し監視エリアを明確化
監視の重複と抜けを防止


■⑧ 消防学校における安全管理規程の整備

安全管理を属人的にしないため、制度化が進められました。

安全責任者等の役割を明確化した要綱を策定
訓練における安全管理任務を明文化


■⑨ 学生スキルの現場共有

訓練成果や課題を現場へ確実につなげる仕組みです。

学生個々の特性・スキル情報を消防署と共有
実務研修先と情報連携を強化


■⑩ 組織横断的な安全管理体制の構築

事故を「一過性」で終わらせないための仕組みです。

安全推進担当部長の設置
他都市・他機関・民間の安全対策を調査
管理監督者・小隊長向け安全管理特別教育の実施


■⑪ 令和7年度以降の水難救助訓練について

これらの対策に加え、日本赤十字社水上安全法指導員を講師に迎え、再発防止策を講じたうえで、令和7年度の初任教育における水難救助訓練は実施される予定です。


■⑫ 防災・消防訓練に求められる本質

訓練は命を守るためのものですが、同時に「訓練そのものが危険を孕む」現実があります。
今回の事故は、技術・体力・精神論だけでは安全は守れないことを示しました。

組織で守る
制度で守る
段階で守る

この視点を持ち続けることが、同じ悲劇を繰り返さない唯一の道です。
消防・防災に携わるすべての現場にとって、重く、そして重要な教訓と言えるでしょう。

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