危険物施設における事故の多くは、「見えない劣化」から始まります。
中でも地下に埋設された鋼製配管の腐食は、発見が遅れやすく、漏えい事故に直結します。
今回は、令和7年に制定された
「新設危険物施設の鋼製地下配管に適用する電気防食規格及びガイドライン(JSCE S 2501:2025)」
について、防災の視点で整理します。
■① なぜ新しい規格が必要だったのか
危険物施設では、地下配管の外面防食として、
・塗覆装・コーティング
・電気防食
を組み合わせることが法令で求められています。
しかし、従来の流電陽極方式の電気防食では、
・防食効果の評価方法
・測定値の信頼性
に課題がありました。
国際的には、ISO規格により「インスタントオフ電位」を用いた評価が標準化され、
日本国内の基準もこれに整合させる必要が生じたことが、制定の背景です。
■② 「新設」と「既設」は全く別物
今回の規格で特に重要なのが、「新設」の定義です。
本規格が対象となるのは、
・配管の埋設工事と同時に
・電気防食設備を施工する場合
に限られます。
埋設後に防食工事を行う場合や、絶縁が確保できない場合は、
既設施設向けの別ガイドラインを適用しなければなりません。
現場では、この判断ミスが後々の是正指導につながりやすいポイントです。
■③ 防食効果は「インスタントオフ電位」で判断
新規格では、防食効果の判定に
「インスタントオフ電位測定」
が明確に位置付けられました。
これは、防食電流を遮断した直後の電位を測定し、
IRドロップの影響を除いた、純粋な防食状態を確認する方法です。
消防の立場から見ても、
・測定方法が明確
・判断基準が客観的
であることは、検査や指導の公平性につながります。
■④ 配線は「一括遮断」が必須条件
インスタントオフ電位を正確に測定するためには、
すべての陽極と防食対象配管を同時に遮断できる構造
でなければなりません。
そのため、規格では
・陽極と配管を直接接続しない
・すべてをジョイントボックスに集約する
という配線方法が例示されています。
設計段階でこれを考慮していないと、測定自体が不可能になります。
■⑤ 絶縁不良は「防食失敗」の原因になる
現場調査では、
・絶縁が維持されていない
・絶縁確認試験が未実施
といった事例が多く確認されてきました。
防食対象配管と非防食対象物が電気的につながると、
・防食電流が逃げる
・陽極が早期消耗する
など、防食性能が成立しなくなります。
新規格では、環境条件に応じた絶縁構造や、
施工前後それぞれの絶縁確認試験方法が明示されています。
■⑥ 消防の立場で感じるこの規格の意義
危険物事故の多くは、
「設計段階の甘さ」
「施工時の見落とし」
が原因で、何年も後に表面化します。
この規格は、
・設計
・施工
・測定
・確認
を一貫して整理した点に大きな価値があります。
見えない部分こそ、ルールで守る。
それが、防災の基本です。
■⑦ 防災は“設備管理”から始まっている
大きな災害や事故は、突然起きるように見えて、
実際には小さな管理不備の積み重ねです。
地下配管の電気防食という地味な分野ですが、
確実な管理こそが、事故を未然に防ぎます。
新しい規格は、防災力を底上げするための重要な土台と言えるでしょう。

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