一定規模以上の建物では、防火対象物点検が義務付けられています。
その点検を担うのが「防火対象物点検資格者」です。
しかし現場で感じるのは、
“報告書はあるが、リスクが残っている建物”が存在するという現実です。
防火対象物点検資格者講習は、形式的な確認ではなく、火災予防の実効性を担保するための講習です。
■① 防火対象物点検とは?|建物の“予防体制”を総合チェックする制度
防火対象物点検は、建物全体の防火管理体制や設備、運用状況を総合的に確認する制度です。
点検項目には、
・防火管理者の選任状況
・消防計画の整備
・避難経路の確保
・防火区画の維持
・収容人員管理
・自衛消防組織の体制
などが含まれます。
単なる設備点検ではなく、「運用が回っているか」を見るのが特徴です。
■② なぜ資格者講習が必要か|“見抜く力”は経験だけでは足りない
点検はチェックリストを埋める作業ではありません。
・掲示はあるが、実際に周知されていない
・避難経路は確保されているが、夜間は物品が置かれる
・計画はあるが、訓練が形骸化している
こうした“ズレ”を見抜く視点が必要です。
講習では、法令の理解だけでなく、
実務上のリスク判断や事例を通じた学びが重視されます。
■③ 現場で差が出るポイント|“形式適合”と“実質安全”は違う
元消防職員として強く感じるのは、
形式上は適合していても、安全とは限らないということです。
・消火器は設置されているが、前に物が置かれている
・誘導灯はあるが、停電時の確認をしていない
・非常口はあるが、普段は施錠されている
点検の質が低いと、重大事故の芽を見逃します。
■④ 被災地派遣で見えた現実|“日常管理の差”が被害を分ける
被災地派遣やLO調整の現場では、
日常管理が行き届いていた建物ほど混乱が少ない傾向がありました。
・避難経路が確保されている
・指揮系統が明確
・設備の位置が共有されている
・責任者が即座に動く
逆に、日常の小さな怠慢が重なった建物は、
災害時に一気に問題が表面化します。
防火対象物点検は、その“日常の質”を底上げする制度です。
■⑤ よくある誤解|「年1回の点検で十分」?
点検は最低限の確認です。
本当に重要なのは、
・日常点検
・自主的な改善
・用途変更時の見直し
・人員変更時の再確認
制度は“最低ライン”。
安全は“積み上げ”で決まります。
■⑥ 点検資格者の責任|「通す」ではなく「守る」
点検資格者の役割は、
書類を通すことではありません。
・是正が必要なら明確に指摘する
・曖昧な状態を見逃さない
・リスクを具体的に伝える
・改善提案を提示する
“言いにくいことを言う”のも仕事です。
■⑦ 今日できる最小行動|非常口を実際に歩いてみる
点検資格者でなくても、
今日できる行動があります。
・非常口まで実際に歩く
・夜間想定で確認する
・段差や障害物をチェックする
・鍵の有無を確認する
机上確認ではなく、“歩いて確かめる”ことが重要です。
■⑧ 結論|防火対象物点検資格者講習は“形だけ安全”を防ぐ制度
防火対象物点検資格者講習は、建物の防火管理体制が実効性を持って機能しているかを確認できる人材を育てる制度です。
形式適合だけでなく、実質安全を見抜く視点が求められます。
結論:
防火対象物点検は「書類の確認」ではなく、「命を守る隙間を探す作業」。
元消防職員として現場で痛感したのは、事故は“見逃された小さな違和感”から始まるということです。
その違和感を見逃さない人を育てるのが、この講習の本質です。
出典:総務省消防庁 https://www.fdma.go.jp/

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