元日未明、東京・新宿区で3歳の男の子がマンション9階から転落し、命を落とすという痛ましい事故が起きました。両親は「子どもが寝たのを確認して初詣に行った」と説明しており、部屋には男の子一人だけが残されていたとされています。この事故は、決して特別な家庭だけに起きるものではありません。消防・被災地の現場で多くの事故を見てきた立場から、この出来事が示す本当の危険と、私たちが考えるべき防災の視点を整理します。
■① 「少しの外出」が最大のリスクになることがある
現場経験上、重大事故の多くは「ほんの少し」「大丈夫だと思った」という判断の隙に起きています。被災地や救急現場でも、「数分のつもりだった」「寝ていたから問題ないと思った」という言葉を何度も聞いてきました。時間の長短ではなく、「一人にした」という事実そのものがリスクになります。
■② 子どもは目を覚ます、そして行動する
3歳前後の子どもは、途中で目を覚ますことが珍しくありません。現場では、親が想像していない行動を取った結果、事故につながったケースを数多く見てきました。寝ている=安全ではなく、「起きた後に何が起きるか」を想定しておく必要があります。
■③ 高層階は“落ちない”前提で暮らしてしまう危険
マンションの高層階は、「まさか落ちない」という心理が働きやすい環境です。しかし消防の立場で見ると、高層階ほど一度の判断ミスが致命的になります。被災地でも、普段は問題なかった生活動線が、ある瞬間に凶器になる場面を見てきました。
■④ ベランダは子どもにとって「探検場所」になる
大人にとっては危険な場所でも、子どもにとっては「外」「光」「風」がある魅力的な空間です。消防現場では、椅子やおもちゃ、植木鉢など、日常品が足場になっていた事故を多く確認してきました。「乗り越えられる物は置いていないつもり」でも、子どもの発想はそれを超えます。
■⑤ 防災は災害だけでなく「日常の事故」を含む
防災というと地震や火災を思い浮かべがちですが、実際の死亡事故は日常の中で多く起きています。被災地対応や消防活動を通じて痛感したのは、「災害時の危険」と「日常の油断」は地続きだということです。転落事故も立派な防災の対象です。
■⑥ 「自己責任」では片づけられない現実
事故が起きると、結果だけを見て責める声が出がちです。しかし現場を知る立場から言えるのは、「同じ状況に置かれれば、多くの家庭で起こり得る」という現実です。責めるより、再発を防ぐ視点が必要です。
■⑦ 今日からできる現実的な対策
・短時間でも子どもを一人にしない
・外出時は必ず大人が同伴する
・ベランダに足場になる物を置かない
・補助錠や開閉制限器を“過信せず”使う
・「起きた後」を想定して環境を見直す
現場では、「これをしていれば助かったかもしれない」と感じるケースがあまりにも多くあります。
■⑧ 命を守る防災は、日常の判断から始まる
この事故は、誰かを非難するためのニュースではありません。命を守る防災は、非常時だけでなく、日常の何気ない判断から始まります。消防・被災地の現場で見てきたのは、「想定していた家庭ほど、最悪を避けられていた」という事実です。今日の判断が、明日の命を守ることにつながります。

コメント