大型施設や学校、工場、公共施設には必ず設置されている 屋内消火栓。
消火器より強力で“一気に火勢を押さえ込む力”がありますが、
正しい訓練をしていないと 逆に危険を生む装置 でもあります。
この記事では、元消防職員として
屋内消火栓を安全・確実に操作するポイントを解説します。
■① 屋内消火栓とは?どんな場面で使うのか
屋内消火栓は 建物内部の火災を早期に鎮圧するための設備 で、
一般的な消火器よりも“放水量が圧倒的に多い”のが特徴です。
使用が想定される場面は以下のとおり。
- 火災が部屋の中で燃え広がる前
- 通路・倉庫・体育館など空間が広い場所
- 炎が大きく、消火器だけでは不十分な場面
- 避難の遅れが発生する可能性がある場所
初期消火の最後の切り札とも言われます。
■② 屋内消火栓の構造を理解しよう
扉の中には以下の装置が収納されています。
- ホース(20〜30m)
- 開閉バルブ
- ノズル(ストレート/スプレー切替可能)
- 呼水ポンプ(建物によってはなし)
訓練ではまず「どこにあるか」を覚えることが非常に重要です。
■③ 正しい操作手順(これを体で覚える)
STEP1:119番通報 → 周囲へ大声で知らせる
STEP2:扉を開け、ホースを“全部”引き出す
ホースは中途半端だと水圧で暴れます。
STEP3:ノズルを持った人が前方へ移動
ホースをねじらず真っ直ぐ延ばす。
STEP4:バルブを開く(ゆっくり)
一気に開けるとホースが暴れて危険。
STEP5:ノズルで放水開始
的確に火元へ水を届かせる。
この順番が逆になると、
ホースが暴れたり、水が出ず時間をロスしたりする危険が生まれます。
■④ 訓練で必ず覚えておきたい3つの姿勢
●後方支援者が“腰”を支える
放水時は大人でも後ずさりするほどの水圧があります。
●ノズルの方向は決して人に向けない
間違って人体に向けると怪我の原因に。
●ホースは2人以上で保持
1人で扱うのは危険。
最低でも “ノズル担当+ホース押さえ” の2人体制が必要。
■⑤ 放水の基本は「スプレーで制圧 → ストレートで押さえる」
火災現場でも使われるテクニックです。
- スプレーパターン:炎の勢いを抑える
- ストレートパターン:火元へ水を届かせる
大きい火は、まずスプレーで勢いを弱めることがポイント。
■⑥ 屋内消火栓で絶対にやってはいけない行動
- 一人で扱う
- ホースをねじったまま放水する
- バルブを先に全開にする
- 火に近づきすぎる
- 煙の中に突入する
屋内消火栓は強力だからこそ、誤操作が大きな事故につながります。
■⑦ どこまでが“使用して良い火災”か?
屋内消火栓は強力ですが、万能ではありません。
使用してよい火災
- 炎が天井に到達する前
- 部屋全体が煙で満たされていない
- 逃げ道が確保できている
- 2〜3人で操作できる状況
使用してはいけない火災
- 油火災(天ぷら油など)
- 電気火災(漏電の危険が高い場合)
- 炎が天井まで到達しバックドラフトの危険がある状況
判断できない場合は 消火ではなく避難 を優先します。
■⑧ 訓練で身につく本当の目的
屋内消火栓訓練は、
「水を出す練習」のように見えますが、本質は違います。
- 操作に慣れる
- バルブの重さを知る
- ホースの引き方を理解する
- 仲間との連携を覚える
- 火災の“限界点”を判断できるようになる
これらを身につけることで、
いざという時に “迷いなく動ける人材” になります。
■まとめ|屋内消火栓は「使える人が1人いるだけで建物全体の安全性が上がる」
- 消火器より強力で、初期〜拡大直前の火災に有効
- 操作手順を間違えると非常に危険
- 2人以上で扱うのが基本
- ホース延ばし・姿勢・声かけの連携が重要
- 訓練している人とそうでない人では“差が歴然”
- 火災の状況判断を学ぶことが最大の目的
■元消防職員から最後に
火災現場で、屋内消火栓を使いこなせた職員・住民のおかげで
延焼を防げた例を何度も見てきました。
逆に、
「使い方がわからず時間を失ったことで延焼した」
というケースも多く存在します。
今日できる一歩は――
→ 建物の中にある屋内消火栓の場所を“1つだけ”確認すること。
その1歩が、大勢の命と財産を守る準備につながります。

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