救急は「一分一秒」を争う活動です。特に心肺停止では、数分の遅れが生死を分けることも珍しくありません。今回報じられた救急指令のミスによる到着遅れ事案は、救急体制の構造的リスクと、私たちが知っておくべき現実を突きつけています。防災・救急の視点から、この事案を整理します。
■① 心肺停止は時間との闘い
心肺停止後、何もしなければ数分で脳に不可逆的なダメージが生じます。救急車の到着時間は、救命の可能性に直結します。
■② 救急指令は「最初の救命行為」
119番通報を受け、正確な場所・状況を把握し、最適な部隊を出動させる指令は、現場活動以前の重要な救命プロセスです。
■③ システム依存が生む新たなリスク
電話番号から自動表示される位置情報は便利な一方、誤認や思い込みが加わると、今回のような指令ミスにつながる危険があります。
■④ 「思い込み」は指令業務の最大の敵
通報内容と画面表示が食い違った際、確認を怠ると致命的な判断ミスになります。ヒューマンエラーはどの現場にも起こり得ます。
■⑤ 数十メートルでも致命的になり得る
今回の事案では約50メートル、約3分の遅れが発生しました。心肺停止では、この時間差が結果に影響する可能性を否定できません。
■⑥ 救急の限界を前提に備える必要性
「救急車が来るから大丈夫」という前提は危険です。到着までの時間をどうつなぐかが、市民側の防災課題でもあります。
■⑦ 市民ができる命を守る行動
正確な住所・施設名の明確な伝達、AEDの把握、心肺蘇生法の習得が、指令や到着の遅れを補う力になります。
■⑧ 再発防止は信頼回復の最低条件
指令体制の見直し、ダブルチェックの徹底、職員教育の強化が不可欠です。救急への信頼は社会の基盤です。
■まとめ|救急は万能ではない
救急体制は重要ですが、決して万能ではありません。制度・人・システムの限界を理解した上で、地域と個人が補完する視点が求められます。
結論:
救急指令の数分の遅れが命に影響する可能性がある以上、市民側も「到着までの命をつなぐ行動」を備えておくことが防災の現実です。
元消防職員として現場と指令の両方を知る立場からも、救急は「来るまで何もしなくていい存在」ではなく、「来るまでをどう支えるか」が命を守る分かれ道だと強く感じています。

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