豪雨、地震、火災、陥没事故――。
災害が発生した直後、最初に立ちはだかるのは「インフラが止まった現実」です。
道路、水、電気、トイレ、医療。
これらが一斉に失われた現場で、静かに、しかし確実に人命を支えているのが災害支援車両です。
一方で、その存在や重要性は、まだ十分に知られているとは言えません。
元消防職員の立場から、災害支援車両の本質と、なぜ官民一体で普及させる必要があるのかを整理します。
■① 災害支援車両とは何か
災害支援車両とは、災害時に被災地へ派遣され、
避難者や現場活動を支援するために特化した車両です。
もともとは自衛隊や消防が、後方支援を目的として配備していた車両が原型です。
1995年の阪神淡路大震災を契機に、その必要性が強く認識され、
全国の消防本部や自治体へと配備が広がってきました。
■② 東日本大震災で役割が変わった
2011年の東日本大震災では、
「助かった命が、避難生活で失われる」という現実が突きつけられました。
低体温症、持病の悪化、精神的ストレス。
これらの災害関連死を防ぐため、
生活支援を目的とした災害支援車両が本格的に活用されるようになったのです。
■③ 現在の災害支援車両の機能
近年の災害支援車両は、単なる移動手段ではありません。
・授乳やおむつ替えができる個室
・高齢者や障がい者の身体ケアスペース
・ソーラー発電、発電機、蓄電池
・エアコン、冷蔵庫、水タンク式シンク
まさに「動く避難拠点」と言える存在です。
被災直後の数日間を支える力を持っています。
■④ 大型車両と軽トラックの役割分担
災害支援車両は大型車だけではありません。
大型車両は、
・生活支援
・医療・福祉対応
・電源供給
に強みがあります。
一方、軽トラックを改造した災害支援車両は、
・狭い道路
・瓦礫が残る地域
・山間部
で真価を発揮します。
災害現場では「小まわり」が命を救う場面も多いのです。
■⑤ 最大の課題は「コスト」
災害支援車両は特殊架装が多く、
導入コストが高額になりがちです。
さらに、
・維持管理
・定期点検
・更新費用
といったランニングコストも必要になります。
自治体単独では、
十分な台数を整備できない現実があります。
■⑥ 官民一体で進む支援の仕組み
現在、内閣府の災害対応車両登録制度により、
国が補助を行う仕組みが整えられつつあります。
さらに、
・企業による寄贈
・キャンピングカーの災害活用
・民間事業者との連携
といった動きも始まっています。
官民一体で支える仕組みが不可欠です。
■⑦ 元消防職員として見てきた現実
現場で実際に多かった失敗は、
「支援する気持ちはあるが、物理的に何もできない」という状況です。
誤解されがちなのは、
「人がいれば何とかなる」という考えです。
行政側が言いにくい本音は、
装備と車両がなければ、支援は届かないという点です。
災害支援車両は、
人の善意を現場に届けるための器です。
■⑧ 災害支援車両と自律型避難の関係
災害支援車両は万能ではありません。
すべての被災者をすぐに支えられるわけではないのです。
だからこそ重要なのが自律型避難です。
支援が届くまでの時間を、
各家庭・地域がどう耐えるか。
災害支援車両は、
その「空白の時間」を埋めるための最後の砦です。
■まとめ|災害支援車両は「命をつなぐインフラ」
災害支援車両は、使用頻度が低いかもしれません。
しかし、使われるときは必ず「命がかかる場面」です。
結論:
災害支援車両はコストではなく、命への投資
元消防職員として現場を見てきた経験から断言できます。
官民一体でこの車両を整備・普及させることは、
日本が災害大国として生き延びるために不可欠な選択です。
見えない備えこそが、
本当に人を救います。

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