災害現場や避難所で活動していると、毎回感じることがあります。
それは、「事前にこれを知っていれば、ここまで苦しまなくて済んだのに」という事実です。
防災は机上では完成しません。
現場に立って初めて見えるもの、気づくことがあります。
この記事では、元消防職員として数多くの現場を見てきた立場から、
今だからこそ伝えたい防災の本質を整理してお伝えします。
■① 災害は一瞬、被災は長期戦
多くの人は「災害そのもの」を想像します。
・地震の揺れ
・豪雨のピーク
・火災の延焼
しかし現場で本当に大変なのは、その後です。
・避難生活
・生活の立て直し
・心身の消耗
災害対応は一瞬でも、被災は数週間、数か月、時には年単位で続きます。
この視点が抜けた防災は、現場では役に立ちません。
■② 正解を探す人ほど動けなくなる
現場では、次の言葉をよく聞きました。
「正しい行動が分からない」
「間違えたらどうしよう」
情報が多い時代ほど、人は判断できなくなります。
防災に必要なのは、
完璧な正解ではなく「今できる最善」です。
迷って止まるより、
不完全でも一歩動ける人の方が助かります。
■③ 我慢を美徳にすると、必ず限界が来る
日本の避難所で特に強いのが、「我慢」の文化です。
・文句を言わない
・要求しない
・周囲を優先する
この姿勢は尊い反面、長期避難では大きなリスクになります。
我慢が続くと、
・体調を崩す
・心が折れる
・回復が遅れる
現場では、我慢強い人ほど後から一気に崩れるケースを多く見てきました。
■④ 不快感は放置すると判断力を奪う
避難所で軽視されがちなのが、不快感です。
・暑さ寒さ
・着替えられない
・眠れない
・清潔を保てない
これらは命に直結しないように見えますが、
判断力を確実に奪います。
不快な状態が続くと、
・判断が遅れる
・危険を過小評価する
・人とのトラブルが増える
現場では、不快感の蓄積が二次被害を生む場面を何度も見ました。
■⑤ 防災は「自分で選べる状態」をつくること
現場で回復が早かった人には、共通点があります。
それは、
・自分で選べていた
・自分で決められていた
という点です。
・着る服を選べる
・休む場所を選べる
・行動のタイミングを決められる
これが「自律型避難」の本質です。
誰かに守られる前提ではなく、
自分で自分を守れる状態をつくることが、防災の土台になります。
■⑥ 防災グッズは万能ではない
現場で感じた率直な本音があります。
防災グッズがあっても、
・使えない
・使う余裕がない
・重くて邪魔
というケースは珍しくありません。
グッズはあくまで補助です。
生活が回っていなければ、宝の持ち腐れになります。
■⑦ 「やらなくていい防災」を決める勇気
防災で一番疲れるのは、
「全部やろうとすること」です。
現場では、
・完璧を目指した人ほど消耗する
という傾向がはっきり出ていました。
やらないことを決める。
捨てる判断を持つ。
これは怠慢ではなく、生き延びるための戦略です。
■⑧ 防災のゴールは「人間らしい生活」
防災の最終目的は、
ただ生き延びることではありません。
・眠れる
・清潔を保てる
・尊厳を失わない
この状態を取り戻すことです。
命を守ったその先に、
生活と心を守る防災があります。
■まとめ|現場から伝えたい防災の本質
・災害は一瞬、被災は長期戦
・正解探しより行動
・我慢は限界を生む
・不快感は判断力を奪う
・自分で選べる状態が防災力
結論:
防災とは、極限状態でも「自分で判断し続けられる力」を残すことです。
元消防職員として現場を見てきた立場から言えるのは、
生き延びた後に差が出るのは「備えの量」ではなく「考え方」だという事実です。

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