【元消防職員が解説】防災×登山|「寒さと疲れで動けない」は誰にでも起こる遭難の始まり

長野県の中央アルプス・木曽駒ヶ岳で、下山中の大学生が寒さと疲労により動けなくなり、消防に救助される事案が発生しました。
命に別状はありませんでしたが、これは決して珍しいケースではなく、登山や山歩きにおける典型的な遭難パターンのひとつです。


■① 遭難は「下山中」に起きやすい

多くの人が誤解していますが、遭難は登りよりも下山中に多く発生します。

・体力をすでに消耗している
・集中力が低下している
・「もう終わり」という油断が出る

下山は登りより膝や太ももに負担がかかり、疲労が一気に表面化します。
今回も「下山中」に寒さと疲れが重なり、動けなくなっています。


■② 標高1,500mでも「寒さ」は命取りになる

標高1,500m前後は、平地より約10℃近く気温が低いこともあります。

・風が吹けば体感温度はさらに低下
・汗をかいた後は急激に体が冷える
・日没や早朝は特に危険

「低山だから大丈夫」「林道だから安全」という思い込みは非常に危険です。


■③ 単独登山はリスクが一気に跳ね上がる

今回の事案は単独入山でした。

単独行動では、
・異変に気づく人がいない
・ペース調整ができない
・体調悪化を止めてくれる人がいない

結果として「もう少し頑張れば…」が続き、限界を超えてしまいます。


■④ 「疲労+寒さ」は低体温症の入口

疲労が蓄積すると、
・熱を作る力が低下
・判断力が落ちる
・休憩判断が遅れる

そこに寒さが加わると、低体温症の初期段階に入りやすくなります。

「動けない」という状態は、すでに体からの危険信号です。


■⑤ 自ら救助要請できた判断は正しかった

今回の大学生は、自ら消防に救助を求めています。
これは非常に重要で正しい判断です。

・動けなくなってから時間を空けない
・無理に歩こうとしない
・早めに助けを呼ぶ

遭難時は「迷惑をかける」「恥ずかしい」と思わず、生きる選択を最優先にしてください。


■⑥ 登山で最低限必要な「防寒」と「余力」

登山では以下が重要です。

・行動着とは別に防寒着を必ず持つ
・下山時間を含めた体力配分
・予定より早めに引き返す判断

「使わなかった装備」は失敗ではありません。
使わずに済んだこと自体が成功です。


■⑦ 冬・年末年始の登山は難易度が一段上がる

年末年始は、
・日照時間が短い
・気温が急変しやすい
・救助に時間がかかる

同じ山、同じルートでも、季節が変われば別物と考える必要があります。


■⑧ 山の防災は「引き返す勇気」

登山における最大の防災行動は、
「今日はやめる」「ここで引き返す」という判断です。

・疲れを感じたら早めに止まる
・寒さを感じたら即対処する
・迷ったら進まない

山では「無事に帰る」ことだけが成功です。

今回の事案は、誰にでも起こり得る現実です。
登山は自然を楽しむ行為であると同時に、自然の中で命を預ける行為でもあります。
備えと判断で、防げる遭難は確実に減らせます。

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