防火査察は、単なる立入検査ではありません。
違反が重大な場合には、不利益処分につながることもあります。
その際に重要となるのが「聴聞」という行政手続です。
これは行政の一方的判断を防ぎ、公正性を担保する仕組みです。
今回は、防災と防火査察の視点から整理します。
■① 聴聞とは何か
行政庁が命令などの不利益処分を行う際、
原則として事前に当事者へ意見を述べる機会を与えます。
これが「聴聞」です。
・透明性の確保
・公正性の担保
・説明責任の明確化
防火対象物点検の特例認定取消しも、この対象になります。
■② 主宰者の役割
聴聞は、行政庁が指名した職員が主宰します。
重要なのは、公正・中立性。
利害関係者は主宰できません。
これは制度の信頼性を守るためです。
■③ 出頭しない場合の扱い
当事者の一部が出頭しなくても、
審理は進めることができます。
手続は止まりません。
ただし、適切な通知が前提です。
■④ 続行の判断
審理の結果、さらに検討が必要な場合、
主宰者は新たな期日を定めることができます。
これは事実確認を徹底するための措置です。
拙速な判断を防ぎます。
■⑤ 意見を述べない場合
当事者が正当な理由なく出頭せず、
陳述書も提出しない場合、
改めて機会を与えたうえで、
応じなければ終結することが可能です。
ここで重要なのは、
「機会を与えること」です。
■⑥ 調書作成の義務
主宰者は審理経過を記載した調書を作成し、
当事者の陳述要旨を明らかにします。
これは後の判断や争訟に備える重要な記録です。
防災行政は“記録”で支えられています。
■⑦ 被災地で感じた公正の重み
被災地派遣やLOとして現場に入った際、
行政の判断が厳しく問われる場面を見ました。
元消防職員として強く感じたのは、
手続の公正さが信頼を守るという事実です。
防災士として現場で見た誤解は、
「結果だけを見て不公平だと決めつける」ことでした。
しかし、裏には必ず手続があります。
■⑧ 防災と行政手続の関係
防火査察は命を守る予防行政です。
違反是正は重要ですが、
手続を誤れば信頼を失います。
自律型防災の前提は、
行政と住民の信頼関係です。
■まとめ|公正な手続が防災を強くする
聴聞は形式ではありません。
公正・中立・記録の三本柱で成り立っています。
結論:
防火査察の厳格さと手続の公正さは、どちらも防災を支える両輪です。
元消防職員として現場で確信しているのは、
手続を丁寧に踏む行政ほど、最終的に住民の信頼を得ていたという事実です。
公正は、防災力そのものです。
出典:消防法第8条の2の5、行政手続法

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