【元消防職員が解説】AR消火活動訓練とは?“現場の判断”を安全に反復できる次世代トレーニング

消火活動は、知識だけでは足りません。現場では、煙で視界が悪い、熱で近づけない、情報が錯綜する、隊員の疲労が出る――その中で「次の一手」を即決しなければなりません。そこで活用が進んでいるのがAR(拡張現実)を使った消火活動訓練です。安全な環境で、現場に近い判断と連携を繰り返し練習できるのが最大の強みです。


■① AR消火活動訓練とは何か

AR消火活動訓練とは、実際の訓練空間にデジタル情報(炎・煙・熱源想定・危険表示など)を重ね合わせ、より現実に近い状況で消火判断と隊活動を反復する訓練手法です。実火災のような危険を伴わずに、視界不良・延焼拡大・要救助者想定などを段階的に作れる点が特徴です。


■② なぜ「消火」は判断が遅れると不利になるのか

火災は時間とともに条件が悪化します。
・煙が溜まり、視界が奪われる
・熱が増し、接近できる距離が縮む
・延焼で同時対応が必要になる
・避難誘導と消火の優先順位が揺れる
現場で必要なのは、完璧な正解より「一瞬で安全側に寄せる判断」です。ARは、その判断を安全に鍛えられます。


■③ 元消防職員として痛感した“連携が噛み合う現場”の強さ

現場では、個人技よりも連携で結果が変わります。伝達が遅れる、声が届かない、役割が曖昧――それだけで初動が崩れます。逆に、短い声かけで役割が割れ、同じ絵を見て動ける隊は強い。AR訓練は、同じ状況を再現して「連携の型」を揃えるのに向いています。経験の浅い隊員でも、型があれば動けます。


■④ AR訓練で鍛えられるポイント(実火を使わなくても伸びる)

AR訓練で伸ばしやすいのは次の力です。
・危険認知(逃げ道、退避線、背後確認)
・情報共有(見えたことを短く伝える)
・隊形と役割(先行、後方支援、退避管理)
・選択(進む/引く、攻める/守る)
特に「引く判断」を練習できるのは大きいです。無理をしない判断は、現場で命を守ります。


■⑤ 訓練シナリオの作り方(“一つだけ難しくする”)

訓練は一度に全部盛りにすると崩れます。コツは、1回の訓練で難点を一つだけ上げることです。
例:
・煙が早く溜まる想定
・要救助者が動揺している想定
・延焼方向が変わる想定
これを段階的に追加すると、判断の質が上がり、成功体験も積めます。


■⑥ 実際に多い失敗(訓練で潰すべき“落とし穴”)

消火活動で多い失敗は、技術というより基本の崩れです。
・退路確認が薄くなる
・報告が長くなり、要点が伝わらない
・ホース取り回しで動線が詰まる
・熱・煙の変化に気づくのが遅れる
ARは、同じ失敗を安全に繰り返し“気づき”へ変えられます。失敗できる環境は、実は最強の訓練です。


■⑦ 現場運用に落とし込むコツ(訓練→実務の橋渡し)

AR訓練の成果を実務へつなげるには、訓練後に次の3点だけ確認します。
・最初に危険だった瞬間はどこか
・その時、誰が何を言えばよかったか
・次回は“最初の一言”を何にするか
この3点を固定すると、現場の判断が揃い、初動が速くなります。


■⑧ 今日できる最小の一歩(ARがなくても同じ発想で鍛えられる)

AR環境がなくても、発想は取り入れられます。
・訓練の目的を一つに絞る(退路確認だけ、報告だけ)
・合図の言葉を固定する(「退避」「ストップ」「後退」など)
・短い振り返りを必ず入れる
道具より、判断の型を作ることが本質です。


■まとめ|AR消火活動訓練は「判断と連携」を安全に反復し、現場の初動を強くする

AR消火活動訓練は、炎・煙・危険要因などを仮想的に重ね、現場に近い判断と連携を安全に反復できる訓練手法です。実火災のような危険を伴わずに、危険認知・情報共有・役割分担・引く判断まで鍛えられるのが強みです。訓練は一度に難しくせず、“一つだけ難しくする”設計と、短い振り返りで実務へつなげるのがコツです。

結論:
AR訓練の価値は、技術より「判断の型」と「連携の型」を揃えられること。初動が揃えば、現場は強くなります。
元消防職員として、現場は「同じ絵を見て、同じ言葉で動けるか」で結果が変わると感じてきました。ARはその型を安全に作れる、非常に現実的な訓練手段です。

出典:https://www.fdma.go.jp/

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