心停止は、いつ・どこで起きるか分かりません。
そのときに命を左右するのが「質の高いCPR(心肺蘇生)」です。
結論から言うと、高度な医療従事者向け訓練には「レサシアンQCPR」、多人数の基礎講習には「リトルアンQCPR」が適しています。
目的を明確にしないまま機種を選ぶと、訓練効果が半減します。
■① CPR訓練で一番大切なのは「感覚の再現性」
CPRは「知識」ではなく「身体で覚える技術」です。
- 胸骨圧迫の深さ
- 圧迫のテンポ
- リコイル(胸の戻り)
- 換気量
これらを“正確に繰り返せるか”が鍵です。
そのために近年は、フィードバック機能付きマネキンが主流になっています。
■② レサシアンQCPRの特徴|高度トレーニング向け
レサシアンは、より実践的な訓練に対応します。
- 高精度な圧迫・換気フィードバック
- 波形や数値データの可視化
- シナリオ設定による高度なケース対応
- 医療従事者向けトレーニングへの拡張性
救急隊・医療機関・指導者養成など、“質を突き詰める現場”に適しています。
消防学校や救急隊訓練では、単に押せているかではなく、
「正確に押し続けられているか」を数値で確認することが重要になります。
■③ リトルアンQCPRの特徴|基礎講習・多人数向け
一方、リトルアンは以下の強みがあります。
- 軽量で持ち運びしやすい
- コスト効率が高い
- 多人数同時講習に向いている
- アプリ連携で基本的なフィードバック取得可能
市民講習・学校・企業研修など、“広く命を守る人を増やす場”に最適です。
■④ 現場経験から見た「選定の本質」
私は元消防職員として、そして防災士として、
実際の救急現場や訓練に関わってきました。
東日本大震災後の現場や各種災害派遣では、
「CPRをやったことがある人」と「ない人」の差は歴然でした。
特に感じたのは、
“思い出せる訓練”をしているかどうか。
データで振り返る高度訓練は指導者育成に不可欠。
一方で、多くの市民が最低限の質を確保できる環境も同じくらい重要です。
だからこそ、
- 指導者・医療系養成 → レサシアン
- 市民普及・多人数訓練 → リトルアン
という役割分担が合理的です。
■⑤ よくある誤解:高機能=正解ではない
高性能モデルが常に正解ではありません。
- 使用頻度は?
- 参加人数は?
- 指導者は何人いる?
- データ管理まで行うのか?
目的と運用体制に合っていなければ、宝の持ち腐れになります。
■⑥ 防災視点で見るCPR訓練の価値
日本では、心停止の多くが家庭内で発生します。
救急車到着までの時間は地域差がありますが、数分間は市民が対応するしかありません。
最初の胸骨圧迫が、命を左右します。
防災は備蓄だけではありません。
“命を守る技術”の備えも、立派な防災です。
■⑦ 今日できる最小行動
- 自治体の救命講習日程を調べる
- AED設置場所を確認する
- 家族で「もし倒れたら」の話を一度する
訓練を受けた人が一人いるだけで、家庭の耐災害力は上がります。
まとめ
レサシアンQCPRは高度・専門訓練向け、リトルアンQCPRは多人数の基礎普及向け。重要なのは“誰に、どのレベルの技術を身につけさせたいか”を明確にすること。
災害現場で痛感したのは、
「知っている」ではなく「体が動くかどうか」が命を分けるという現実です。
CPR訓練は、命を守るための最も実践的な防災の一つです。
出典
Laerdal Medical Japan 公式情報
https://www.laerdal.com/jp/

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