【元消防職員・防災士が解説】防災×冬山遭難|大山で下山不能・低体温症が起きた本当の理由

2026年1月25日、鳥取県の大山で登山をしていた8人が天候不良により下山できなくなり、警察に救助を要請しました。
このうち1人は低体温症の疑いを訴えており、いずれの登山者も山頂避難小屋で待機する事態となりました。

このニュースは、冬山登山における「判断の遅れ」と「環境変化への備え不足」が、いかに命に直結するかを示しています。


■① 大山で何が起きていたのか

今回の事案では、
・24日に下山予定だったがホワイトアウトで下山不能
・山頂避難小屋でビバーク
・20〜30代男性が低体温症の疑いを発症

という流れが確認されています。

別の3人パーティーも同様に天候悪化で下山できず、同じ避難小屋に留まっていました。
幸い意識障害などはありませんでしたが、状況次第では一気に重篤化するケースです。


■② 冬山で最も危険なのは「視界を失う瞬間」

冬山事故で特に多いのが、ホワイトアウトによる行動不能です。
大山は独立峰で風の影響を受けやすく、天候の急変が起こりやすい山でもあります。

視界が失われると、
・現在地が分からない
・進行方向が判断できない
・体を止める時間が長くなる

結果として、行動停止=低体温症リスクが急激に高まります。


■③ 低体温症は「体力がある人」ほど気づきにくい

低体温症は、極寒でなくても発症します。
特に登山では、
・汗冷え
・風による体温奪取
・行動停止

が重なることで、短時間で症状が進行します。

被災地派遣や災害現場でも、体力のある若年者ほど「まだ動ける」「大丈夫」と無理を重ね、症状に気づくのが遅れるケースを何度も見てきました。
冬山でも同じ構造が起きます。


■④ 避難小屋があっても「安全」ではない理由

今回、全員が山頂避難小屋に入れたことは不幸中の幸いでした。
しかし、避難小屋は「助かる場所」ではなく「時間を稼ぐ場所」です。

・十分な暖房はない
・食料や燃料は持参が前提
・長時間滞在は想定されていない

つまり、避難小屋に入れたから安心ではなく、
「入らざるを得なかった時点で危険域」
という認識が重要です。


■⑤ なぜ下山判断が遅れやすいのか

冬山では、
「ここまで来たから」
「予定通り下りられるはず」
という心理が働きやすくなります。

これは災害時の避難判断とも共通しており、
現場では「あと少し様子を見る」が最も危険な判断になることが多いです。

元消防職員として現場判断に関わってきた経験上、
迷った時点で一段階早く引き返す
これが命を守る判断になります。


■⑥ 冬山登山は「防災行動」そのもの

冬山登山は、
・天候悪化
・通信遮断
・低温環境
という点で、小規模な災害環境と同じです。

そのため、
・引き返す基準を事前に決めているか
・ビバーク前提の装備があるか
・仲間の異変に早く気づけるか

これらは、防災そのものの判断力を問われる行動と言えます。


■⑦ 今回の事案から学ぶべき教訓

今回の大山の事案は、
「無謀登山」ではなく、
「判断の遅れが積み重なった結果」
と見るべきです。

災害でも登山でも、
最悪の事態は一つのミスでは起きません。
小さな判断の積み重ねで起きます。


■⑧ 今日できる最小の備え

冬山に限らず、
・天候が崩れたら引き返す基準を決める
・行動停止=危険という認識を持つ
・「無事に帰る」ことを目的にする

これだけでも、事故の多くは防げます。

登山も防災も、
「予定を守ること」より
「命を守る判断」を優先する。
その意識が、次の事故を減らします。

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