「救急車が有料化されるらしい」
この話題は、定期的にニュースやSNSで取り上げられます。
命に関わる救急搬送が有料になるのか――
不安や反発の声が出るのは当然です。
しかし、この議論の本質は
お金の問題ではありません。
被災地派遣や消防現場を経験してきた立場から見ると、
救急車有料化の背景には、切迫した“現場の限界”があります。
■① なぜ「救急車有料化」が話題になるのか
日本の救急車は、原則無料です。
これは世界的に見ても珍しく、非常に手厚い制度です。
しかし近年、次のような問題が深刻化しています。
・救急出動件数の急増
・軽症・緊急性の低い利用の増加
・本当に重症な人への対応遅れ
・救急隊員の疲弊・人員不足
現場では
「今すぐ命の危険がある人」よりも
「念のため呼んだ人」への対応が先になる場面もあります。
この歪みを是正するために出てきたのが
救急車有料化の議論です。
■② 有料化=「命を切り捨てる制度」ではない
誤解されがちですが、
議論されている有料化は次のような前提が想定されています。
・重症・緊急性が高い場合は無料
・軽症・緊急性が低い場合のみ一部負担
・医師判断や後日判定による免除制度
つまり目的は
「救急車を減らす」ことではなく 「本当に必要な人を守る」ことです。
■③ 現場で実際に起きていること
消防・救急の現場では、次のような出動も少なくありません。
・発熱したが歩ける
・病院が閉まっているから
・タクシー代がもったいない
・家族に勧められたから
一方で、
・心筋梗塞
・脳卒中
・重度外傷
こうした一刻を争うケースでは、
数分の遅れが生死を分けます。
被災地派遣でも感じましたが、
「限られた資源をどう使うか」は
命の選別ではなく、命を守るための判断です。
■④ 有料化よりも大切な「本当の対策」
救急車有料化は、あくまで1つの選択肢です。
それ以上に重要なのは、次の対策です。
・#7119(救急相談窓口)の活用
・かかりつけ医を持つ
・夜間・休日診療の周知
・市販薬や家庭での初期対応力
・地域全体での「救急の使い方」理解
防災の視点では、
「救急車を呼ばなくて済む備え」も立派な命を守る行動です。
■⑤ 私たちが持つべき判断軸
迷ったときの基本は、次の考え方です。
・命の危険がある → 迷わず119
・様子が見られる → 相談窓口を活用
・移動可能 → 自力・家族・タクシーも検討
救急車は
「最後の切り札」です。
遠慮する必要はありませんが、
乱用しない意識も同時に必要です。
■まとめ|救急車有料化の議論が私たちに問いかけるもの
救急車有料化は、
「払えるかどうか」の話ではありません。
・限られた救急資源を
・本当に必要な人へ
・確実に届けるための議論
これが本質です。
防災とは、
災害時だけでなく、日常の医療判断を整えることでもあります。
救急車は、
誰かの命をつなぐために走っています。
その事実を、
私たち一人ひとりが理解することが
最も現実的な“防災”です。

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