【元消防職員・防災士が解説】防災×条例|能登半島地震が突きつけた「孤立集落と要支援者」への備え

能登半島地震では、発災直後から多くの課題が一気に表面化しました。被災地派遣やLOとして現場に入った経験から強く感じたのは、「想定していなかったこと」ではなく、「分かっていたが制度として整理されていなかったこと」が多かったという事実です。石川県が検討を進める新たな防災条例は、まさにその空白を埋める取り組みと言えます。


■① 能登半島地震で浮き彫りになった現実

能登半島地震では、道路寸断による孤立集落の発生や、高齢者・障がい者など要支援者への支援の遅れが深刻な課題となりました。
現地では「助けに行きたくても行けない」「情報が届かない」という状況が続き、初動対応の難しさを痛感しました。


■② なぜ「条例」が必要なのか

防災計画やマニュアルは存在していても、法的な裏付けが弱いと、発災時の判断が遅れがちになります。
条例として位置づけることで、自治体や関係機関の役割が明確になり、迷わず動ける体制を作ることができます。

これは消防現場でも同じで、「決まっていること」は即行動につながります。


■③ 孤立集落への対応を制度で支える

山間部や半島部では、地形的に孤立集落が生じやすいことは以前から分かっていました。
しかし、どの集落をどう優先するか、誰が判断するかが曖昧なままでは、初動で遅れが出ます。

条例化により、孤立の想定、支援方法、連携体制を事前に可視化する意義は大きいと感じます。


■④ 要支援者対策は「平時の準備」がすべて

要支援者名簿があっても、実際に使えなければ意味がありません。
被災地では、「名簿はあるが、誰が迎えに行くのか決まっていない」という声を多く聞きました。

条例の中で、役割分担や支援方法を明確にすることは、命を守る備えそのものです。


■⑤ 発災時の「地域連携」をどう作るか

行政だけで災害対応は完結しません。
消防・警察・自衛隊・医療機関、そして地域住民との連携が不可欠です。

LOとして現地調整を行った際も、日頃から顔の見える関係がある地域ほど、初動がスムーズでした。


■⑥ 条例がもたらす「見える防災」

条例のメリットの一つは、住民が「自分の地域で何が起きたら、どう動くのか」を事前に確認できる点です。
これは防災訓練の質を高め、住民の当事者意識を育てます。

防災は、知っているかどうかで結果が大きく変わります。


■⑦ 有識者と住民を巻き込む重要性

石川県は今後、住民や有識者と協議を重ねる方針を示しています。
被災地では、机上の理論だけでは通用しない場面を何度も見てきました。

現場の声を反映した条例づくりこそ、実効性のある防災につながります。


■⑧ 私たちが今できること

条例制定を「行政の話」で終わらせず、
・自分の地域に孤立のリスクはあるか
・要支援者はどこにいるのか
を考えることが、住民側の防災行動です。


■まとめ

石川県が進める防災条例の検討は、能登半島地震の教訓を制度として残す重要な一歩です。
孤立集落や要支援者への対応は、発災後ではなく「平時」にどこまで準備できているかで決まります。
被災地派遣や現場経験からも、事前に決めておくことの重みを強く感じています。
条例という形で地域の防災力を底上げする取り組みは、他の自治体にとっても大きな参考になるはずです。

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